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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
12章 円卓の勢力衝突・君主同盟VS悪魔党 
82/111

脱走囚・対話する旧敵


呪われし地下森林 樹の根の牢


「脱走囚マンフリード・アダムス」





ミュータント共の縄張り地下に広がる森林にて

囚われの身になったマンフリードであったがいくら木の根を調べてみても

強力な吸霊効果を持つ樹木の根によって構築された根の牢獄に対して打開策は見つからない。


さしものマンフリードも万事休す、ここからの脱出は不可能と思われた時。

ちょっとした気付きから状況が変化した。


この木の根は霊気を出来るだけ込めずに物理的に傷つけようとすると

吸霊効果があまり発動しない。その代わりに

その腐った性根を叩きなおしてやると言わんばかりに木の根が鞭のように襲い掛かって来る。

マンフリードはそういう事ならばと木の根を手刀でガリガリと削り始める。


手の側頭部をノコギリの様にギコギコと動かしていると根が切れる前に

何処からともなく爬虫類のミュータント兵が2人やって来て牢の外から吹き矢を吹き付けて来た。


毒矢の様だった。マンフリードの全身に激痛が走る。

思わず膝から崩れ咄嗟に両腕でボクサーがガードする時のような格好で突っ伏す。

牢獄の天蓋と地面の両方から出てきた根がマンフリードの両腕両足首に絡みつき縛り上げる。

腕を左右に引っ張られY字型の体勢で拘束された。


看守らしきミュータント兵は2人して牢へと入って来て囚人を殴りつけ始めた。

ひたすらに右から左から揺れ動く囚人に拳を投げる。


(テメェら! 誰をサンドバッグにしてやがる!)


一瞬怒りが湧いたが直ぐにマンフリードは苦笑いに変わった。

しかし直ぐにそんな余裕も消え失せた。

無防備な体勢から脇腹や顔面を殴りつけられ、体内では毒による神経をすり潰すような痛み。

内から外から襲い掛かる激痛は呼吸を忘れさせる。

とても言葉も思考もまともに形成出来なくさせる程であった。


心臓の動き跳ね方すらまともでない。

心臓が体外へ飛び出て行ってしまうそうな感覚にも襲われた。

ただどうにか呼吸のリズムだけは手放さないように。それだけを意識して耐えた。


そして遂に……

看守たちが殴るのを止めた。2人の兵士が牢から出ようとした時だった。

樹木を手でこすって削ろうとするんじゃない、この馬鹿が。

そう言って背中を向けた時。


ついに囚人の腹が熱を帯び始めた。

マンフリードはストーブが腹の中に入っているような久しぶりの灼熱の感覚を味わっていた。

囚人の中から怒りとは違うエネルギーが沸き起こり始めたのだ。


感情とは違うエネルギー。

マンフリードの技能。【苦痛エンジン】であった。


(余りの痛みに気を失っちまいそうだったが、漸く来た! 腹の中が熱ぃぃ! 

これだよこれぇ! 痛みなんざどうでも良くなる程腹の中を煮えたぎる灼熱! )


マンフリードの中に歓喜の炎が灯る。

そして次にマンフリードは…


(このトカゲども、今に見てろ! 吠え面かくんじゃねぇぞ!)

と思った。


下っ腹がどんどん熱を帯びていき、それが両腕両脚の骨にまで浸透していく。

苦痛から生み出された霊気が凝縮され渦巻いていた。

高温で熱された赤白い鉄棒を下半身に、内臓に、骨髄に入れられている様な熱さだった。


囚人の異変には気づかず。兵士共が木の根の牢から出る入口を作った。

兵士が懐からの携帯サイズの棒。この牢の鍵を取り出し牢の柵に

向けた瞬間。


(今だ!)

暗い地下の根の牢獄がある一室に赤白い光が浮かび上がった。

マンフリードの四肢が赤白い炎に包まれる。

燃え盛る真紅と白の炎。


囚人が呟く。

苦し火(くるしび)…」


兵士二人が炎の煌めきと熱気を視覚と触覚で感知し振り返った時には

背から赤白い天の炎に包まれた腕に貫かれ二人同時に息の根を止められた。


貫かれた兵士は体内から高熱によって溶解されていくかのように

明滅し内側から燃やし溶かされ、最後に残された肌が灰となって消えた。



「痛めつけてくれて感謝するぜ。『待ってました!』って感じだ。

さて、こっからどうすっかな… 取りあえずこの糞みてぇな森…」




ここに住む生き物たちには悪ぃが… 燃やしちまうか?








@@@



仇敵・旧敵・対話


悪魔党 主塔 悪の塔

最上階 悪党の間の中の一室 博徒の間



悪魔党悪魔大統領親衛隊長コンラッド・マクダナルと

ゼフ・アドリエルが久方ぶりに酒を飲み交わしていた。

皮肉なことに党が化け物の群れから襲撃を受けヘルを放棄した日。

その日から急速に二人は最接近、一時的なものかもしれなかったが

在りし日に近い雰囲気の中また会話をする仲になっていた。


ーそれにしても親父よぉ。LMP消費がまじで痛すぎるわ。

殆ど補給線を断ち切られたような感じだ。挟撃するにしてもすぐにでもヘルを元の様に領土化しねぇと…

取り返し合いなんてやってられねぇし。マジでどうやって反撃するか…


コンラッドが頭を掻きながら苦い顔。

ゼフがそれに応えようとした時。


扉が突然破壊され吹き飛んだ。

大きさも厚さも並みの能力者の攻撃ではビクともしない様な重厚な特別な金属製の扉だった。


そんな鋼鉄製の扉が歪にひしゃげ、吹き飛ばされたのだ。

その原因である巨大な槍。いや見た目はもはや鉄柱と呼んだほうが余程正確である。

その鉄柱槍は部屋の上座の壁。

ゼフとコンラッドに挟まれるように堂々と突き刺さり存在を主張していた。



悪魔大統領とその親衛隊長が突き刺さった巨大な鉄柱を脇目に

驚愕で目を大きく見開きながら入り口を見る。


猫が一匹ちょこんと佇んでいた。尾が二つに分かれている三毛猫だった。

その猫の事を二人は知らなかったが、突き刺さった鉄柱の持ち主は二人が良く知る者であった。

そしてその槍の持ち主と行動しているものが恐らくこの猫の主なのだろうという憶測も猫を見た瞬間には合点がいったのである。


そして二人の予想通り

猫の後ろ、扉がつい今の今まであった場所から二人の男が入って来る。

2人ともスーツを着ている。槍の持ち主とこの化け三毛猫の主であった。


槍の持ち主は人を舐め切っているようなどうでも良さそうな表情。

スーツを着ていて片手前腕にコートを掛けるようにして持っている。

少しエリート意識がある官僚のような雰囲気がある男だった。


猫の主は穏やかな表情。明るい茶髪に鳶色の眼。官僚風の男とは裏腹に温かい雰囲気。


ーどうもお久しぶりです。私はお二人ともあの時には相対していなかったので。

戦争以来というより戦争前以来ですね。まぁゼフさんは私と同じで前線には居なかったと思いますが。


三毛猫の主。明るい茶髪の男が言った。


「テメェっ!ジェシー! 仇を取りに来たのか!?」


ーし、掌撃破ァ!


コンラッドが吼えた、機械の左手をジェシーに向け

改造され掌に開いた穴から衝撃波を先手必勝とばかりに放った。


衝撃波は強力だったが官僚風の男が手に持っていたコートで打ち払った。

黒のコートに当たった衝撃波はすぐさま霧散。


衝撃破が消える前には既に部屋の中にいた小型の機械獣とラジコンが一斉に動き出し

招かれざる客に特攻。5つの自動突撃爆弾と化したラジコンと機械獣は2人の周囲で爆発する寸前に

突然バラバラに分解され、散らばって動かなくなった。

コンラッドは床を破って出てきた鎖に巻き付かれ地面に引き倒されて激突。

そのまま仰向けに拘束された。


ーテメェらぁ!!


「やめろコンラッド… ジェシーにオジー久しぶりだな。話を聞こう。」


悪党が苦々しい顔付きで言った。


「そうしてください。コンラッドさんは今すぐ殺してもいいんです。

死にたくないならあまり動かないでくださいね。」

言ってジェシーが続ける。


「さて。お二人、そして悪魔党には我々に従属し傘下に入る機会を持ってきました。

塔はもうじき落ちる。魔女に落とされるでしょう。知ってますよね? 君主同盟。」


ー親父! 絶対だめだ! 取り込まれたら何されるかわかんねぇ!

こいつら復讐しに来たに決まってる! 


「黙ってろコンラッド。重要な話だ。感情的になるんじゃねぇ。」


「取り込んだ人間に何をするのか分からない人たちはあなた方ですけどね。

先の戦争の時はこちらも本気になれませんでした。もしプライドが邪魔して冷静になれないのなら

続きだろうがリベンジだろうがやっても構いませんが…」


ジェシーがそこまで言ったところで官僚風の男が指を慣らした。

パチンと音がした時には槍は鉄柱サイズから細くなり、人間が両手で握れる程度の直径になり

壁から離れ空中で振動を始めた。直ぐに異様な音が鳴り始める。


これを聞いたものは皆恐怖するだろうというような音。

オジーが眼鏡の位置を直しながらスキャンするように二人を凝視する。

妙なマナの動きを感知したがそれが何なのかはゼフには分からない。


さらにオジーがもう一度指を慣らすと部屋の地面から何本もの鎖が出現。

鎖は部屋の中を揺ら揺らと彷徨うように動く。

それはまるでこの先の命令を待ち詫びているかの様な動きだった。


「要するにさぁ。ここで俺らに殺さるか。魔女に殺されるか。それともさっさと俺らの下に入るかって話なんだけど。」


殆ど一択っしょ? どうせ負けんだから。


オジーが尊大に言い放った。





 

@@@


新世歴 ??


悪魔の本拠、悪の塔を機械仕掛けの獣たちが襲ったとの記録がある。

悪魔の本拠は別にあり、それは黒き太陽によって焼かれたという記録も。


悪魔の住処を襲った獣たちは機械仕掛けの蜘蛛が多数混じっていたとも、狼だとも。樹木系魔物だとも言われる。

機械仕掛けというのは今日残る塔の中にて発掘される遺物によくみられる機械系の人間や獣の化石から凡そのイメージはついている。


記録によれば世界各地に存在する塔は全てこの機械仕掛けの獣の襲撃にあったという事なので

これらの存在と悪魔党は激しく戦っていたのは事実であるという見方が一般的。

しかし機械系の動物の痕跡は見つかるものの、機械仕掛けの蜘蛛の化け物というのは今日未だに発見されたことは無い。この部分については人によって意見が分かれる所である。


悪魔党=悪魔の棟梁が率いた古代の勢力。【塔】を世界各地に建設した。

各地の塔は自動人形と機械仕掛けの魔物の巣窟となっていることが多い。

さらに蜘蛛系の魔物も多く塔を住処としていることでも有名。


太古より危険度Sクラスの古代遺跡群とされて来た。


悪魔の棟梁と死人の悪魔と同一視する見方もあるが今ではその説は否定する研究者が多い。

それとは別に死人の悪魔と悪魔の棟梁は仲間だとする説と敵対していたとする説もあり、そちらは意見が分かれている。


真偽は不明。




==苦し火(くるしび)

マンフリードの技能。超アンデッドとなったQの怪人の断罪の炎の種火を分けられた

結果。苦痛エンジンが発動している時に技能:炎の四肢を使用することで断罪の炎の種火が燃え上がり

それが炎を【苦し火】へと昇華させた。


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