6話 傀儡師と悪夢の世界
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「悪夢の列車」
傀儡師と悪夢の世界
JOHN・SMITH
場所???
夜
夢を見ていた。-----
魔物が跳梁跋扈する都市で
何処かへと向かっていた。
自分は超能力者か何かのようで色々な力を使って…
それで、誰かと会おうとしていた? いや助けようと?
しかしサングラスの男に見つかった。
見つかってはいけない男。
戦闘が始まった。
戦いの内容はあまり覚えていない。
終始押され続けた。頻繁にサングラスの男は余裕の笑みから
深刻そうな顔に変わり。戦闘中に自分を何度も失ったりもしていたが。
それが自分の能力の為なのも何となく理解できた。
忘れられる体質、呪い。隠者。
奴は自ら愚者と名乗った、そして道化だとも。
戦闘は激しさを増していき、
最後は昔縁があった狼が助けてくれたが、
場面が変わる。
黒いイタチが歩道を駆けていって背の高い女の元へ。
綺麗な顔立ちのすごいプロポーションの女。
黒髪のポニーテールで黒縁眼鏡。
警棒を腰に刺して軍服のようなものを着こなしている。
それと
未来から送られてきたような
銃を持った褐色肌の女。こちらも眼鏡をかけている。
元々カーディーラーだったような店の中に入っていくと
魔導装甲車などが並んでいる。何処かで見たことがある乗り物。
壁には大きなシャッターとダストシューターが存在を主張していた。
2人がそれを前にして何か話し合っていた。シャッター横のボタンを押すと
中から軽自動車ほどの戦車が出て来た。二人とも戦車をまじまじと
見ては感心したような顔。店の周りには周囲に溶け込むようにして
姿が透明になるトカゲのような頭部の機械人形兵が数体。
-----マチルダ、マケンナ、KB…
一瞬名が浮かんできた。
また場面が変わる。
死物と竜もどきが魔女領に侵攻。
魔女軍が知らない人間達と共に戦っていた。
その中に知った顔、3人組の男。
ゴルフ場クラブハウス。謁見の間のような広間。
男たちが魔女の前で膝をついていた。
魔女はそれぞれの肩へ剣を置いていく。
さっきの3人組の男達だった、何処かで見たことがある。
それぞれが風鈴を取り出し慣らすと、
魔女が十字短剣を取り出す。
光が迸り、3人を包むと風鈴に十字短剣の飾りが付いた。
場面が変わる。
先ほどのブロンドの女が箒に乗っている。魔女…
何処かへ向かっている?
-----ルネー…
-----場面が変わる。
暗いサーカス。
舞台の真ん中一部だけがライトアップされている。
あのサングラスの男が、椅子に座っていた。
サングラスから色付き眼鏡に変わっている。
サンタの帽子を被って、暗く無表情で
団員らしき女たちを侍らしてながらショウを見ている。
観客席からではなく舞台の中から。
奴からはまるで人形のように感情が読み取れなかった。
そこにいる人間達も一様に酷く虚ろな生気をしていた。
まるで抜け殻。
円形の舞台にはいくつもの剣が地面に刺さっている。
暗く殺伐とした舞台だった。
次の瞬間には。
男の周りには誰もいなくなっていた。
暗いサーカスの中で男が一人椅子に座り煙草を吸っていた。
何故か
そいつもまた自分のように夢を見ているように思えた。
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JOHN・SMITH
目が覚めた。
ゆっくりと瞼が開く。
かなり暗い、光源が少ない。
見覚えのない廃墟の壁際にもたれ掛かっている。
視界の右にシンクが並んでいる。左はトイレの個室がいくつか。
綺麗なデパートの中のトイレなどではなく
公衆便所のようだ、少し汚いがあまり人間が使っているようには見えない。
床のタイルは薄青色。
鉄格子で出来た扉が何故かトイレ出口の階段手前にある。
元々拘置所などだった場所を改装したのかもしれない。
何処のトイレだろうか。こんな所は記憶にない。
手洗い場所にある。
横に長い鏡は割れて半分も残っていなかった。
鏡を見ると知らない顔。
坊主に黒縁眼鏡。
胸の中に違和感。
紫の色の靄がANKHに纏わりついていた。
瞬間的に強い怒りの感情が湧いて出て来た、乱暴にそれを打ち払う。
「糞ったれ!」
怒りのあまり突発的に声が出た。
鋭い痛みを感じて
体中傷だらけなことに初めて気が付く。
何カ所も穴が開いていそうだった、が気にするのも億劫だった。
気にしだした途端に痛み始めそうな気がしたし、それに
ただただ疲れていた。これ以上ごちゃごちゃと考えていたくない。
何も考えず霊気を動かす。
まともな光源もないトイレの中
白い蓮の花の霊体がぽつぽつと周囲に咲き始める。
身体が癒され、傷が修復されていく。
異様なほど回復が早い。
瞑想もする。
簡易的なベニヤ板で作られたドアを開けて
外にでようとすると石造りの階段。
階段の段数は少ない。
地下のトイレから地上に顔を出すとそこは
何処かの都市のようだった。
空はもう陽が沈む寸前。
雨。
湿ったアスファルトに光が反射している。
信号機は壊れていて。
緑と赤のライトが代わりというように取り付けられていて
クリスマスカラーの光が街灯の役割を果たしていた。
人通りは皆無、だが人の気配がないわけではない。
何となくこの街には人はいるのだろうと思った。
雨を避けるように通りに並ぶ店の軒下の方へ。
背後からついて来るものに違和感。
振り返ると
ボロボロのコートを着た人間ではないもの。
俺の傀儡だ。シャドウ…
二足歩行のエイリアンのような化け物。
のっぺらぼうで猫背、兵士のような雰囲気が少しある…
酷く傷ついていた。まるで命からがら戦場から逃げて来た兵士。
それが人間の足を手に持ち引きずっている、俺のだ。
俺の足…
思わず自身の右足を見ると質感がほんの少し違う足があった。
裸足。そうか戦闘中にやられたのか。そして…
この代わりの足も傀儡。俺と同化出来る傀儡。
ゴースト…
傀儡達も直さないと。
二体とも酷く損傷している。
ゴーストに至っては俺と常に同化していなくてはならないほど。
もう本体だけで分離できそうにない。
シャドウも腕やその他の部位が欠損していた。
前にもこんなことがあった気がした。
繰り返していてはならないという感情が湧いて来る。
怒りにまた火が点きそうになる。
違う!
良くやっている! 大丈夫良くやっている!
勘違いしないように自分に言い聞かせた。
道を当てもなく歩いていると背後からつけて来る気配。
路地裏に入る。
タタタ、足音が狭く暗い路地に響いた。
振り向くと金髪のカツラをした娼婦のような格好の女。
胸に飛び込んでくる。
「助けて!」
俺の背後に回り彼女を追いかけて来た男から逃れようと動き回る。
男は俺の存在を無視して回りこみ執拗に娼婦に手を伸ばす。
触れさせないように体を反転。
「誰だ、お前は。」
頭が余り回っていないように見える男は話しかけても
無視してなおも同じことを続ける。
「おい。余裕がないんだ、答えろ。」
男の肩を掴もうとすると
「ばぁーか。」
背後から娼婦がナイフで肩を刺そうとして来た。
腕をねじり上げ骨を砕く。
顔面に拳を入れ路地の外壁に吹き飛ばす。
今度は男の方に拳を喰らわせ、意識を飛ばす。
男を傀儡化。
-----誰だ、お前は? それとこの女は何だ?
「ア、アウ… オデ…ご主人様の。お嬢様のシモベ…」
コイツがお嬢様?
カツラをとり、その下の黒髪を掴み顔面がはれ上がり失神している
女を見せると男がぶんぶんと頷く。
話を聞いても要領を得ないことを言う。
―おい、この女は何故こんなことをしている?
「オ前コソ、何故コンナコトヲシテイル!」
いきなり怒鳴り声をあげた男の頭が爆ぜる。
頭が無くなったのにも関わらず動き、こちらに襲い掛かかってきた。
片腕でつかみ壁に叩きつける。壁にぶつかった瞬間に
シャドウが口の筒から散弾を放つ。胴体が穴だらけになる。
男の身体から生命力が消えた。
「こいつは一体…」
背後で失神していた女の気配に微かな変化。
女の瞼が痙攣し白目をむいたかと思うと片目がもぞりと
動き出す、カタツムリのように目玉が眼孔から這い出る。
もう片方の目も繋がっていてそれも同じ眼孔から続くように。
目玉が2つ繋がったような生き物。
目玉のようなナメクジのような、
芋虫のような物を踏みつける。
傀儡化。
==目ン玉ツムリ==
目ん喰い(痛みを与えずに対象の目を食べ。気に入った相手の目に成り代わる。)
宿駆り(宿主操縦)
==
初めて見る魔物…
魔物なのかエイリアンなのかも不明。
鋭い頭痛に一瞬襲われる。
路地から大通りに出ると、人がいた。
道を渡った場所にはそれなりの数の通行人。
その中に
見覚えのある顔。
少し背が低めでショートカットでブロンド。愛らしい顔立ち。
歩行者天国の奥の広場の方にのほうに見えた。
ここが何処かも、自分がどこへ向かっていたのかも思い出せない。
兎に角ショートカットの女を追いかける。
大型犬と茶髪の女の連れと歩行者天国の向こうへと消えた。
道を渡ろうとすると
飛び出してききた車にひかれそうになる。
運転手がクラクションを執拗に鳴らしてくる。
無視して通り過ぎる。
急にアクセルを踏み、ハンドルを歩道に切って突っ込んでくる。
車のフロントバンパーに触手槍を引っ掻けて放り投げる。
灰色のセダンがひっくり返り、屋根から地面に着地した。
シャドウが逆さに地面に突っ込んだ運転席に高威力散弾を撃ち込む。
車体が散弾の衝撃で4分の一ほどひしゃげる。
行き交う人々は無反応。
交差点の向こう、人混みを縫うように早足で進んでいく。
駅舎が見えた。
改札を飛び越えて進む。
誰も何も言わない。駅員も。
プラットフォームに向かって階段を駆け下りていく。
気が付けば、寝台特急らしき車両の中にいた。
いつの間にかだ。
列車はすでに発車して動いている。
苛々する。
どっと疲れが押し寄せて来た。
車両の中を速足で進み、人探しを続ける。
誰も見つからない。
駅員がやって来て話かけられる。
「あの、切符を拝見していいですか?」
「ちょっと、無くしちゃって。」
「そうですか、では携帯を見せてもらっていいですか?
メールを見せていただければ結構ですよ。」
「携帯も無くしてしまって…」
「いや、あなたさぁ、荷物もないし。ここに乗る予定の人ではないと思うよ?」
「ああ、そうかもしれない。少し疲れてるんだ。次の駅で降りるよ。金も払う。」
「あのー次の駅まで数日はかかるからね? もう遅いよ。でも私は悪い駅員だからね。」
「というと?」
「お小遣いでももらえたら、アンタの部屋を用意してもいいよ。勿論3色食事つき。
酒類はタダ。」
―あ、そう。
金以外のものでもいい? 悪い駅員さん。
取り出した財布の中にはいつの間にか
一枚のカードが握られていた。
見覚えのある2枚のカードが一緒になったようなデザインだった。
運命のカード-----隠者の星
暗い世界に立つ隠者
手には輝く星




