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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
9章 霊魂衝突ー 傀儡師と円卓の領主たち
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5話 ANKH・Q 冬季攻勢、撃つ用意 / 狩人の過去視と二人の男 



ANKH・Q

真冬の攻勢




極寒の地 ニブルス



息を吐くだけでまるで蒸気機関車のように白い煙が出ていく。

ニブルスは今日も当然のように雪が降る。


そんな極寒の都市へと向かっている物々しい兵士たちがいた。

見なき道を行き、スキーも履かず。

まともな寒冷地用かも怪しい冬用の外套。

雪にも冬の寒さにも素知らぬ顔をして不器用な動きで進んでいる。

数は10にも満たないが、一様に普通の人間とは何かが違っていた。



悪魔のようなデザインのパワードスーツを装着した機械人。

足腰から両腕それに後頭部に赤と黒の機械。

頭からはアンテナのようでもある小さな角。

目は一点を見つめてあまり動かない。


これらは

大規模勢力「悪魔党」のデビル機械人であった。

新たに進歩した機械人は従来よりも複雑な命令も遂行できるようになっており

ここへは偵察のため送り込まれていた。

ニブルスは敵方の勢力の都市。元々は悪魔党の物だったが

この憎き敵、目の上のたん瘤である。

「異人街」のものどもに奪われたまま。ゼフ・アドリエルというよりも

コンラッドの提案。



偵察に来ていた悪魔型機械人は

都市の外でたった一人。

吹雪の中浮遊するスノーモービルのような物に乗る

市民を発見。これを捉えようと走り出す。


雪が積もり、足場が悪い中ドサドサと駆けていくと

一体の機械人が30m以上吹き飛んでいき半壊。


拳を構えた市民が不敵な笑みを浮かべる。

オリーブ色の肌に青い瞳。上背は190はあるだろう。

鍛え抜かれた肉体に美しい彫刻のような顔をした美丈夫だった。



男はこの地での戦い方に熟知しているのか

デビル機械人が一体、また一体と沈んでいく。

戦闘は霊気を身にまとっての拳での格闘にナイフも使う。

結局物の数分で美丈夫は

全ての新型機械人を始末し終えた。

男、アントニオ・コンティが端末を取り出し本部に連絡。


「こちらアントニオ。

デビル機械人を発見、戦闘。数8…戦闘終了。

性能、予想通り。問題無し…」


―ザ、ザー 

こちらアイン。

OK、トニオ。

サンプル取りたいから機械人たちは持って帰って来て。

あとあのバカ女がサプライズがあるからさっさと戻ってこいだって。

クリスマスパーティーのついでに何かあるみたい。


……






ニブルス司令部-----


時刻は9時過ぎ

ニブルスは雪に覆われて、街灯も少ない。

外で活動している市民はほぼいない。

都市全体が休みに入っているような静けさであった。



旧マチルダ・ベルモンテ邸


広々とした屋敷に聖なる日のイルミネーション。

クリスマスを祝う吸血鬼と元悪魔崇拝教団の超越者、そして

無口だが呼ばれれば必ず来る狼男の三人の幹部がパーティーと会議を

同時開催していた。


落ち着きのない総長代理の女に合わせて立食パーティーのようになっているが

実際にはちょこまかと立ち上がってしまうこの女の悪癖をごまかすための

物であった。

べつにごまかさなくとも全く気にしない連中であるが、屋敷の使用人は

気を利かせたのである。



ANKHに所属する仲間。「マチルダ」の使っていた屋敷らしい。

エントランスからすぐの広間。

ささやかなクリスマスパーティではあったが、

ツリーも目立つ場所に配置され、プレゼントの箱がいくつも置かれている。


使用人以外では3人の人間か怪しい存在どころか

聖なる日を祝うには似つかわしくないメンツ。

窓際でホットチョコレートを飲んでいる少年に

壁際で腕組みをして目をつぶる男。

パーティー主催者の女は料理に夢中。


用意されている料理は

ローストラムにローストビーフ。

ペリぺリチキンに各種サラダ。


ピッツァにカプレーゼも。

料理に入っているオリーブは全て種入り。

アインが種入りの方が美味いと主張した結果だった。


忙しく歩き回っていた

サンタ風のドレスと帽子を被った女が

この日初めてテーブルに着席し

ペリペリチキンにがっついた。


イルミネーションや飾りウェイトレスとして他の2人や使用人に給仕することも

して中々に忙しかったようだ。


エレーニ・ルッソ----

ANKH・Q 総長代理

貴種吸血鬼 人形姫

型 ヴァンパイア・プリンセス・ウェイトレス

----



「うま、旨いわね。いや、ほんと。ねぇアイン、ペリペリチキンって

結局南アフリカ料理なの? それともポルトガル?」


「糞ガキじゃねぇわ! このバ! 」


―ん?


エレーニに怪訝な顔をされて直ぐに言いなおす。


「え、えーと。知らないけど。ちょっとは自分で調べろっての。」


「はぁ? めんどくさいから人に聞いたんでしょ、自分で調べてちゃ本末転倒じゃないの。

少しは頭使いなさいよね。」


「トニオ、アンタもこっち来なさいよ! 取り分けてやったから。」

壁に背を預け目をつむっていた男が頷く。




―それと怠け者のアンタ達に朗報よ。

冬季攻勢を仕掛ける。今はヘルも冬。取引で手に入れた新兵器も

死ぬほどLMP払って大量買いしたからね。

準備はもう整ってるし、アンタ達も待ちわびてたでしょ?

アタシからのクリスマスプレゼントよ! どう?


「「了解!」」

アインとトニオが同時に言う。


「明日?」

とアインが問うと


―夜が明ける前!



@@



第二次ヘルシティ侵攻作戦。




千にも及ぶ自動人形2。

そしてそれと同数以上の戦闘服を着た吸血鬼兵が

ヘルシティに侵攻。


ヘルシティ自体は守りは手薄。

防衛用と思わしき機械人が塔に帰還するときに

一緒になだれ込めないかと考えていたが。

塔の門は開かない。


いとも容易く見捨てられた機械人たちは

連携もまともに取れず、

指揮官すらいるのか疑わしいほどだった。



ANKH・Q指揮官エレーニはアインの助言により

それならばとばかりに

旧式自動人形兵を大量に投入。

旧自動人形たちは全て工兵に変えられていて

ヘルシティ侵攻を有利に進めるための工事を始める。


時折霧が出ると工事を中止。

ヘルシティ内に塔に対する監視塔、そして郊外に付け城の

建設を開始。


塔が攻撃を受け付けないのなら

土地を消耗させLMPを削りに行く作戦であった。

監視塔は2日で出来上がり。

付け城はもう数日と言ったところ。

この監視塔を付け城をうまく使って塔を包囲したい。


塔の扉とも門ともいえる入口から

出て来た敵を攻撃。

するとすぐに塔は扉を閉めた。

半日してさらにもう一度同じ結果に。


Qを仕切る女は腕組みをして難しい顔。

今は監視塔の上階から塔を見据えている。



「こうやって亀みたいに引っ込み続けるわけないわよね。」


「まぁ、そうだろうな。ここからが正念場。」


横の少年がそれに答えた。



予想通り塔の門が開き、大量の機械人たちが雪崩出て来る。


その数は万を超えていた。

旧式自動人形を下げ、吸血鬼兵団に号令。

吸血鬼たちが一斉に装備していた魔導ランチャーを使用。


扉が開いている門前に、地獄の業火が再現される。

機械人たちは次々と爆発。

暗い炎も誘発され甚大な被害を出した。

たった数分で万の機械人が消失。


しかし、炎が弱まった頃

第2波。

数は恐らく前回と同程度。

もう一度魔導ランチャーで総攻撃。

再度全ての敵を駆逐。


そして第三波。

万にも及ぶ機械人達をANKH・Qは

門前では止められなかった。

ANKH・Qが自勢力ネットワークについて調べている時に

見つけた同盟勢力WITCHERYとの取引で手に入れた魔導ランチャーは

素晴らしい兵器でその性能をいかんなく発揮した。

が撃つたびにパーツに

負担がかかる為一日に10発以上は使えない。

そして何よりも弾薬がもうなかった。


ヘルシティで大乱戦が勃発。



第二次ヘルシティ侵攻作戦は

市街戦へとその戦闘形態を移行した。

人形姫が深紅の魔剣を振るい、散弾銃を放ち時には大量の蝙蝠に姿を変え

または血の雨を降らし。

狼男が拳と短剣で暴れまわり吸血鬼の姫をサポートする。


アインがエネルギーの塊のようなYOYOで敵を蹴散らし

虎の子の兵器を投入。

クラゲ独楽改にミニ戦車。

浮遊ボードにのり戦場を駆け回った。


しかし

ANKHが開いた門から攻め入ろうとすると

塔入り口での自爆攻撃が活発になり、進めなくなる。



自動人形2も新装備ビームガンを使い良く戦ったが

敵の数が桁違いであった。

機械人を相当数破壊した。

しかし自動人形兵、吸血鬼兵ともに少しずつ撃破されている。



戦況が膠着し始めていた。


今回はここまでと、ANKH・Qが撤退。


第二次ヘルシティ侵攻は幕を閉じた。




予想はされていた出来事。しかし

実際に目の当たりにしたアインは思わず唾を飲んだ。


「一体… どれだけの市民を改造したんだ…」


「アイン、じっくり行くよ。ここでさらに攻撃に出るはない。」


「おう。」







====




サージ・アームストロング

ミュータント・オリジン

勢力:SACRED SPECIES ‐聖種

ハンターコープス  団長

雄種 ケンタウロス・ファントム



魔窟

州都中央駅前 S通り




州立図書館から一ブロック以上の間にわたって

恐ろしい破壊の爪痕。

瓦礫の山。

戦士の血が沸き立つ。知らず知らずのうち本能が騒いでいた。

血が煮えたぎる。この痕跡は足音の、サージの中の獣を

呼び起こす残り香を持っている。



「足音」の

狩人の過去視が発動、映像を構築。



それは恐ろしくも奇妙な映像であった。



二人の人間がいた。

見えない男、サングラスをかけたスーツの銀髪の男。

サングラスの方は一言で言えば余裕。

見えない男はどうにも感情が掴めない。


その男は姿がモザイクを掛けられたようでもあり、黒く塗りつぶされているようにも。

ノイズが走っているようにも、透明なようにも

消しゴムで消されているようにも見えた。

認識すること自体が酷く難しい

「見えない男」。


一言で言えば存在が異常。


凡そ誰も見たことのないような異形の勢力に所属するサージですら、

このような存在は見たことがなかった。


ソレは何処からともなく、見たことのない種類の

強力なエイリアンを出現させ

それと連携して戦う。


常に左手で何かを操っているように動いているのが

印象的だった。それ以外にも肩から外骨格に覆われた触手の槍を出す。

槍の用途は手品師のように多才。


まず槍の穂先が変形。

地獄の業火や強力な衝撃波を出して敵に浴びせると、次の瞬間には

複数の属性を帯びたエネルギーの奔流を敵を塗りつぶすかのように

吹き付ける。まるで竜のブレス。


右手にはショートソードほどの短い斧槍。

朱い槍であった。

相当な使い手で、普通の性質ではない強烈な霊気を込めて武器を

振るう。

投げれば戦車砲かというような勢いで飛んでいき

対象を破壊しては手元に舞い戻る。

飛んでいく斧槍が発生させる風切り音は文字通り

斬られた風が悲鳴をあげているようだった。


その恐ろしさは「サングラスの男」の手足を二度三度と切り飛ばすほど。

そう、サージが今まで見た中でも最強の、

飛び切りの化け物の手足を。


「見えない男」は

白い蓮の華の霊体を召喚、それが男に強力な

回復効果を施しているように見えた。



また近くにいる魔物達を自在に支配し、それを操る。

足音は左手が怪しいと見た。

それは直観でしかなかったが、

自身の左手と同じような特別な力を持つのだろうと思った。


この歩く異常は瞬間移動を繰り返し、今度は黒い影の魔物を召喚。

一体幾つ力を持っているのか。聖種最強の戦士を自負するサージですら

狐に包まれるような感覚に陥った。


感想は、控えめに言っても格上。

神か化け物かの類だ。

聖種にこれと一対一で戦って勝てるものはいないだろう。

自分やエリー・メイでも無理だと思った。

まぁ、少なくとも一対一ならばの話。



そしてもう一人、スーツを着たサングラスの男。

正真正銘の化け物。規格外だった。

まさしく神話の中以外では出てこない者。



意味不明なことを終始呟いている。


----読んで、んでも、 んでも忘れちゃうし…

殺そうと思っ、たのに… 忘れ…

最悪の… 相性だ、君…

でももう逃がさな… あ、殺しちゃいけないんだっけ?

チッ! あ! またわかんなくなった!



----あれ? 誰? あ、体にメッセージは書かないほうがいいか。

今君と戦おうとしてた? …頭がおかしくな、りそうだ。さっさと殺したいが…

おっと、危ない。気がおかしくなることだった。

さて、今から… て、だ、もらう…


戦闘中にぶつぶつと話しては時折手に持った手帳を見る。


このような戦闘をするものをサージは見たことが無かった。

まず狂人の類だろうと思った。もしくは狂気そのもの。



戦い方も見たことのないものだった。その男は

超高速で自在に飛行する。瞬間移動も当たり前。

影に潜ったかと思うと、敵の影から現れて背後から攻撃。

手を上げるだけで

見えない男の支配する魔物を一瞬で破壊。

多数の光球が一瞬で作られて破壊光線を放つ。


いつの間にか無骨な剣を手に持っていた。

今度はその剣で打ち合う。恐ろしく頑丈な剣で

透明な男が朱い斧槍が破壊されるのを恐れて打ち合いを避けるほどであった。

膂力も規格外。

見えない男に何度か手足を落とされたが直ぐに再生、

全く意に介していない。

落とされた手足は、直ぐに灰のようになって消えた。

この不死身の化け物は、なおかつエネルギーも無尽蔵のように思えた。



「見えない男」が地面から何かの結晶を掘り出す。

水晶のようだ。何故か猿の頭蓋骨のような形に一瞬見えた。

そのまま使用。眩い光がサングラスの男を捉える。

光が煙のようになり纏わりついた。


強力なマジックアイテムの類らしい。


何故地面に埋まっていたのかサージには

理解できなかったが。

一つだけ分かったのは「サングラスの男」は今ルアーになったこと。

このブロックに続々と魔物たちが集まってきて、

スーツの男に襲い掛かり始めたことだけであった。


そこからは見えない男と千にも届く魔窟の魔物、

対するはサングラスの男。という構図。



男はサングラスの縁を指でなぞり、口角を吊り上げ笑った。


暴走するトラックのごとく集まって来た

河馬のエイリアンでさえも紙粘土のように、

簡単に体に光線で撃ち抜かれ駆逐されていった。

魔窟の魔物たちはサングラスの男に蹂躙される。


「見えない男」が黒い女の人影を召喚、

するとサングラスの男が顔色を変える。


その影は凄まじい速度で男を攻撃。

箒にのり男の飛行についていく、戦闘技能は凄まじいの一言。

その影と見えない男が連携する。






そして

狼の群れの大群が出現。

数は凡そ千。


ひと際大きな黒い狼が体から大量の黒い粒子を放出。

他の獣たちもそれを合図にして一斉に。

魔狼の大軍団がサングラスの男に大攻勢を仕掛ける。



強い女の影が消え、見えない男と狼が傷だらけになったところで


映像が消えた。


これ以上の映像は構築出来なかった。

すぐさま映像の記憶自体が少しずつ薄れていくが

サージは気が付かなかった。


「全く、世界は奇妙だらけ… まぁ我らにとってはちょうどいいカ。

気を取り直して狩りを続けよう。我らにとっては奇妙は良いこと…

悪くない、悪くない…フフフ。」





消失していた半人半馬の狩人が姿を現して

歯をむき出しにして笑う。

獣じみた笑みに目には歓喜の炎が灯っていた。



@@



狩人が去ると、そのそばにあった死体の手がピクリと動いた。


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