2話 悪党の運命・傀儡師の出立 (60話)
賢人連盟 ― ワイズマン
プラトスシティ
炉端焼きの店の跡地を改装した
BBQと寿司屋の店にワイズマンの最高指導者たちが集まっていた。
困り顔がトレードマークと化している男
マイケルがそわそわしながら店員に何か伝える。
白いワイシャツと黒いタイトスカートの美熟女が近くに腰を降ろす。
まだ最後の一人は店には到着していないようだ。
「マイケル、それでどう?…」
「うん、まぁ… ちょっと色々起こるかもしれないけど…」
「それは口に出せる未来?」
「今はやめとく。 でもヴィヴィ、聞いてくれてありがとう。」
マイケルがそういうと
ヴィヴィと呼ばれた女性が美しい笑顔で頷いた。
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ヴィヴィアン・ケイト・ダンヒル
60歳
身長168センチ
型 魔法淑女
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部屋の隅にある引き戸の向こうに気配が漂うと
同時に二人がそちらへと目を向けた。
「すまん、遅れた…」
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ダンカン・ダンヒル
81歳
型 賢者
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「ダンカン。」
「お兄ちゃん!」
「おお、マイケルにヴィヴィ。
兄ちゃんが来たぞ…」
「僕の兄さんではないけどね…」
マイケルが困った顔で言う。
映画に出て来る魔法使いのような長い髭を
したダンヒルが腰を降ろしたところで
マイケルが困り顔を少しだけ変化させた。
その変化に気づいた二人は黙って待つことにした。
同じ賢人連盟指導者の二人は未来を見ている時に
ごまかすように困り顔をするマイケルの癖を知っているからだ。
マイケルの目に、脳裏に次から次へと
映像が流れては消えていく。
普段から短い映像を見続けてはいるが、今回の映像は長かった。
それは塔の中にいる一人の男の運命のようであった。
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男はすべてを手に入れた。
男が満たしたかったのは自分とたった数人の近しい人間だけだった。
力を、地位を、その他の物も全て手に入れた。
安心以外は。
元々リーダーというタイプではなかった。
でも大きなことがしたかった。やってみた。
ルールを破り、暴力に訴え、知恵を使い、人を頼り
ほぼすべてのものが手に入った。男自身も驚いた。
ただ安心は手に入らなかった。
男は恐怖と不安からは逃げられなかった。
男が支配した人間達は意地汚く、価値もなく
姑息で、ビッチであった。
独裁者。
そうなった時からよく弱きものを粛清した。
圧倒的な暴力と恐怖で支配すると人は従順になった。
味方や市民を徹底的に攻撃した独裁者は尊敬される。
悪口も殆ど言われない。死んでもだ。
強い敵に挑み負けて死んだものを人は笑い、侮蔑する。
男から見た
人間の本質はゴミであった。
ゴミを見る男の目は淀んでいった。
男のヴィジョンはシンプルだった。
筋が通っていた。本人からすれば。
誰にも喧嘩を売られないほどに大きくなる。
それが終わったら、もう外敵は相手にはしない。
対等な強い敵と戦う理由がないからだ。
勝てないかもしれない敵と何を争うのか。
もうすでに欲しいものはあるというのに。
男が欲しいものは安心以外すべてあるのに。
だからそれが終わったら、徹底的に
自身の民を攻撃するのだ。もちろんやり過ぎないように。矛盾しているようだが。
敵は必要だ。そもそも自分は他人なぞどうでもいいのだから。
リーダーに相応しくないのだから。だから力を示さなければ。
勿論標的は蒔ける可能性が低い弱い敵である。
そして弱い敵は市民であった。
人間はビッチである。どうせどれだけこのゴミ共の家族や恋人を殺そうが
コイツらは自分に媚びて、死んだ後でさえ英雄と祭り上げるだろう。
殺せば殺すほど、恐怖を味わせれば味わせるほど
こちらを畏怖し、舐めたことをしなくなるものだ。
少なくともうまくやれば。
少なくとも本当の目的とターゲットを適当にごまかしておけば…
表向きのヴィジョンや、理念を掲げて置けばいいと思った。
各支配都市にも表立って悪魔派が支配していくのはやめた。
塔が出来てからは救いの党を名乗っている。
安心するために、やるのだ。自分は安心しなければならない。
安心するために虐殺し、恐怖を与えるのだ。
ただし、男。ゼフ・アドリエルは理解していた。
男は最強ではない。最も賢いものでも、
最もカリスマがあるものでもない。
心だって強くない。自身の勢力が大きければ大きいほど。
内側からの脅威の可能性は無視できなくなってくる。
優秀な奴はそれなりにいる。
自分を問答無用で殺害するのが真っ当な答えであることに、
気付かない馬鹿で腰抜けの無能しかいないなんて。そんなわけがなかった。
いつか誰かが自分を殺しに来る。
何度もそんなものは防げない。自分だったらさっさと殺す。
いつかその日が来ると思うと、怖かった。
そんな男が塔の中で引きこもり、最後は狂って孤独死していた。
塔の中は地獄であった。
最後まで男はすべてを手に入れていた。
正し、安心と幸せだけは最後まで手に入らなかった。
未来視の大半は映像であるが、
男の未来は凡そ、このようなものだった。
少なくともマイケルの見た映像から導き出された
解釈では、である。
困り顔から、苦い顔に変わったマイケルに
老賢者が話しかける。自身の半分ほどの年齢の目の前の仲間
は数えきれないほどの重要な未来を見ている。
その中から慎重に口に出せるものだけを貰うのだ。
「聞いてもええか? 何が見えた?」
「これは… そのうち話すよ。
でも、この未来はもう何度か見たことあるね。正し、これは変わる可能性がある。」
「何についてかは言えるか?」
老賢者が問う。
「悪党に関するもの…」
すると予言者は再度困り顔になり今度は
自身の前にスーツを着たシルバーの髪の男が現れる未来が一瞬見えた。
「! これはいわないでおく。別に大丈夫だと思うけど。念のため。」
「うむ、そうか。」
「お兄ちゃん、円卓関係のことは?」
「ああ、それも聞きたいところじゃな。」
「うん、少しは話せるかも。ちょっと待ってね。」
―えーと…
・円卓の領主たちは世界に認められている。
・お互いの領土と運命を結ぶことで、災厄が領土に及びにくくなるはず。
多分…
・世界は不安定な海みたいなもの。
ヴィジョナリーによる領土領有は世界を少し安定させる。
船とか、陸地を作っていると思えばいい。繋がるほど重くなる、安定して
流されにくくなる。
多分…
・円卓に認められたヴィジョナリーの陸地を繋げればより安定する。
この前みんなで互いに繋ぐ橋、道を作ったでしょ?
だから今、災厄をここまで気にせずにやれてる。
空に浮かぶ城へはいつ行けるかは分からない。
「友好的になれそうな勢力は?」
ヴィヴィアンが問うとマイケルが曇り顔になる。
―えーと、おすすめは魔女だけど…
今はデッドマンと組んだから難しくなった。
でもこれは仕方ない部分だから気にしないで。
それ以外は…
また今度。
老賢者がふと何か思いついたような顔をして尋ねる。
―あの空席は? いくつかあったが。
「あれは… アレ? 何か忘れちゃったけど。
そのうちの一つはとりあえず、隠者だね。」
===
JOHN SMITH
ANKH・領土が燃えている。
襲撃者がどこかにいる。
樹人衆を魔女領へと避難させ、
ついてこれそうなものだけ選抜していく。
夜の水路にボートを出して乗りこみ進んでいく。
ビルを飛び移りながら大蜘蛛のエイリアンと
狼の魔獣もこちらを警護するように移動。
さながら百鬼夜行のような光景。
蜘蛛たちがウェブを作って
蛸のように風に乗って飛翔。
それに続くように鳥魔獣達が一斉に飛び立つ。
数百の蜘蛛の配下達と鳥系魔獣の部隊が散開していく。
まずは襲撃者に対処する。
ボートに乗ってカー用品店のある
交差点に差し掛かった時だった。
!!
轟音
ボートが大きく揺れる。
噛みつき亀と恐竜を足したような大型魔獣が水面に顔を出していた。
ボートの上にいた子蜘蛛に噛みつこうとした。
ハクが店の屋上から
強力な雷撃を浴びせると動きが一気に鈍くなる。
マザーが尾から機関砲のような攻撃を浴びせる。
嵐のような金属音が破壊の限りを尽くした後、周囲にまで衝撃波を轟かせた。
宇宙女帝蜘蛛の尾銃を受けた
大亀の魔獣は甲羅ごと貫通され穴だらけになり、
破壊され、打ち壊されたハチの巣のようになって絶命した。
いいボディガード達だ。
といってもこの亀の魔獣は俺のことを認識出来てなかった。
ここまでの警備が必要かは知らないが。
数百m南。
高速入り口方面にある大きなパーキングエリア近くに
妙な姿の魔物。
魔女領で聞いた話を思い出した。
「竜もどき」
あいつが首謀者の可能性が高そうだ。
まずは、襲撃の首謀者らしき
大きなハイエナのような顔に、ドラゴンのような体躯の奇妙な魔物。
地中に隠れていたのが黒い水を嫌って、移動していった。
奴から可笑しな霊気を感知した。
一度ボートを仕舞い。建物を飛び移りながら
そいつを隠形を掛けながら追跡する。
ハイエナの顔は笑っているようだった。
魔女から聞いた「竜もどき」
壁や地面を抜けたり潜れる力があるという情報とも一致する。
シャドウの額のクリスタルで感知しようとするが、もう何処かへ行ってしまった。
チッ、仕方ない。
竜もどきは置いておいておく。
そこで空から幻影カハクが帰還。
-----幻影カハクから、呪術師の思念
おい、お前が誰なのか良くわからん!
でも仲間なのは何故か解る。
一体何が起きているか説明してくれ!
俺の呪いアイテムをこの使い魔に持たせたから
通話できるぞ!
-----
アムス!
懐かしい、声までちゃんと再現されている。
ボートで進みながらやり取りをする。
「アムス! ちと大変なんだ。すぐに記憶から消えてしまう体質になってしまった!
それと暗黒教団悪魔派の塔に乗り込んで人を救出しなきゃならない。
何か手伝ってくれないか!」
―いきなり滅茶苦茶すぎる! 記憶、体質?
それが呪いなら何か出来るかもしれないが。体質ってなんだ?
一度見てみなけりゃわからん! そもそも誰だ、お前は!
いや仲間なのはわかってるんだが。
あと、悪魔派?
あー、暗黒教団ってのは知らんぞ。
「俺だってどう話始めりゃいいかわからん。でも久しぶり! 声が聞けて良かった。
そいつら深淵教団とも名乗っているはずだ。ルネーと戦ってたのが本流っていう派閥で。
最近派閥間で戦争していたはずだ。悪魔崇拝者たちだよ。ゾンビとかを操っていた。」
―奴らか!
えーと、そうだ。その組織があるエリアに詳しい奴らがいるかもしれん。
楽園の領土拡張のために先遣隊を任せられた奴らがいるんだ。
3人組の男達。
奴らなら何かわかるかも。
ただそういつ等は今魔窟のポータルを調査しに行っている。
「魔窟だな? 丁度いい。そこへ行く、大まかにでもそいつらと合流したい。
出来るだけ早く塔に向かいたいんだ。」
―わかった、今から俺がナビゲートするぞ!
「了解!」




