1話 ANKH/Q接続 ・ 占い師のSOS
ANKH・Q
メイヘムシティ本部
旧ゼフ・アドリエル邸
時刻は正午12時だが、
夜の帳はすでに降りていて
月は当然のような顔で空に浮かんでいた。
エレーニ・ルッソ執務室
一日の大半が夜の街となっているメイヘム。
焼け落ちてしまった豪勢な屋敷を改装した
ANKH・Qのメイヘム本部にて。
難しそうな顔をした人間が三人。
正確には人間かだいぶ怪しいメンツしかここには居なかったが…
部屋の主である
Qを取り仕切るウェイトレスの女以外では、窓際にまだあどけなさが残る顔立ちの少年。
壁際に無口な美丈夫の男。何時もの通りに腕を組んで壁に背を預けている。
なんとも気の強そうな顔のつくりをしている美人の女。
エレーニ・ルッソは普段に比べれば覇気がなく
先ほどからデスクの上に肘を乗せ頬杖をついたり、欠伸をしながら伸びをしていた。
普段は大体黒いスーツかウェイトレスの制服。
今日は制服の上に黒いジャケットを羽織っており
襟に着けられたANKHと蝙蝠が描かれているバッジを指先でなぞりながら
ぼうっとした表情で口を開いた。
「ちぇ、勝てると思ってたのに… 塔が邪魔ね。はぁ…
ちょっと糞ガキ、報告お願い。」
糞ガキじゃねぇわ、馬鹿女と慣れた様子で言いながら
椅子に座り窓の外を眺めていた少年が向き直る。
アイン・ショービル。
この少年も半ば上司と化しているエレーニと同様普通の人間ではなかった。
「まず塔に対して出来ることはない。少なくとも今のところはな…
スタンがボスから受けてた指令に少しアレンジして悪魔派と本流をかき乱そうとしたけど…
どうなったかは分からない。因みにスタンの亡骸をアントニオが高速近くで発見。
回収したけど、修復は難しそうっていう…
ボスなら出来るかもだけど、いつ来るかわかんないからね。
俺がやってみてる。」
―傀儡の身体はかなり徹底的に破壊されてた。
それ以外にも問題が山積み。
「いいわ、聞きたくないけど聞かせて頂戴。」
―OK。
まず新型の機械兵の目撃情報が増えてきてる。
普通よりも上等な機械兵に外骨格みたいな物が少し付いてる。
戦闘服のデザインが少し悪魔っぽい感じだから
悪魔機械兵とかデビル機械兵とか呼んでる。
当たり前だけど今までよりも強い。
こいつらは自爆だけが能じゃないっていう性能。
オートマタ2じゃないと相手はきついかな。初期型自動人形たちは
この際、廃棄するか単純労働や工兵みたいにしちゃっていいかも。
悪魔機械兵たちは
今のところ、たまに塔から出てきては周辺の死物と戦闘してるけど。
死物が少なくなったらこちらを攻めてくるかも…
「死物、死体の魔物で死物。アンタらしい単純なネーミングセンスね。
Qは災厄にも死物にも襲われてないからいいけど。メイヘムやニブルスは別だし。
アタシ的にはQの方が居心地いいから、街ごと爆破して返してやってもいいけど。」
―絶対やめろよ! どれだけLMP失うと思ってんだよ、
ったく…単細胞なのはお前だからな。
次にダストシューターみたいなものを設置できるのが判明したことについて。
わかったことがある。
「何かわかったの? ボスと関係ある?」
―ああ、これは朗報。
他のANKHと色々やり取り出来るみたい。
今のところ、「ANKH/D」と「ANKH/R」と繋がってる。
いらないものを適当に放り込んでおくといいことあるかもしれない。
こっちから「R」にいくつか送ってみてる。
―ちなみにANKH・Rから面白い武器が届いてるからな。
===
ゴースト・スロウワ―
===
「ふぅん、なんなのこれ?」
未来的なフォルムの火炎放射器のようなものをアインから
受け取ったエレーニが言った。
―なんか死物やアンデッド、霊系の相手に効果がある武器みたい。
紫とかエジプシャンブルー色の炎のようなものが出るんだけど、
多分霊系の化け物に効果ある武器だと思うんだ。
死物にも有効か試したいところ。
というわけで今日にでも行ってみる?
「OK、さっさとやっちゃうわ。それと新しいポータルも見つかったんでしょ?
そっちも見に行くわよ。」
―お、いいね! 了解。
あ、因みに鹵獲した魔導列車がテスト開通するから。
線路の近くに2つ新たなポータルがある。
それもANKH/Qのものにしたい。
「悪魔型機械兵もいじめに行くからね。
それと子分のくせに命令すんじゃないわよ。」
―うっせ、ANKHの為に働け。この馬鹿女!
さっさと行くぞ!
========
JOHN SMITH
暑い…
世界がおかしくなってから季節も滅茶苦茶だ。
今が何月なのかもわからない。多分12月あたりだと思うんだが、
ここは南半球だったから夏なのはいいが。
急に真冬かと思うほど寒くなる日もある。
もしかしてもう年は明けたか?
祝い事とかはちゃんとしときたいな、いつ死ぬかもわからないんだ。
ルネーに聞いておけばよかった。
ANKHのメンバー
マザーや、ハク。インフェクシャスにモーゼス
カハクにも熱烈に迎えられて夜通し、宴を繰り広げた。
俺は殆ど横になっていたし
自分以外誰も人間はいなかったが、居心地は良かった。
あ、クリスマスもやりたかったな…
と宴が終わってからしまった、と少し後悔する。
また今度、いや。
早い内にやろう。ショッピングモールもクリスマスぽくして。
魔女たちや、アムスとかも呼びたいな。シンディは大丈夫だろうか、
少し心配になった。
深夜目が覚めて、ショッピングモール屋上に出て考え事をしていた。
暗黒教団に対して。
目的ははっきりとしている。
敵は倒す。すでに一度殺されかけている。
もう人類の時代は終わった。
世界で生き残っている人間の総数も不明。
奴らは簡単に殺しまくっているが。バカなのか?
そんな勢力に好き勝手はさせない。
ふと一体のネフィリム思い出した。
死者を使う奴。死者と合体したり…
ネフィリムの不死者を作り出してきたり。
最後は悪魔のような姿に変身した…
倒したはずだったが、起き上がってきて強烈な攻撃を喰らってしまった。
そこからは覚えていない。
アイツには借りがある。
奴らしきものを教団でまだ見ていない。
スタンと再会出来たら聞いてみよう。
奴以外には、怨霊術師…
マケンナの仇だ。
マチルダの仇はスタンと…
ゼフ・アドリエルか。このふざけた教団は叩き潰す。
死霊使いに、怨霊使い、ゼフ・アドリエル。
それにスタンから聞いた堕天主とか言う奴。そいつが本流の頭らしいが。
コイツもだな。
この4人を取りあえず殺す。教団諸共だ。
まだまだ分からないことだらけ…
もっと情報を集めなければいけない。
悪魔派が本流を攻めていたはず。
派閥間の戦争…
その後どうなったんだ? 傀儡にしたカルロに災厄の後の情報を
集めて持ってくるように指示は出したが…
俺の居場所も分かってないかもしれない。
SINシティで目覚めたときはカルロの傀儡は見かけなかった。
災厄に巻き込まれたか?
普通にハンカチに仕舞って持ってきた方が良かったかもしれないが。
今更いってもしょうがない。
教団のその後とQとRがどうなっているか…
♪♪
なんだ?
携帯の着信…
屋上駐車場に放置されていた車の中から聞こえてきていた。
ドアを無理やりこじ開けてドリンクホルダーに置いてある携帯を手に取る。
―ジョン! ジョン・スミス!
いやジョン・ウィルス?
なんだっけ? ジョン・ウィックとか言って、ダハハハ。
なにわともあれ
超占術師のマデリーンだよ!
「ひさしぶり、アシュリン。そっちはどうだ?」
―アハハ、絶好調って感じ。いやそうでもないけど。
ていうか! アンタの事あたしですら覚えているのが困難になって来ている!
本当もう余裕がない!
情報過多で申し訳ないけど、伝えるべきことを出来るだけいうよ!
「わかった。」
―ジョン、アンタの呪い強くなっている。
ていうか呪いじゃないかもだけど、それはいい。
えーと、あとは、後は…
その呪いはアンタに必要。運命なんだ!
だからほっといていい。 解呪は多分出来ないからね。
えー、でも。呪術師?そいいう奴に会うつもり? なら止めない。
それは悪くないかもしれない。
(…アムスのことか?)
あと、えーと、そうだ!
未来視の能力者の思念を拾った!
「解呪は出来ない…、それと未来視だと?」
―アンタも知っているヤツかも! 多分賢人連盟にいる。
そいつは身動きできない!
なんか心とか読めてめっちゃ強いやつに監視されてる。
だから、そいつはもう動けない。
―あと、もしかしたらそいつ、あたしのことも嗅ぎつけちゃうかもしれない!
みつかったらやばい! いや、ホントにマジで!
えーとそいつ、「予言者」が見た未来の一つでは…
―アンタがそのバケモンみたいな奴「3f」のヴィジョンの障害になる!
そいつはアンタを殺しに来る! そいつは、「3f」は必ずやってくる!
この化け物はアンタを生かしておかない! アンタは逃げなきゃいけない!
―あとは、後は…
アンタは星! スターなんや!
自分を信じて! 絶対に信じて!
―それと、なんだっけ。
ヴィジョンだ!
アンタの目的はいい!
それはいいけど、目的を達成するだけじゃなく何になりたい?
「何になりたい? 良くわからん。」
―型みたいなもんよ!
アンタの目的が宝探しなら、それでいい。それでアンタは何になるの?
発明家? トレジャーハンター? 海賊? ダウジング野郎?
そういうことよ。
アンタは何になりたいの?
「わからない…」
―考えときな。因みにジョンって名前の意味は贈り物。
神様からの贈り物だからね。他にもある神の慈悲とか、だっけな。
適当だけど… ダハハ
スミスは鍛冶屋。
名前に人生のヒントや、アイデンティティがあるときもある。
別に無視してもいいけどね。
「……」
―あと、言い忘れちゃってた。すべての領主はヴィジョンを持っている。
アンタにもあるように。
そいつのヴィジョンをアンタが邪魔するのをそいつは知ってしまっている!
予言者が見たすべての未来はそいつも見てる、そいつは心が読めるから!
そいつは、「3信仰の3f」! そいつのヴィジョンはヤバい!
そいつ、「3f」は奴にとって都合の悪い未来を許容しない!
「3f…」
―それと! ……
いや、なんでもない! 気にしないで!
「どうした、何かあるなら今のうちに言ってくれ、アシュリン!」
―……最後に。
……
ごめんね、助けて…
アタシの街は今…
悪魔党ってやつらが来て塔の中にあたしも皆も入れられちゃった…
市民たちは多くは気付いていないけど、
少しずつ連れていいかれて機械人に改造されて行っている…
アタシもそのうち、殺されるか改造されちゃうと思う…
まだいつになるかは分からないけど。もう塔の中にいる。
アタシじゃ市民たちを救うことも、あたしだけ逃げることも出来なそう…
あとどのくらい時間があるか。
1週間くらいかもしれない。
塔からは逃げられない…
ジョン・スミス! お願い!
助けて! まだ死にたくない!
機械人になんかなりたくない!
…お願い。
「了解。悪魔党、教団のだな?」
アシュリンからいくつかの思念が伝わってきて
そこで占い通話は途切れた。
悪魔派の塔…
幻視----
運命のカード 塔 悪魔 ゼフ
スナッフシティ 州都
----
アシュリンの思念からルートが割りだせそうだった。
幻視でも何か見えた。
州都からスナッフシティ? 近い場所へ出れそうか?
屋上の外を見ると、水路だらけになった領土に
所々火の手が上がっていた。原因はどうでもいい。
問題には対処するし、解決する。
カハクを呼び状況を伝える。
幹部たちに通達。
マザーから魔窟となった州都で
ポータルを見たことがあると報告。
ルート的には、今からまた州東部へ行って
ポータルからSINシティへ戻ってそこから高速まで行き
メイヘムまでのルートを探すか。
もしくは賢人連盟のアリステスまでいって駅馬車で向かうか…
後者はめんどくさいし、時間もかかりそう。
前者にかけるのは楽観的過ぎるか‥
カハクを飛ばして
魔女たちに相談しよう。
―お前ら、これからここを出て悪魔派を滅ぼしに行く。
臨機応変に俺をサポートしろ。やり方は任せる。
ルート以外にも体調がまだまだ万全じゃないのが気になる。
モーゼスを呼び寄せてに治療してもらう。
体を横にしている大きなヘラジカに背をもたれ掛かりながら考える。
全然使ってなかったが、「幻影召喚」
ハーミットの力の一つを使う。
もう一匹のカハク。立体的な影のカハクを召喚。
魔女から教えてもらった「楽園」のほうへ飛ばす。
アムスと思念でやり取りしたい。
「傀儡を使った転移も積極的に使っていったほうがいいか。
それに3f… そいつが俺を殺しに来る…」
ショッピングモール内に違和感。
映画館前のロビーに濃密な霊的エネルギーで満ちた椅子。
簡素だが玉座のようにも見える。
座ろうとすると、椅子は透明になり
光が迸り手のひらに入るほどの球体の宝石になった。
それを掴むと何かが繋がった感覚。
幻視-----
ANKH・オリジン、ANKH・P
自勢力ネットワーク 参加
ANKHネットワーク強化
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ハンカチからイーヴィーのボートを出す。
ANKH構成員たちが一斉に鬨の声を上げる。
マザーや蜘蛛たちもどんどん現れてついて来る。
狼たちも器用に建物の屋上を飛び移りながら。
夜のバス停前ロータリーの水路から出発する。
幻影召喚:LMPを支払い仲間の幻影を召喚。
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悪の塔
下層
ヘルシティの街並みを
コピー&ペーストされたような街並みが
塔の中に広がっている。
その中にあるマナ保有量が多い市民が
優先的に割り当てられている住宅。
その中の一軒の家、窓際で泣いている女。
「ごめん、ごめん… ジョン…
ここに来たらアンタも無事に済まないかもしれないのに…
アイツに見つかっちゃうかもしれないのに、ごめんなさい…」
―本当にごめん、でも「3f」は必ずアンタを殺しに来る…




