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ダブルサイココライド2 ―Saga Of Hermitー  作者: KJK
15章 Harvest Moon 収穫する世界の悪意 
113/114

113話「ジョン・スミス、気づく」

 


「それじゃ、また夜にね?」 と言って、フリーダがホテルを後にした。


 そびえ立つオベリスク型の時計塔のような外観のホテル。最上階のスイートルームは広かった。無人だが、自動運転型の中型犬サイズの機械がサービス係として数体いた。

 フリーダはトンネルを開通させるとかいう謎の用事で出ていった。ていうかそろそろ領土にも戻るべきか。


 はぁ、⋯⋯ていうか。かなり、ややこしい事になってきた。それでも放って置く事もできない。


 俺がもう一人いる可能性はいいや。違うことを考えよう。


 ショッピングモールの人たちは、いつの間に殺された? そうだ、血が乾いていた。あれだけの人が殺されていたのにも関わらず、⋯⋯血が乾いていた。不自然だった。俺は、あの時には既に世界線移動していた?

 いつだ、あの立体駐車場、車中で眠った時か。寝てる間に世界線を移動した? 理由は知らないが、それ以外に思い当たるものがない。

 まず、あの駐車場で世界線が移動した。崩壊後の世界に俺は行ったのか。そして陸竜型を倒して眠ってしまって、起きたときには日常に、世界は元通りになっていた。寝てる時にい移動するものなのか、それもまだわからないな。


 起きた時、俺の力はそのままに移動した。でもその前には、あの餓鬼がいた⋯⋯。世界崩壊の直前に魔物が出現したのも気になる。魔物の出現のほうが先っておかしくないか? 魔物が原因で世界がおかしくなった? って、そんなわけあるか。魔物はそこまでの存在じゃない、世界崩壊させるほどでは絶対ない。


 *


 緑茶を入れ、その後少し瞑想した。


 最上階、オベリスクの尖塔部分がインペリアル・スイートらしい。50人でも200人でも問題なくパーティを開けるような部屋は、コミックに出てくるヴィランの本拠地と言われれば納得してしまうようなデザインだった。やや暗めの色を基調とした部屋に、重厚な木目の家具。本棚一つとっても一般人が家に置けるようなものではなさそうだ。


「⋯⋯フリーダめ、良い生活してるな」


 瞑想を終えて、立ち上がって部屋を見回して呟く。改めてみると、無職のときには考えられなかったような場所にいることを新鮮に思った。別にANKHでもこのくらい頑張れば作れるだろうが。いや、結構大変かな。フリーダはあの戦車達に作らせてるっぽいな。


 小癪な奴めと思いつつ、椅子に腰を下ろし、窓の外に視線を置きながら思案に耽りはじめる。


 俺は2度、世界線を移動した可能性があるかも知れない。3Faithの因子のせいで記憶すら、あやふやで、判断材料に不安を覚えてしまう。⋯⋯誰かと記憶をすり合わせて整合性を確かめたい。いや、まて。それを知ったからって何になるんだ、一体? ⋯⋯わからない。が、知らないまま放置してるよりいいだろ。


 記憶の一致。世界がおかしくなる前じゃ意味ないか。なら、候補はアムスにシンディ、ルネー、イーヴィー。あとはエレーニと⋯⋯ って、待て待て。2度、世界線が移動したとしてもその前の世界と比べないといけないじゃないのか。


 ええと俺の元いた世界線では、あの公園の⋯⋯ あそこで事件が発生して⋯⋯、いやその前にニュースでやっていた事件だ。ルネーとは地元が近い。ルネーに会ってニュースについて知っているか聞くか。知らなかった場合は、──違う世界にショッピングモール時点でいった可能性が出てくるかも。でも100%じゃない。俺が寝て起きたら変な世界だった時、世界線移動してた可能性があるだけだ。 それにニュースも俺だって、たまたまあの時見ただけ、ルネーが知らなくとも見てなかっただけかも知れない。


「──てか、ややこしすぎるな!⋯⋯こんなこと調べて意味あるのか?」


 今日何度目かもわからなくなった溜息をついて、うなだれる。


 ⋯⋯気を取り直して、──仮に1度目がショッピングモールの時だった場合。2度目が、⋯⋯次はコバヤシのバーで落ちた時。ここに関してだけは確実。バーで寝て起きたら普通の世界に戻っていたんだから、間違いなくここで一度移動している。


 よし、良いぞ。ここまでは順調だ。そう思った時。息を呑んだ。気づいてしまった。


 そうだ⋯! コバのバー。やまない雨の街にコバのバーがあった。


「あの交差点⋯⋯、あの街は⋯⋯」


 思わず唾を飲みこむ。


「⋯⋯あのショッピングモールから都心へ向かって行ったときに、──陸竜型と戦った場所だ。あの、雨の街は⋯⋯」


 あの交差点。コバのバーが会った場所⋯⋯


 死者の街と化していた。あの場所は⋯⋯ 俺の地元近くの⋯⋯ 


 だけど、微妙に違う街だった。なんなんだ、あの場所は⋯⋯


 まさか、違う世界線だった? 

 オースティンなんて名前じゃない。あそこは⋯⋯ あそこの名前は⋯⋯

 ⋯⋯Qだ。あそこの名前は。なんで? 明けない夜の街のQとは町並みは全然違う、こんな妙な名前が被るわけない。どんな関係があるんだ、それともあそこもまた違う世界線なのか。


 頭の中がグルグル周り始めたような感覚。脳みその中身を、思考を、どろどろにされ、木のヘラでゆっくりとかき回されているような感覚。涙腺が緩み、涙が出そうになり、理由は分からない、世界そのものの繋がりや糸を感じているのか、畏怖、畏敬の念のような何か。自分よりも圧倒的な巨大な何かの隠されていたむき出しの部分に触れたような。

 落ち着け。大丈夫。名前は気にしなくて良い。とにかくコバのバーがある交差点の街だ。ここに集中する。


 あの時は記憶がなかったから気が付かなかった⋯⋯。とりあえず『雨の街』は違う世界線の街。──あそこの世界線では⋯⋯、あそこで皆死んだ? その世界線では⋯⋯ いや違う世界線では⋯⋯。


 そうだ、州都に戻った時。南に死者の街なんて存在してなかった。記憶が戻った時にコバのバーまで確認しにいけばよかった。いや、無理だ、戻ってすぐにアシュリンを助けにいって殺されたんだ。そんな時間はなかった。いや、途中で近くは通ったな。けど過ぎた事は仕方ない。もういい。


 記憶喪失もあったのはどうだが。何故気づかなかった? 世界がおかしくなりすぎて疑問に思わなくなっていた。それに⋯⋯、少ないんだ、違う世界線の場所は。

 繋がっている場所が少ない。だから例外として処理していた。ちゃんと整理していなかった。

 これらの世界線はポータルを介して繋がってもいるのか? レアだが、違う世界とつながってるポータルがある⋯⋯。Qと雨の街。俺の領土にあるのはこの2つだ。他にもあるのか?


 ていうか、場合によっては⋯⋯俺だけじゃなくて。違う世界線のルネーや、マチルダ、フリーダもいることになる⋯⋯

 そこまで考えて。──思わず深く息を吐いた。


「⋯⋯こんなことまで計算に考慮していくなんて出来る気がしない。キャパオーバーになる。マジで自信ないぞ。どうすんだよ、これ」


「⋯⋯⋯⋯」


 それでも、もう少しだけ、──考えよう。


 ゆっくりでいい。


 心の中の声を、ゆっくり、スローにすればいい。そうすれば複雑なことも楽になる。


 俺は⋯世界線を⋯ショッピングモールで一度⋯超えた?


 陸竜戦の⋯あの時⋯あの時に仙人になって⋯傀儡師になったんだ⋯、そして寝落ちしたら⋯世界に人が戻ってた⋯。世界線移動は⋯コバの⋯⋯、バーで一度おきた⋯。


 雨の街はどうだ? まず違う世界線で確定。あそこは、あれ以来⋯、行ってないんだよな。


 マチルダが領土化してる街だ⋯⋯。今からでも行くか? いや、マチルダたちも強制的に引っ越したんだったな。戻れたのか? いや、戻れたはずだよな。確か戦車とかは雨の街で生産してるとかだった気がする。あいつらの領土⋯⋯、ちゃんと確認してなかった。セックスばかりしていた⋯⋯、馬鹿か俺は。いや、死んで戻った時は意識もかなり希薄だった、とにかく生命を求めていた。こんなことグズグズと責めてないで考えろ、ジョン。


 とりあえず、コバのバーで目覚めた。その後に出会った奴らと記憶を確かめ合うべきか。そうだ、なぜコバがいたのか。そのまんま、⋯⋯あの場所だったからだ。コバは動いていない。俺に傀儡化された後にあの街で何かがあって皆が死んだ。その世界線のコバだったのか。ということは、州都に戻れば生きてるコバに会える可能性がある? ちょっと、こんなホテルでのんびりしている場合じゃ、なくなってきたな。それにKBと会わなければ。KBが何を体験したのか、知りたい。記憶が残ってればいいけどな。死者だったコバは記憶がかなり薄かったし⋯⋯


 他にも、月面を倒すなら知っておきたいこと。


 ⋯⋯俺と、もう一人の俺と。⋯⋯もしも、この世界に俺がいるのなら協力しあえるんじゃないか? 死んでないよな? もう一人の俺。この世界線では。いや死んでたとしても俺のように生き返ってるよな? 


 ⋯⋯ちょっと待て。

 仮に、いるとして俺はどこほっつき歩いてるんだ、──俺は?


 いや、待て。ドミノ倒しみたいに、この世界の俺も違う世界線へ行って。その世界線の俺も違う世界線へ、ってなってるんじゃないだろうな。


 ⋯⋯やるべきことは、どうしようか。

 一つに絞るか。こういう時はシンプルに一つだけ、分割して。


 月面を倒して予想された未来にしないこと。それだけ考える。


 ──おい、これ、またなんか予防するような形で動いているな⋯⋯ これじゃ前と同じになる。前に後悔しただろ! ⋯⋯ジョン。一人で背負い込むな、大丈夫。こんなやつ場所さえ分ければやっつけられるさ。ほんとか? いや、いけるだろ。頭の中がぐちゃぐちゃだけど⋯⋯


 ⋯⋯仲間と一緒に勝利しよう。月面を倒すことに本気になるべき。


 ⋯⋯どうやって?


 とりあえず見つけ出せば良いだろ。奴が襲うターゲットの近くで張り込むか。ジョン人形にたいしてもこんな事やってたけど。通用するか? ジョン人形も捕まえられてないし、月面はそもそも黄夢で⋯⋯ いや、黄夢じゃない。黄夢だけじゃ、円卓の領主もその勢力も倒せない。流石にいま世界最強級の勢力とその長達を倒すには、黄夢じゃ無理だ。


 ⋯⋯さて、全然わからんから違うことでも考えるか。月面に勝ったら何が得られるか。ひとまずの安全と好きな人達の命。それに子供もできてるかも知れない。マチルダとの子供が出来るかわからないけど。ルネーやフリーダとは出来る可能性ありか。てかいつの間にかめっちゃ子孫残そうと動いていたな。我ながら驚くが悔いはない。

 とにかくフリーダと月面の能力と居場所を探りたい。黄色い霧。黄土色の霧。そこから現れる怪物を傀儡化すればなにかヒントが得られるか。


 しかし、ここでなーんか予感がしてきたな。直感が冴え渡り始めた感覚が来てる⋯⋯


 もしかして、この月面って⋯⋯


「──世界線移動したり、他の世界線を利用して俺達を全滅させるんじゃないだろうな?」


 ここを認識して対処しないと、──詰まされるんじゃないの?





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