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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第1章:世界探訪「ドラゴン編」
14/63

逃走と殲滅

よろしくお願いします。

戦闘してたら、少し長めになっています。

タッタッタッタッタッ・・・・・・


「いたぞー!こっちだー!!」

「卵泥棒め。絶対に逃がすな!!」


くそっ、見つかったか。だけど、ここで捕まる訳にはいかない。捕まれば問答無用で殺されるだろうし、なんとしても逃げ切らないと。


「良い奴だと思ったのに騙しやがって。捕まえたら八つ裂きにしてやるから覚悟しろ!!」

「簡単に騙される方が悪いんだよ。トカゲは所詮、トカゲの知能しかないって事だな。そらっ」

「誰がトカゲだ!訂正し、うわっ。ちっ、無駄な足掻きを」


足元を魔法で凍らせて転倒を誘いながら、後ろから追ってくるドラゴンから逃げ続ける。

それにしても、卵が大きすぎて持ちにくくて走りにくい。まるで大岩を担いでいるようだ。どこぞのゲームではこれを余裕綽々でドラゴンの巣から担いで逃げ出す、なんてシーンがあったけど、実際にやろうとすると、前も足元も見えないし、追手に反撃する手段は限られているしで、無理がありすぎる。


急斜面というか崖になってる所を一気に駆け降りててて、っと。あぶねぇ。卵を抱えてる分、重心が前になってるから転がり落ちる所だった。

さすがにここまでやって卵割りましたじゃ、笑い話にもならないからな。

見上げれば、ドラゴンたちが崖の上から槍を構えて・・・・・・おい、こら。投げるな馬鹿。卵に当たったらどうするつもりなんだ!

慌てて近くの小道に飛びこんで難を逃れる。

ようやく一息つけたな。とは言っても、すぐに追ってくるだろうし、どうしたものか。

そう思っていたところで、洞窟の奥から声を掛けられた。


「おい、お前。こっちだ。匿ってやる。早く来い!!」


暗がりで顔は良く見えないが、20代くらいの男性か。

渡りに舟ってやつだな。俺は急いで男の居るほうに向かった。


「付いて来い。近くに俺たちのアジトがあるんだ。そこまで逃げ切れればドラゴンにだって見つからねえ」


そうしてそこから10分ほど走ったところで、出入り口が2つだけの広場にたどり着いた。

中にはここまで連れて来た男を含め、男女5名程が居て、格好がバラバラな事から、冒険者っぽいな。

あ、いや。よくよく気配を探ると、入ってきた入り口の天井付近に一人隠れているっぽい。まあ、警戒されて当たり前か。

その一人を隠すように残りの5人は努めて明るく振舞っているようにも見える。


「やあ、よく無事にドラゴンの巣から卵を取ってこれたね」

「私たちでは、巣に近づくことも難しかったのに、すごいわ」

「まさに我らが勇者殿というところだな」


部屋の中の人たちが口々にそう褒めてくれるけれど、どこか軽薄な印象を受ける。

まるで召喚の間に居た巫女や騎士たちのようだ。


「それがドラゴンの卵か。ちょっと触らせてくれよ」


そう言って軽薄そうな男が手を伸ばしてくるが、身を引いて卵を庇う様な格好で拒絶する。


「すまない。匿ってくれた事には感謝するが、まだあなた方を信用した訳ではない。あなた方がここに居る目的は何?ドラゴンか、それともこの卵か?」


一瞬ピリッとした空気になったが、向こうのリーダー格っぽいがその空気を払拭するように笑いかけてきた。


「俺たちの目的は、ドラゴン討伐だ。ドラゴンバスターの栄誉と、鱗などの素材を手に入れる為にここに来ている。ま、確かに卵も手に入ればより嬉しいが、他人の功績を奪うマネはしないさ。そうだろう、みんな」


周りに呼びかけると、彼の仲間も肯定したり頷いたりしている。

・・・・・・そう言うなら、一瞬でも卵から視線を外して欲しい。ドラゴン討伐が嘘だとは言わないが、少なくとも後半の話はまるっきり嘘だな。彼らは俺を殺してでも卵を奪う気だろう。

そうして向かい合って3分が経過しただろうか。


「ギャオォッ!!」

ドガッ! ガラガラガラッ!!


ドラゴンの鳴き声が響くと共に、部屋の壁の一部が外側から破壊された。

恐らくドラゴンの姿で殴りつけたか何かしたんだろう。


「おい、見つからないんじゃなかったのか」

「知るかよ。おおかた卵の気配を追ってきたとか、そんなところじゃねえのか?今はとにかく逃げるぞ」


そう言うや否や、5人の冒険者はもう一つの出入口から飛び出していこうとする。

俺は卵を抱えているせいで、すばやく動けなかった。


「おい、何をやっている。お前も死にたくなかったら早く来い!!」


そこにさらに1撃が加えられた。


「うわぁ!もうどうにでもなれ!!」

そう叫びながら俺は入ってきた出入口から飛び出す。

隠れていた1人もドラゴンの一撃に気を取られて、見逃す結果になった。

後ろを追ってきたりは、してないな。


と、そこでドラゴンと目が合う。さらにドラゴンの目は卵に向く。

その瞬間に一気に走り出してなるべく細い道に飛び込む。ここなら人の姿に戻らないと追ってはこれないはずだ。

そうしてさらに30分ほど走った頃。無事にドラゴンを撒く事に成功したようだ。

ふぅ。これでようやく一息入れられるな。

そう思ったのもつかの間。


「ガウガウッ(おい、あれを見ろ。卵だ!)」

「グルルルッ(マジか。今なら俺たちだけで山分けだな!)」


ちっ。今度はコボルドか。人間と違って騙そうって企むことがない分、分かりやすいが、俺の命ごと卵を狙っていることには変わりない。


「くそっ」


俺は一つ悪態をつくと一瞬考えてコボルドたちに向けて走り出す。

向こうは2匹。今の俺ならあれくらい何とかなるはずだ。無事、後ろ蹴り2発で無事にノックアウトさせることに成功し、さらに奥へと進む。

出来れば安全地帯か洞窟の外に出ることが出来ればいいのだが。

しかし、その想いとは裏腹に進めば進むほどにコボルドが増えていく。


「まずいな、まるで誘導されているようだ」


そう呟いてみたが、間違いではないだろう。それが証拠に三叉路に着くと、分かりやすいように一方だけ空けて反対側はコボルドが犇いているのだから。

分かりやすいと喜んでいいのか、でも分かってはいても現状で他に選ぶ余地が無い。


・・・・・・どうする。あ、ここなら。行けそうだ。


そう思って土魔法で横の壁に穴を開ける。すると、すぐ隣に別の通路が現れた。

よし、これで少しは時間稼ぎが出来るはずだ。

すぐにまたコボルドに囲まれそうになるが、なんとか逃げ切り、ようやく空の見える場所に出ることが出来た。


あ・・・・・・しまった。

空が見えたのに気が抜けたけど、山と山の谷間の袋小路じゃないか。周囲の壁は角度80度は越えていて、手ぶらなら何とかなったかもしれないが、卵を抱えては登る事は適わない。広さだけで言えばサッカーコート2面分くらいか。

そう考えている間に、入ってきた道からコボルドがどんどんうじゃうじゃ現れる。

上位種と思われる個体も数多く居るようだ。

一番後からやってきたひと際大きな体格のコボルド(?)が恐らく奴らのボスだろう。


ワオオォォォーーーン!!

「(あれだ。あのドラゴンの卵を我の元まで持ってくるのだ!!)」


本人(本犬?)もああ言っていることだし間違いないだろう。

俺は迫ってくるコボルドに押されるように一番奥に追いやられる。

いや、俺一人にこんな大人数は必要ないだろう。既に万は超えていると思う。

コボルドに人海戦術なんて考え方があるのだろうか。

そんな現実逃避をした矢先、一瞬空が翳る。

あれはドラゴンか。くそっ、泣きっ面に蜂ってやつか、全く。

そう思うのもつかの間、ドラゴンが息を吸うような動作をし始めた。ってブレスか!!

どうする・・・・・・。そう思ったとき手元の卵に目が行った。もしかしたら、これならブレスにも耐えられるかもしれない。

急ぎさっきの横穴と同じ要領で壁に穴を空けて潜り込み、入り口を卵で塞いでブレスが漏れて来ないように補強する。

その瞬間、卵の向こう側から物凄いエネルギーの波動を感じた。


「うわ、やばっ」


卵は大丈夫だけど、その周りが真っ赤に溶け始めた。

慌てて魔法で冷却して崩壊を防ぐ。

もう少し耐えればきっと……よし、ブレスのエネルギーが収まってきた。

少し様子を見つつ、卵を押し出して外にでる。


外はブレスの余波でまるで噴煙を上げてるような感じだけど、幸い生きては行けそうだ。

コボルド達は居た痕跡すら残ってないから、どうなったかは分からない。ただ、あのブレスを受けて無事とは思えないので、多分壊滅したのだろう。

卵は……表面が焦げてるけど大丈夫そうだ。凄いな。

ドラゴンがまだ上空にいるようだけど、噴煙で見えなくなってる今のうちに、出てきた所から洞窟に戻る。

さて、これからどうするか。

問題は洞窟の出口までの道が分からないことか。こんなことならあの冒険者達に聞いておけば良かったか。


ヒュヒュヒュッ!! トトトン!


突然、腰と脚に何かが飛んできた。って、弓矢だ。

何故か刺さらなかったけど、衝撃で危うく卵を落としそうになった。


「ほぉ、意外と良い防具を着けてるみたいだな。じゃあ、これを受けても卵を落とすんじゃねえぞ!」


ゴンッ!!


今度は肩口に後ろから叩かれる。


「ちっ。全く切れやしねぇ。かなり上級の魔法防具ってところか」


この声はあの冒険者達か。

向こうから来てくれたのは探す手間が省けて良かったんだけど、全く歓迎すべきムードではないな。

というか、さっきの矢も今の一撃も殺す気満々だったな。

慎重に卵を地面に置いて向き直ると、声の通り、冒険者達が若干苛立ちながら俺を見下していた。


「えっと、一応聞くけど、交渉の余地は無さそうだな」

「いや、黙って首を差し出すって言うなら、苦しまないように殺してやるぜ」


はぁ、つまり無いんだな。仕方ない、やるしかないか。

全く、この世界に来てから、人殺しが当たり前になってきたな。

さて武器は……無しの方が小回りが利くし、卵を護りやすいか。

じゃあ、は、じ、め、の、いっぽ!


トンッ。トスッ。ドガッ!!

「ゴフッ!!」


なるほど。本当にかなりステータスが上がってるみたいだ。

軽く飛び込んで肘撃ちをいれただけなのに、2メートルも吹き飛んで倒れてるし。

さらに戦斧を持った髭親父の顎に蹴りを入れ、その持っていた斧を反対側でレイピアを構えていた優男に投げつけ、弓を撃ってきた女に魔法でカマイタチを撃ち込んで袈裟斬りにする。

残ったのはメイスを持った、ヒーラーっぽい女性。完全に逃げ腰になってるな。


「た、助けて下さい。私に出来る事なら何でもしますから」

「え、そう?何でもか。いやぁ、どうしようかな」


そう俺が言った所で、一瞬命乞いした女の顔に侮蔑の色が宿る。

あー、これはずっとこうして男を騙して来たタイプの女だな。なら、


「えっと『黙って首を差し出すって言うなら、苦しまないように殺してやるぜ』だったかな」


そう言いながら、最初の男が持っていた剣を拾って女の首を切り落とす。

せめて苦しまないように一息で殺したので納得してもらおう。

これで今度こそ落ち着けるかな。そう思って卵の方を向くと、あれ?そこに置いておいた卵が無くなってる!?

……あ、そうか! よく思い出せば、冒険者は6人居たんだった。

そうすると他の5人と戦ってる隙に持ち逃げしていったのか。

隠密特化型みたいな奴だったし、既に気配すら辿れないか。

まだ遠くには行っていないかもしれないけど、見つけるのは厳しいだろうな。


仕方ない、ここまでだな。

主人公は骨折り損のくたびれ儲けでした。

ちなみに、ステータスのお陰で、一般冒険者の攻撃はほぼノーダメージです。


間違ってる次回予告

卵が盗まれた!?え?まだたくさんあるから大丈夫?


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