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手当ての達人  作者: たてみん
第1部 第1章:世界探訪「ドラゴン編」
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フレアドラゴンと卵

よろしくお願いします。

激しく自転車操業で、毎日更新が出来ているのが奇跡です。

そしてそれ以上にブックマークが増えているのが奇跡です。

読んで下さる皆様、ありがとうございます。

ゲイルの話では、この竜の山にはドラゴンは10人ほどしか居らず、他にはワイバーンなどの翼竜や先程の竜人族が主に生活しているそうだ。

他の地に行けば、翼を持たないアースドラゴンや、海や湖に生息する水龍なども居るそうだ。

また、それほど多くのドラゴンが生息していて、食料はどうするのかと聞いてみたところ、高位の存在になればなる程、大気中の魔素を吸収することで食事は十分なのだそうだ。この地で言えば、竜人族だけが狩りや農耕を営んでおり、ワイバーンになると、水を飲みに出かける他は、フラッと出先で目に付いた獲物を狩るくらいなんだそうだ。

そして、こんなドラゴンが移動しにくい山の中に卵を産む理由だけど、この魔素が関係しているらしい。

卵が育つには大量の魔素が必要らしいのだが、地中には川のように魔素の流れがあるらしく、それがより強いところで育てようとすると、こうして洞窟の中で育てる必要があるそうだ。


そうして辿り着いたところは、魔素が濃くなって、うっすらと霧のように実体化した空間だった。

中央にはフレアドラゴンの人型であろう女性と、登山用リュックくらいのサイズの卵が鎮座していた。


「ようこそいらっしゃいました、救世主様。私はフレアドラゴンのフレイ。私の要請を聞き入れ、来て頂けたこと、真にうれしゅうございます」


そう丁寧に挨拶してくれたフレイさんは、人間で言えば20代半ばくらいだろうか。髪の色さえ黒ければ着物と薙刀が似合いそうな美丈夫な大和撫子だ。


・・・・・・・・・・・・・あれ?


「あのー、救世主様って、何ですか?」

「あら、竜人族の皆様がそう噂していますよ。何でも死に瀕し、絶望していた方々を次々と救われたとか」

「いや、確かに救いはしたけど。救世主は大げさすぎですよ」

「では、大将とか勇者様とかの方が良いのかしら」

「それも勘弁してください。経緯は何となくわかりますが」


俺がすこしげんなりしながら言うと、フレイさんは「ふふふっ」と上品に楽しそうに笑っている。

……なんか、イメージと違うな。


「フレイさん。外で聞いた鳴き声の印象と今とが全然違うんですが、なぜなんでしょう」

「あ、それはですね。舐められないように威厳を出そうと頑張ったのと、ドラゴンの姿の時は少し気が大きくなるのですよ。折角なのでご覧になられますか?」

「ええ、是非」

「はい、では少々離れていてくださいね」


そうして俺たちが離れたのを見て、フレイさんの全身が赤く光ったかと思うと、ドラゴンへとその姿を変えていた。

外でゲイル達のドラゴン姿は見ていたけど、それとはまた違ったスマートなフォルムを夕焼けのような温かい赤と黄色の中間くらいの色で全身が包まれている。


ギャオオォォーー!!

「(ぎゃおおぉぉ)」


外で聞いたような鳴き声を上げつつ、こっちにウィンクをしてくる。


「どうかしら。私の姿は、あなたにはどう映っているのかしら」

「そうですね。最初に思ったのは夕陽のような温かみでしょうか。そばに居てほっとする感じです」


俺の言葉をどう受け止めたのか、フレイさんはすぐに人の姿に戻ってしまった。心なし顔が赤いのは気のせいだろう。


「そういえば、旦那さんはどちらにいらっしゃるんですか?」


俺がそう聞いてみると、フレイさんはきょとんとした後に「あぁ」って一人納得している。


「居ないわよ。ゲイルから聞いてないかしら。ドラゴンは鳥とは違って、卵を産む(・・)わけじゃないの。どちらかというと創り上げたという方が正しいわね」

「創り上げた、ですか」

「そう。確かに他の動物の様につがいになって子供を宿す事も出来るのだけれど、個体数が少ないからなのか、私達ドラゴンはその身に宿すエネルギーを卵という形で放出することが出来るの。だから子供というより分け身という方が正しいわね」


じゃあ、さっきゲイルが言っていたエネルギーの塊って言ってたのは比喩ではなくズバリそのものだった訳か。

確かに卵からはもの凄いエネルギーを感じる。

俺が卵に興味を持ったのを感じ取ったフレイさんが楽しそうに聞いてきた。


「あの、良かったら卵に触ってみる?」

「ちょっ!フレイ様、流石にそれは」

「いいのよ、大丈夫」


何でもないように言うフレイさんとは対称的に慌てるゲイル。多分、他人には滅多に触らせるものじゃないんだろうな。

でもまあ、こんな機会は二度とないだろうし。


「それじゃあ、折角なので少しだけ」


そう言って卵に近づいてみると、まるで眠っている赤ん坊から感じるα波?みたいな穏やかな気持ちになった。

その気持ちのままに、子供の頭を撫でるように卵の表面を掌でなでてみる。

卵の方も俺の事が分かるのか、手の動きに合わせて淡く光を放っている。

けど、なんだか、若干色が濁っているような気もするな。


「あの、フレイさん。卵の光が若干濁って見えるのですが、気のせいですか?」


そう言うとフレイさんは一瞬、悔しそうな表情を浮かべた後、気落ちした感じで答えてくれた。


「そう。人間のあなたにすら分かるほどなのね。あなたの言う通り、本来の状態に比べて、邪気が多く集まってしまっているの。きっとコボルドが死んだ時に放出されたエネルギーが流れ着いてしまっているのね」


なるほど。魔素やエネルギーにも質があるってことか。

でもこれなら……


「あの、良かったら濁った部分、纏めて取り除きましょうか?」

「え、は?そんなことが出来るのですか??」

「やったことは無いですが、多分。駄目でなければ試してみますね」

「はい、お願いします」


フレイさんの許可を得て、俺は両手を卵に当てて意識を集中しながら深呼吸をする。

やることはそんなに複雑ではない。息を吸って霧のようになってる魔素を取り込み、綺麗な部分だけを右手から卵に送り込み、左手から濁った魔素だけを引っ張り出して、吐く息と共に外に出す。

あと、濁った魔素が拡散してしまわないように1ヵ所に固めておく。


そうして30分くらい続けた頃には、ドラゴンの卵はすっかり澄んだ色になって、輝きも増した気がする。

それと濁った魔素を固めたものだけど、気がついたら「濁った」ではなく「純黒」な玉・・・・・・卵?が出来上がった。

それに触ってみると、確かに鼓動のようなものが感じられる。

それを見たフレイさんの反応は、


「さすが救世主様ね。浄化だけでもありえない事なのに、まさかこの短時間で卵の創造まで成し遂げてしまうなんてね」

「……」


ゲイルの方は、驚きのあまり開いた口が塞がらなくなっているようだ。

出来てしまったものはしょうがないけど、この後はどうすればいいのだろうか。


「あの、フレイさん。この黒い卵って何が生まれてくるのでしょうか。危険な存在だったりしますか?」

「残念ながら私もこのような話は聞いたことがありません。おじい様ならご存知かもしれませんが。

ただ一つ言えるのは、たとえ卵の状態であっても産みの親、この場合は救世主様のことですけど、それが誰かは理解できているそうです。ですから救世主様にとって害のある存在になることはありません」

「それを聞いて安心しました。では後は俺が責任を持って黒い卵の方は育てることにします。あ、あと俺の名前はジンですので、そちらで呼んでもらえると嬉しいです」

「そうですか?私としましては私の卵を浄化してくださっただけでも十分、救世主様なのですが。でもジン様がお望みでしたら、そう呼ばせていただきます」


そうしてようやく一段落着いたので、少し休ませてもらう事にした。

流石に長距離移動からドラゴンと対峙して戦争と野戦病棟回りとかなり疲れた。

コボルドの問題や、その後ろの人間の影も気になるが、それはまた起きてから考えよう。


当初、女王様風にしようかという案もありましたが、

清楚なお姉さんに落ち着きました。ええ、作者の趣味です。

そしてなぜか産まれた黒い卵。何が産まれるのか、いつ産まれるのか、それはまだ誰にも分からない。


間違った次回予告:

コボルド殲滅計画「征け、ドラゴンよ!!」

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