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翌朝午前中はまったり過ごし、午後からは姉夫婦の家に行くことにした。 連絡してみれば喜んで待っていると。義兄の棗も在宅らしい。自宅で出来る仕事が多いとはいえ羨ましい。
心優は心優で姉夫婦の子供達に会えるのが嬉しくてたまらない。赤ん坊の成長は早い。心優から見れば会う度に大きく成長していく様子も楽しいようだ。
到着すればまたもや棗が出迎える。リビングでは藍君と蘭ちゃんの二人が興味津々とばかりに目を輝かせて迎えてくれた。
二人共もうすっかりハイハイが上手になって、興味の向く方向へと勝手に動いていく。
男の子と女の子だから二卵性のはずなのにそっくり同じ顔をしている。それがまた棗にそっくりで、篤は薄ら寒いものを感じる。
スペックが高いのは良いけど、性格は姉に似て欲しいと、せめて蘭だけは父に似るなと秘かに願っているのは秘密だ。
二人共人見知りはしないようで、篤や心優の抱っこにも抵抗せずニコニコご機嫌だった。が、そのうち眠くなったのかこてりと揃って昼寝してしまった。
部屋の隅のベビーベッドに寝かせ、里英が伸びをする。
「やっと寝たわ〜
さ、ゆっくりお茶にしましょ。聞きたいことがいっぱいなのよ〜」
毎度のこと、棗の用意したアフタヌーンティーをいただく。
これはもう本当に美味しい。
「それで、それで、結婚のことはどのくらい進んだの?」
その言葉に篤と心優は顔を見合わせる。最初に篤が口を開いた。
「その件で相談というか援護が欲しくて……」
「何、何?面白そうね」
棗は黙って微笑んでいる。どうせ改装工事のことは既に把握しているのだろう。
「実は、僕の仕事が忙しいし心優が一人でいることが多くなりそうなんで彼女の実家に同居しようと思ってるんだ」
「あら、それはその方が安心ね。うちの実家に同居なんて論外だし、二人だけよりご両親と一緒の方が心優ちゃんも心強いでしょう。私は賛成よ」
「あの、違うんです。
父が同居したいからと、篤さんに相談もなく勝手に工事を始めちゃったんです」
「だとしても、篤もその方が良いと判断したから、今日ここに相談に来たんでしょう?
だったら、心優ちゃんが気にすることはないわ。
ねぇ、篤」
「その通りです。
それで、うちの親を説得するのがこれからなんで……
これから両家の顔合わせとか結納も控えてるから、なるべく穏便に済ませられないかと思いまして、こうやってお二人に相談に来たわけです。
なにしろ、まだ心優と会わせてないもんで…」
「あら…」
「じゃあ、近々紀井の家に双子を連れて遊びに行こうか」
棗が提案する。
話のわかる策略謀略家の義兄は頼もしい。敵に回せば恐ろしい相手だが。そんなことは絶対に避けたい相手が味方についてくれただけで問題が殆ど解決したような安心感があった。
早速翌週には全員で押し掛け、うやむやに誤魔化した感はあるものの無事両親と心優の紹介を済ませ高杉家同居の許可をもらって来た。
そしてその勢いのまま、揉めることなく両家の顔合わせを済ませた。




