よすがの寝床事情
『丗参 それぞれの時 弐』の後にあったお話です。
白ももんがの子供。よすが。
朔に拾われ、すっかり骸衆の一員に。
今日も今日とて、寝床を探す。
普段は朔の懐に入って寝ていることが多いが、夜は一緒には寝られない。
朔は薄掛けにくるまって、恐ろしく丸まって眠る。
あれでは窒息してしまう。
それに、何より一緒に寝ている双子は、いびきがうるさい。
そして、近しいのが玄瑞。
玄瑞はいびきがうるさい上に、さらに酒臭い。
じゃあ、紅梅は?
煙草の匂いが堪らない。
寝られる場所がない。
一匹で寝るには寒すぎる。
ももんがだって、人肌恋しい。
温もりを求めてさ迷っていると、刹を見つけた。
だが、コイツは出会い頭に乱暴に掴みあげ、あろうことか、「鍋にぶち込んで食ってやる!」と言い放った男だ。
(まぁ、あの時は噛み付いてやったが)
よすがは大きな黒い瞳で、じっと刹の寝顔を見つめる。
(ももんがなど食えるわけがなかろう。どこまで粗暴な男なんだ。コイツの傍はない)
よすがはそう思った。
だが、刹は今、毒にやられ床に伏している。
よくよく観察していると、えらく寝相もよく寝返りですらゆっくり打つ。
(仕方ない。コイツは嫌な奴だが、温めてやるか)
よすがは刹の首元で丸まり、眠りにつく。
意外と寝心地が良い。
その日から、よすがは刹を温めると言う体で、刹の首元で眠ることにした。
「よすが、いつもありがとな」
「しゅー」
刹がお礼を言うが、よすがは思う。
(バカめ。利用されているとも知らずに)
その日もよすがは、刹の首元で丸まって眠っていた。
「ぎゅッ!」
思わず声が出た。
体に物凄い衝撃と、重みが加わったのだ。
(あれほど寝相が良かった刹が……。まさか)
半信半疑でそっと見てみると、刹もうなされている。
「ぎゅぎゅっ!?」
(コイツの存在をすっかり忘れていた!)
梓が、骸衆で一番の寝相の悪さを誇る人間であるということを、すっかり忘れていた。
寝相の悪さ大会などがあれば、ぶっちぎりの優勝だろう。
そして、コイツはとかく刹にまとわりつく。
(刹を抱き枕か何かと勘違いしているのではなかろうか……)
今までは刹が床に伏していたので、梓が傍で眠ることはなかった。
だが、刹が回復してきてからは、再び床を並べて寝始めたのだ。
「ぎっぎっ」
(梓め……)
よすがは不満を撒き散らしながら、梓の頭をバシバシと後足で蹴り飛ばす。
……が、そんなことをしても全く効くはずもない。
よすがは、仕方なく朔の所に戻った。
(双子と朔の寝床は、梓に比べたらマシか)
そんなこんなで夜は眠れず、昼間、朔の懐で眠るのであった。




