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きみのことは何でも知っている ― きみを護りたいと願ったら、大好きなきみはいなくなったTS  作者: 奏楽雅


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22/30

第22話:美桜【2月14日】

年末進行、新曲、ドラマ撮影と続くデスマーチだったが、ようやく1日…だけ…オフをもらえた。


新曲は初の持ち歌で、Webで配信していることもあり、結構な反響があって、歌番組への出演も多くなってきた。


ドラマは春からの2クール作品で、順調に撮影が進んでいる。番宣が始まっているので期待された注目作になっている。


と、言った感じだが。


そんなこと。今はどうでもいい…


久しぶりのオフだ、何をするかだだだ。


と、活きこんで何しようかなって考えていたら、真帆から連絡が入った。


珍しく緊迫した声でどうしても会いたいという連絡だった。


俺は、二つ返事で了承した。


真帆に会えるという事は、”美桜”にも会える。芸能活動を始めたせいで最近あまり話せていないのが気がかりだったし、何より嬉しい。


俺の服装は、淡いラベンダーのニットに薄手のベージュ系トレンチコート、白系のロングスカート、ベージュのショートブーツという装い。私服でもこれくらいのチョイスをしないと近田さんに叱られる。ベレー帽とサングラスをかけて顔を隠すのも忘れない。まさか俺がこんなことに気を使う日がこようとは…


「真帆ー待った?」


真帆は前回と同じ所で待っていた、今日も吉祥寺なのだ。真帆はボルドーのタートルニット、グレーのプリーツスカート、ダークグリーンのロングコート、黒のショートブーツ姿だ。

(俺もファッションに詳しくなっただろ…)


『昴。』


「え、"美桜"?」


『そう、今日は私とデート』クルリとその場で一回転する。


「真帆は?」


『私といるときに他の女の子の名前を言わない』と拗ねている。なんだろう何時もとちょっと違う?


『今日は一日真帆の身体を使っていいって。ツヴァイとの仲を応援した報酬。』


「そっか、”美桜”も大丈夫なの?」


『ふふ、心配してくれるんだ、優しいね。』


「あ、あたりまえだろ」”美桜”が優しく微笑んでくれる、真帆だけど…


『今日はね、色々付き合ってね』と言って俺の左に移動すると手のひら全体を密着させる。いわゆる恋人つなぎだ。俺が男役だな。


先ずはショッピング、吉祥寺PARCO、吉祥寺マルイ、吉祥寺ダイヤ街とまわって、洋品店を見て回る、”美桜”は真帆の身体だし、俺は美桜の身体だし、衣装合わせも何もないが、”美桜”が楽しんでくれるならなんでもいい。


『そうだ、昴に衣装合わせれば、私の衣装合わせじゃない。あったまいー』と言って、”美桜”は俺にファッションショーを希望した。

「かしこまりましたお姫様。」と言って、俺も近田さんに鍛えられているので調子に乗って、何着も着替えた。


…買いもしないでそんなことをしていたら、流石に店員さんの顔が引きつっていた…


しかたないので、真帆が欲しがっていたというジャケットを”美桜”に聞いて買う事にした。まあ、今日という日をくれた真帆へのお礼だ。


ランチにレンガ館モールでパンケーキをいただく。


『ここに昴と来るの夢だったんだー』頬に手を当てて満面の笑顔だ。

(真帆が太らないか心配な食べっぷりだった…)


「そうだったんだ、良いところだね。美味しいよ、また来ようね」今の俺はガツガツ食うわけにはいかないので、お上品に食べている…


『……うん、また来たい』

あれ?なんか一瞬…


食後の運動と、複合アミューズメント施設でボーリングをすることになった。


『やった、またストライク!』”美桜”は持ち前の技術でストライクを重ねていく


「流石。凄い凄い」と”美桜”を褒め、俺も負けじと、美桜のハイスペック身体でストライクをとる。


二人してほとんどパーフェクトなため、だんだん視線が集まって来た。


(やばい、目立ってる)バレたら西田に怒られる。


「ごめん、”美桜”このゲームで終わりに」と小声で耳打ちする。


“美桜”も周りに気づいたのか頷いてくれる。


***


『あー楽しかった』


夕方近くになって、井の頭公園を散策する。ボートは前回でこりごりだ。


「それは良かった」


また手を繋いで歩く、冬の井の頭公園は、少し寂しい。


『本当は、桜のライトアップも一緒に見たかったんだけど…』


「またくれば良いさ、3月下旬からだろ桜。”美桜”のためなら時間作るよ」


『ありがとう。ほんと優しいなー昴』

「あたりまえだろ」


”美桜”が微笑む、名前が美桜だ、桜が咲いてれば本当に映えるだろうな。


『そうそう』と言って”美桜”が持っていた鞄から包みを取り出す。


『はい、プレゼント。』


“美桜”と包みを交互に見る


「俺に?開けて良い?」


『もちろん』


俺は、包みを丁寧に開けた。中には奇麗なピンク色の毛糸のセーターが入っていた。手作りのようだ。大きな荷物を持っているなと思っていた。


「ありがとう、超嬉しいよ」

ふわっとしていて、でも芯がある。まるで“美桜”みたいだ。

俺は身体にあてがって喜ぶ姿を”美桜”に見せた。

「大切にするよ」


『ほんとうは、クリスマスイヴの事故の日に渡す予定だったの。あの時は淡いグリーンで作ってたんだけど…結局渡せなくって…』


「そか…」


『今は美桜の身体だから、やっぱりピンクかなって』


「そうだね、”美桜”はピンクが良く似合うし、ピンクの服を着た”美桜”が一番好きだよ」


『ほんと、ありがとう。ようやく渡せた…なんか凄い昔のような気がする、私が美桜の身体で、昴くんが昴くんの身体で、一緒に歩くと見上げる感じでカッコ良かった』


“美桜”はそう言うと街路灯のついた公園でクルクル回る。


『ほんと…良かった。今日はありがとうね。”美桜”が美桜だった時にしたかったことに付き合ってくれて』


ふと、俺は、不安を覚えた。


「ど、どうしたんだ、”美桜”。」


“美桜”が俺を見て微笑んでいる。


「なんでそんな言い方するんだ…」


『”美桜”ねもっと、もっと、いろんな事したかった。昴と一緒に色々する計画もしてたんだ。告白してくれた時、凄くうれしかった、恥ずかしくて直ぐに返事出来なくてごめんね。』


「おい、”美桜”」


『ずっと告白待ってたんだよ。なかなかしてくれないから、どれだけやきもきしたことか。』


(…嫌だ、なんだよ…何言ってんだよ美桜。)


『告白してくれて、やっと付き合い始めたら、クリスマスイヴに死んじゃって…』


「”美桜”、もう…やめて、なんか、なんか…


『でも、また逢えた。どんな姿でも、どんな世界でも、どんな時代だって、昴といられれば何もいらない』


“美桜”の手が俺を優しく抱きしめる。


『もう、時間が来ちゃったみたい…私の我がままの限界みたい』


「おい”美桜”何処にも行くなよ、俺を一人にしないでくれ。」


『私の願いは叶っちゃたから…』


“美桜”の手から力が抜けていく…


『頑張ってね、私の…昴…』


『だいすき……』


“美桜”が崩れ落ちる…


「美桜ーー」俺は“美桜”を強く抱きしめる。


「なんでだよ…なんで…いきなりすぎるだろ、ふざけるなよ」


「”美桜”はね……美桜と昴が助かったあの夜から、様子がおかしくなって…」


「真帆。」


「だんだん呼んでも返事しなくなって、少しずつ希薄な感じになっていったの」


「なんで、なんで教えてくれなかったの?」


「”美桜”がね絶対言わないでって、頑張ってるんだから迷惑かけたくないって。」


「そ、そんな…」足に力が入らない…そんな俺を、今度は真帆が俺を支えてくれる。


「俺は、”美桜”のために頑張って…」


「…そのセーター。作り終わるまではって頑張ってた、終わりの方は私の身体もうまく使えなくなって、最後はお願いされて一緒に作り上げたの。」


涙が止まらない。


「今日が最後だって、解ってて、だから美桜にお願いして来てもらって....”美桜”最後まで頑張ったでしょ。」


「ああ、ああ、”美桜”は最後まで凄かった。」


「”美桜”の最後の最後の願いは、昴頑張ってだよ…」


「そうだな、そうだな。解ってる、解ってる……でも」


あのクリスマスイヴのように雪が降り出した。俺は、何時までも涙を止めることが出来なかった。


真帆はそんな俺の背中をずっと擦ってくれていた。


目の端に早咲きの桜が目にとまる…


『いつまでも見てるからね』


そう”美桜”の声が聞こえた気がした…


1つ目の山場を迎えることが出来ました。

第30話(第1部最終話)迄、助長にならない内容で突っ走ります。

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