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第三話 商談

 第三話です。


 連戦が続くので、甘い物に手を出したい心境ですが、減量も同時に行っているのですよと。


 グロッキー日比野な状況ではありますが、三夜目もよろしくお願い致します!


 


 秋山結鶴はオフロードバイクのホンダCRF250Lに乗って、千葉県の廃工場へと向かっていた。


 講義が全て、終わった後に学費を稼ぐ為のアルバイトをしているのだが、家庭教師のアルバイトでは稼げないぐらいの高額なアルバイトだ。


 雇用主は俺のお目付け役の真木組組長の真木が行っている。


 オフロードバイクのミラー越しに尾行が無い事を確認した後にバイクを廃工場の中に滑り込ませる。


「若、これを」


 トヨタハイエースで来ていた、宮崎がバラクラバを自分に渡す。


 まるで、銀行強盗のようだ。


 そうすると、真木が現れて「若、今回も発言は無しでっせ?」と言って、にんまり笑う。


「無論だ、俺は実行だけを行う」


 そう言って、結鶴はバラクラバを被り、真木と宮崎と共に商談へと向かうことにした。


「いやぁ、遅くなりましたなぁ? 社長はん? 今日のご依頼はどんな事でっしゃろ?」


 依頼主は大手芸能事務所のアールレイズの社長、新井秀和と専務の伊原智一。


 アールレイズは業界では最大手だが、実際には半グレとも付き合いのある会社だ。


 所属している社員と芸能人にはその事実は一切、知らされていないと言うのは裏社会では有名な話だった。


 そいつらが真木組にビジネスの依頼を頼ると言うのだ。


 半グレの実行部隊に頼らずに外様である、しかも、堂々としたヤクザに殺しの依頼をするのだ。


 よっぽど、切実な事情があるのだろう。


 例えば、所属する芸能人の夜遊びが過ぎて、それがバレそうだから、週刊誌の記者を消せ。


 それならば、まだ、良心は痛まないが、一番、胸糞が悪いのが、男の芸能人が女を妊娠させたので、口封じに女ごと始末しろなどの殺しの依頼は実行犯たる、結鶴は一番、良心が痛む依頼だ。


 そう考えると、自分はヒットマンには向いていないのだが、大学に通っていて、表向きは堅気で、前科も無いのと、会長の息子という事でガードが堅いことから、真木曰く「カモフラージュが効きすぎて、ヒットマンとしては最適ですわぁ? 特に若は頭が良いし、手先も起用やから、ヤクザになったら、会長クラスまで行くんちゃうかなぁ? あくまで学費稼ぐ、バイトやけど?」と言う理由で、俺のこの危険なアルバイトを承認し、会長にまで了承を得たという次第だ。


 諸定額になったら、抜けられるかは怪しい。


 何故なら、アルバイト先はヤクザなのだから。


 堅気でいたいんだけどなぁ?


 俺はそう思いながら、目の前の新井と伊原を眺めるが、見る限りでは、堅気のサラリーマンと言っても遜色は無い。


 しかし、夏が近いとは言え、恐ろしいほどの汗のかきようだった。


 脂汗だ。


 よっぽど、やましいことがあるのだろう。


「その方が・・・・・・ヒットマンの・・・・・・」


「噂は聞いておるやろうけど、こいつがウチの目玉商品や。こいつとウチの組員に任せれば、大体の暗殺は可能で、警察も案外に常識に囚われておるから、大体が変死か捜査に行き詰まるというのがお決まりのパターンですわ。でっ、今日の依頼は?」


 真木がそう言うと、新井は唾をごくりと飲み込む。


「・・・・・・私たちの事務所に所属する、若手タレントを守ってもらいたい」


 それを聞いた、真木は「それは殺す言うことでええんですかね?」と言って、にたりと笑う。


「そうして頂きたい」


 新井がそう俯き気味に言うと、真木は「でも、言うて、あんたらの会社は半グレと付き合いあるやないですか? 何で、そこの兵隊を使わへんの?」と意地悪な質問をする。


「我々の取引先である、悪魔会は今、二月に連続強盗致傷事件が世間を騒がせていたから、その後始末に動いている。指示役がフィリピンから日本に移送されて、事無きを得たと世間は思っているだろうが、黒幕である、半グレとあなたたちのような極道にまで、世間の目が切り込まれるのを嫌って、こういう殺しの為の兵隊を送ることを嫌がっている。警察も手ぐすねを引いて、動くところを待っているからな?」


「まぁ、それ以前にあいつら、やり方が残忍過ぎて、逆に目立つからのぅ? そこで、代々、芸能界とも付き合いがある、黒陽会傘下のウチの会社を頼ることにしたんか?」


 新井はバツが悪そうな顔をしていた。


「それは昭和の頃の話だよ。あの頃は極道が用心棒のような働きをしてくれたが、今は暴対法や暴排条例などがあるからーー」


「でも、頼りたいんやろう? 大事なタレント守る為に殺して欲しい相手がおるんやろう?」


 新井と伊原は苦悶に耐えていた。


「でっ、どういう子を守ってもらいたいねん? 誰を殺せばえぇねん?」


 新井は写真を取り出す。


 それを見た瞬間に結鶴は驚愕を覚えた。


「ベイカー・鈴。ウチの有望株のタレントだ、今は売れていないが、必ず、将来はーー」


「御託はえぇねん。殺しのターゲットは?」


「青川学院大学の三年の川尻文也と同学年の田代怜雄に二年の本村健太の三名。こいつらは全員が政治家と官僚の息子で、ベイカーを強姦する計画があるそうだ」


 真木はタバコを吸い始める。


「んなもん、何で分かったん?」


「赤木晴斗という、その三人とつるんでいる学生が事務所にやって来て『ベイカーが危ない』と叫ぶので、追い払ったが、どうにも気になったので、探偵を雇ってね? 盗聴をした結果、そういう計画があると知った。半グレに頼むと大事になり、彼女のキャリアに傷が付く。そして、半グレに頼ると奴等はベイカーに手を出しかねない。あなたたちはその分、節度があると思うので、信用して、任せたい次第だ」


「ワシらも悪党には変わりないんやけどなぁ? シャブも裏で売りさばいて、人身売買や振り込め詐欺にも力を入れておる。最近では介護事業所や漁業に野球賭博や闇カジノに解体と産廃処理や復興関連にも手を付けたり、ありとあらゆるビジネスに手を出しているから、殺しいう、リスキーなことしたくないんやけどなぁ?」


 嘘だ。


 本当は殺しがしたくて、仕方ないのが、真木という男の本性だ。


 確かにそれらの事業も金にはなるが、殺しは金にもなるし、その依頼の性質上、各方面の弱みを握ることが出来る、最悪のビジネスだ。


 だが、真木は血を欲している。


 特に社会のゴミと言っていい、存在が死ぬ瞬間を好物にしているのだ。


 ベイカーを守ると言うのは俺にとっては想定外だが、モラルの崩壊した富裕層の大学生を殺すというのは真木が一番、喜びそうな依頼だ。


 後は金額か?


 結鶴は自身のアルバイト代にも響くので、金額の内容にはよく、耳を凝らすことにした。


「殺しの相場は人一人で三〇〇万円から、四〇〇万円が相場と聞いている。政府要人では一〇〇〇万円になる。これらを請け負う会社が韓国の仁川にあって、中国人のヒットマンを使って、それこそ、あなたたちが言うような足の付かない殺しをするそうじゃないか?」


「それはウチとチャイニーズマフィアが共同で作った会社や。ワシはその日本での連絡口。そうやなぁ、今回は三人やろう? 一人で四〇〇やとして四〇〇×三やから、一二〇〇万円いうところやなぁ? 払える? 売れないタレントの為に?」


 それを聞いた、新井は「・・・・・・金には代えられない。私は事務所のタレントを守る為ならば、悪魔にも魂を売る」と断言した。


「契約成立やな? 情報を全て、渡してくれ。それと、アールレイズの全社員の名簿渡してくれへんか?」


 伊原がそれを聞いた瞬間に「何で、そんなことをーー」と言うが、新井が「了解した。確実に実行してくれ」とだけ言った。


「社長・・・・・・」


「後には引けん。彼女を守るんだ」


 そこまで、ベイカーは期待されているのか?


 結鶴はベイカーの顔を思い浮かべながらも、何故、事務所が彼女相手にそこまでするかが腑に落ちなかった。


「さぁ、ここから先は社長、一蓮托生や? 悪魔と取引した代償は大きいで? しゃぶり尽くさせてもらうで?」


 真木が高笑いを浮かべる中で、新井と伊原は沈痛な面持ちを浮かべる。


 仕方が無いことだ。


 悪魔に魂を売ってでも、ベイカーを守るということを決意したのだから、今さら、戻れないだろう。


 結鶴はベイカー・鈴の顔を思い浮かべた後に真木から、写真を手渡される。


 ターゲットの学生たちだ。


「消すんや。残忍な形でな?」


 結鶴は学生たちの整った顔付きを焼き付け、人工的にでも殺意を滾らせていった。


 そうしないと、殺人など、出来ないのだから。


 続く。


 次回、第四話 密談


 第四夜目も皆様、よろしくお願い致します!

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