王都って遠くない?2
王都って遠くない?2
街を出発して半日ほど森の中を進むと、綺麗な湖が見えてきた。
「馬を休ませるから休憩するニャ、お昼ごはんにするニャ」
馬車を操縦してくれているミミロさんがお昼ごはんの準備をしながら声を掛けてきた。
ミミロさんは銀髪青目の獣人族女性で私よりも小柄な体格、頭に猫のような耳、お尻に尻尾が生えている。
私の護衛と王都までの案内役としてパパが雇ってくれた冒険者だ。
パパの昔からの知り合いらしく、見た目のよらず恐ろしく強いらしい。
私のスキル鑑定で視たところ、スキル「大剣の狂者」と「風の担い手」を持っている。
スキル「大剣の狂者」は多分「大剣術」の上位スキルなんだろう。
魔力量は5200
一般的な魔力量を知らないけど、パパと同じくらいしかないので多分低めだと思う。
そうだ……
パパは昔のことをあまり話さないので、この旅の中でミミロさんから聞き出そう。
「ミ、ミ、ミミロさん」
よく知らない人と話すのはとても久しぶりで、今から愛の告白でもしそうな感じに呼んでしまった。
「ミが多いニャ」
ミミロさんは笑いながらパンを頬張る。その姿が可愛いすぎて本当に告白してしまいそうになった。
「パパとはいつ知り合ったの?」
「私たちがレイギス学校に通っているときニャ、あの時はフリーグとパーティーを組んでいたニャ」
パパが「王の城砦」と「身体強化・剛」のスキル持ちなのは知っているが、レイギス学校の通っていたことを初めて知った。
スキル「王の城砦」は自身のパーティーが受けるダメージを全て肩代わりするやばいスキル、「身体強化・剛」は自身の防御力を上昇させて受けるダメージを減らすスキルでこのスキルがなかったら「王の城砦」なんて発動出来ない。
「パパって強かった?」
「フリーグはとても優秀なタンクだったニャ、私は何回も命を救われたニャ」
パパのことを褒められるとなんだか嬉しい。
昼休憩中もその後の道中もミミロさんはパパの昔のことをいろいろ教えてくれた。
ミミロさんが可愛いくて優しくてよかった。王都まで楽しい旅になりそう!
(てかミミロさんが可愛い……ミミロさんに寄生するのもありなのでは……?)
出発してから3日目の朝、全速力で走る馬車の中で楽しいだけの旅ではなくなったことに絶望していた。
(なんかデカいクマが追いかけてきてるんだけど……)
「ミミロさんは、凄腕冒険者なんでしょ?」
馬車と同じくらい大きいクマの魔獣に追われながら質問する。
「そうニャ、序列85位のA級冒険者だニャ!」
必死に馬を操作しながらドヤ顔するミミロさんはやっぱり可愛い。
「じょれつ?って?」
「はぁ……クウキは何も知らないのニャ、でもその話しは後ニャ」
必死に馬を操縦しながら呆れるミミロさんもやっぱり可愛い。
ギリギリ馬車が通る木々の間を縫うように進み、クマが木に引っかかっている間に道に戻り一気に突き放す。
「凄腕冒険者なら倒しちゃえばいいのに?」
ミミロさんがスキルを使って戦ってる姿をまだ見ていないので、少し見てみたくなった。
「無理ニャ、あれは危険度B上位のエンペラーグリズリー。この森のボス魔獣で、クウキを守りながらソロ討伐するのは流石に無理ニャ」
確かに14歳の少女はただの足手纏いだよね……
ミミロさんを危険に晒すわけにもいかないし、ここは逃げよう。
危険度S上位の龍王を倒した私ならスキルを使えば簡単に倒せるだろうけど、ママとの約束で人前では「双剣術」と「氷の担い手」の技しか使えないからなぁ……
双剣なんて持ってないし、普通の氷魔法じゃあ倒せなさそうなので、クマが諦めるまで逃げ続けるしかないよね!
だんだんクマとの距離も離れてきているし大丈夫でしょ。
そんなことを考えていると、馬車が急停車した。
「どうしたの?」
「もう終わりだニャ」
(絶望しているミミロさんもやっぱり可愛い)
馬車の前を見ると追いかけてきているクマとは別の個体が道を塞いでいた。
「エンペラーグリズリーが二頭もいるなんて聞いてないニャァー」
ミミロさんは固まってしまった。
森の方からはさっきのクマの足音が迫ってきている。
もう馬車を身代わりにして森の中に逃げるしかない。
「ミミロさん、こっち!」
ミミロさんの手を取り森に逃げ込もうとすると、ミミロさんは私の手を振り払った。
「楽しい旅ももう終わりニャ、私が時間を稼ぐからクウキは逃げるニャ」
ミミロさんが私の前で大剣を構える。
「そんなのだめだよ、一緒に逃げよ?」
ミミロさんは首を横に振った。
「一緒に逃げたところでどちらも助からないニャ、それにこれはフリーグに恩を返せるチャンスニャ」
さっきまで可愛いかったミミロさんの後ろ姿が、今はとてもカッコいい。
クマの一頭くらいなら余裕で倒せそうなほどにカッコいい。
「大剣の狂者、豪剣にゃぁあ」
スキルを発動させたミミロさんは、恐ろしいスピードで道を塞いでいるクマに斬りかかる。
防御も反撃も考えない、迷いがない全力の薙ぎ払いがクマの前腕を襲う。
(これがミミロさんのスキル……かっこよ……)
しかし大きな爪により弾かれてしまった……
「にゃっ?……スキル持ちニャ……」
驚いた顔のミミロさんが身を翻し私の前に戻ってきた。
普段ならクマの爪くらいは粉砕してきたのでだろう。
もう一度剣を構え直すミミロさん。
その瞬間、最初から追いかけてきていたクマが森の中から姿を現す。
「早く逃げるニャ」
二頭のクマが徐々にに距離を詰めてくるのを見てミミロさんが、再度私に逃げるように指示してきた。
ミミロさんが命掛けで戦っている……
ミミロさんが震えている……
「はぁ、私は何をしているんだ……」
ため息と共に私はやっと状況を把握した。
静かに覚悟を決める。
(ママに怒られるのはイヤだなぁ)
「大丈夫だよミミロさん」
私はミミロさんの前に立ち、両腕を上げる。
「何をしてるニャァー」
ミミロさんの怒鳴り声が響く。
ママとの約束を破るのは少し怖いが、ミミロさんは私が守る。
「万物の鏡、氷槍の乱舞」
少し周り温度が下がり、数百の氷の槍が私の頭上に現れた。
両腕をそれぞれクマに向けると、氷の槍が一斉にクマめがけて発射された。
数百の氷の槍がデカいクマ達を襲う。
最初は避けたり前足の爪でガードしたりしていたが、この魔法は相手を倒すまで終わらない。
数秒でクマは動かなくなった。
「隠しててごめんなさい……私……たぶんミミロさんよりも強いの……」
命掛けで戦ってくれたミミロの顔が見れない……
勇気を持って振り返るとミミロさんは腰を抜かしていた。
「今のは一体何ニャ?」
困惑した顔をしているミミロさんにすべて説明してあげたいけど、私のスキル「万物の鏡」は他人に話すべきことではない。
「実は……逃げなくても大丈夫だったの、怖い思いさせてごめんなさい」
泣きそうな私を見てミミロさんは立ち上がり、私の頭を撫ではじめた。
「14歳でそれほどの力……きっとクウキにも事情があるし謝らなくていいニャ、それよりも助けてくれてありがとうニャ」
ミミロさんの小さな手はとても暖かかった。
読んでいただきありがとうございます




