わたしの鍛冶屋
44話 わたしの鍛冶屋
「……私ちっこくない。」
「そうですよ!クウキさんに失礼ですよ!」
店主が私を見る。
「ハル、ここは武器屋だぞ?オモチャは売ってねーよ!」
……無視しよ。
「ハル、なんでここに?」
「クウキさん、武器とか持ってなかったですよね?」
「……うん」
「ギルド依頼の為に必要かと思いまして。」
「あっ、そうなんだ。」
「ここなら、剣でも杖でも安くて良いものが、揃ってますよ。」
「へー……。」
このボロ屋に?
「ちょっと待ちな!俺は認めた奴にしか武器は売らねぇぞ。あと無視するんじゃねぇ。」
怒ってる……
「……別にいらない。」
「え?いらないんですか?」
「うん、学園で借りれるし……」
「学園には木剣しかないですけど……」
「木剣で……じゃあダメだよね。一応買っとこうかな。」
ほんとは木刀もいらないけど……
「店主……中見せて。」
「だからお前には売らねぇって!」
「店主、クウキさんには店主の武器が必要なんです。見せてあげてください!」
上目遣いで店主にお願いするハル。
目を逸らす店主。
「……ハルがそこまで言うならしょうがねぇーなぁ。」
指で頭を掻く店主。
やっぱり別のとこで買いたい気がする。
「ちっこいの!こっち来い!」
店の中に入って行く。
「ちっこいのじゃない。クウキ……」
「クウキ早く来い。」
ボロボロの店の中には何も無かった。
店主もいない。
「何もない……」
「こっちですよ。」
ハルが床の中に消えて行く。
転移門?
「待って……」
急いで転移門を踏む。
眩しい。
目を開けると……
先ほどの小屋からは考えられないほど広く綺麗な空間。
壁にも机にもところ狭しと並んだ武器。
そのどれもが輝いて見える。
奥のカウンターで両手を広げる大男
「ようこそ俺の工房へ!」
「……すごい。」
「わたしも初めて来たときは驚きました。」
「で、クウキ。お前さん何が欲しい?」
「……双剣。」
「へー、双剣使いか……その辺においてあるぞ。」
指さされた一画には様々な双剣がズラリと並ぶ。
「……1番安いのは?」
「値段で言ったらこの辺だな……」
床に置いてある木箱を指差す。
その中に1双。
真っ黒。
なんの装飾もない双剣。
かっこいい。
なんとなく拾い上げる。
意外とずっしりしてるなぁ……
「おいクウキ……なぜそれを持ち上げてる……?」
目を見開く店主。
「勝手に触ったらダメだった?」
「いやダメじゃない……。」
「じゃあなに?」
「その剣はな、とにかく頑丈な剣を目指してできた失敗作だ。」
「失敗?」
「あらゆる素材を叩き込んだから、片手じゃあ持てないほど重いんだよ!」
「……え?」
「クウキお前何者だ?」
「クウキさんはわたしと同じレイギス学園の生徒です。」
ハルが私と店主の間に立つ。
「ハル、たかが生徒が片手で持ったらいけねぇんだよ……」
「なぜです?そんなに重いんですか?」
「あぁ……重いぞ。お前の父親でも両手で持つのがやっとだったからな……」
ハルが振り向く……
目が飛び出そうなくらい驚いてる。
「……けっこう重かったよ?」
近くの机に剣を置く。
ガチャン!
置いた瞬間机が壊れる。
「あ……」
口が閉じない。
やってしまった……。
店主。こんな双剣、奥にしまっておいてよ……。
「……クウキさん」
ハルの重い口が開く。
流石にハルも私の力に気づいたかぁ。
「……なに?」
覚悟を決めた返事。
「流石わたしのライバルです!」
えー。
「いや……」
「この双剣はクウキさんを待っていたんですよ!」
「でも……」
「きっとそうです。これは運命の出会いです!」
目が輝いてる。
「……店主。」
「なんだ……?」
「これ、いくら?」
「クウキ……マジか?」
「……まじ。」
「……銀貨7枚だ。」
「やすっ。」
私は日替わり定食と同じ値段で、相棒を手に入れた。
「よかったですね!」
「……うん。」
————
その日の夜。寮の一室。
「ということがありまして、クウキさんに相棒ができたんですよ!」
「……あんた何しに行ったのよ?」
アリージュは頭を抱えた。
「次は私がプラン考えるわ……」
「いやでも……」
「でもじゃない。言う通りにして!」
「……はい。」
別の部屋では……
黒く輝く双剣を磨く。
「クウキさん武器かったんですのね?」
「……うん。」
「かっこいいですわ!ちょっと見せて欲しいですの!」
手を伸ばす。
「ダメ!」
「えっ?」
「……ごめん。エリッタに怪我させたくない。」
「こちらこそ、ごめんなさいですの。」
「……うん。」
なんかとんでもねぇ武器を買ってきましたの……
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