わたしは特別な少女
ハルは変態なのかもしれません
剣聖になりたい。
5歳のわたしハル・ヒラハシヤは剣聖の父の試合を見てそう思うようになった。
「父様、どうやったら剣聖になれますか?」
剣聖のことは剣聖に聞くのが1番だと思い父聞いてみた。
「ハルは剣聖になりたいのか?」
なににも興味を示さなかったわたしが剣聖に興味を示したことに父は驚いていたが、少し嬉しそうにも見えた。
「父様のように強くなりたいです」
なぜ強くなりたいかは自分でもわからないが、5歳児ながら強くならなくてはいけないと思った。
「そうか、強くなりたければレイギス学園に入学を目指しなさい、そして大切なものを見つけなさい」
大切なものの意味はわからないが、このときレイギス学園に入学することがわたしの第一目標になった。
「わたし、レイギス学園に入る」
王都では6歳になると教会に行きスキルを授かっているのか確認する儀式をする。
儀式といっても鑑定眼が使える牧師さんや冒険者に鑑定してもらう程度のことで、わたしの場合父が鑑定眼を使えるので、6歳の誕生日に家で父に鑑定してもらった。
与えられるスキルは2つ、これはスキルの決まりみたいなもので必ず2つ与えられて、スキルが1つしか持っていない人も居なければ、スキルを3つ以上持っている人も居ない。
「スキル長剣術と魔力創造、それがハルのスキルだ。良いスキルを授かったな」
スキル持ちの子供が必ずスキル持ちになるわけではないのでスキルを持っていると知ったとき、わたしは嬉しさのあまり泣き出してしまい父を困らせた。
自分の持っているスキルがわかった次の日の朝からわたしの特訓が始まった。
ほんとは父に鍛錬をつけて貰いたかったが剣聖の父は忙しくたまにしか相手してくれないので、スキル大全集を片手に1人で特訓を開始した。
スキル大全集は現在まで確認されているスキルが全て載っている本で、スキル「長剣術」や「炎の担い手」などの下級スキルに至ってはスキルによって使える、戦技や魔法の出現方法などスキルの育て方まで載っていて、父が誕生日プレゼントにわたしにくれたものを使っている。
スキル大全集には魔力量を増やす方法も載っていて6歳のわたしはまず魔力量を増やすことを目標にした。
「えーとっ、魔力は消費するればするほど増えていくが人には生まれつき魔力量に限界がある……ですか」
魔力量を増やすには魔力を消費する必要があり、魔力を消費するには戦技や魔法を使う必要がある。
走り込みや剣の素振りなどはしているが6歳の時点で「長剣術」の戦技は出現していない為、いきなりスキルの特訓終了かと思われたが、わたしにはもう1つスキル「魔力創造」がある。
「えーとっ、授かった者が少なく不明なことが多いが魔力がある限り、術者が思い描いた物を創造する?……よくわからないスキルですが最高じゃないですか」
父と同じスキル「長剣術」にテンションが上がっていたが、「魔力創造」の能力を知ってさらにテンションが上がってしまった。
「魔力創造」でいろんな物を作って魔力を消費すれば、スキルのことも理解できるし魔力量を増やす特訓にもなる。
「魔力創造、長剣」
しかしなにも起こらなかった。
あれっ、魔力が足りませんでしたか?もう少し小さい物なら……
「魔力創造、短剣」
しかしなにも起こらなかった。
またダメですか、材質をもっと軽い物に変えて……
「魔力創造、木短剣」
しかしなにも起こらなかった。
これも出ませんか……もっとシンプルな物なら
「魔力創造、小枝」
目の前が光だし想像した通りの小枝が出現した。
「これが今の限界ですか……」
小枝を拾い上げようとするが体に力が入らない……
わたしは魔力を使い果たしてしまいその場に倒れ込んでしまった。
「ここは……屋敷の中ですか」
目を覚ますと部屋のベットに運ばれていた。
「ハル様、やっとお目覚めですか?」
ベットの上でキョロキョロしていると、わたしの専属メイドとして働いているリナが朝食を持って扉から入ってきた。
字の読み書きや簡単な計算などはリナが教わりました。
「わたしどれくらい寝てましたか?」
窓の外はまだ明るいので半日も寝ていないと思う。
「まる1日寝ていましたよ、旦那様からは魔力の使いすぎで寝ているだけだから心配はいらないと言われました」
小枝1本創造するだけでわたしの魔力をほぼ全て消費するスキル……なんて修行向きのスキルなんでしょう!
「ハル様、どちらに行かれるのですか?」
ベットから飛び降りて扉に手をかけるわたしをリナが引き止める。
「魔力の修行をしに行きます」
剣聖になるために1日も休んではなりません!
「ハァ……」
リナは大きなため息をつくと呆れた顔をしながらわたしを抱きあげてベットにわたしを戻した。
「今日は修行禁止です」
心配なのはわかりますが外にいきたかったです。
「わかりました、今日は部屋にいます」
朝食を食べ終わるとリナは片つけのために一旦部屋を出ていくので、修行を諦めたふりをして朝食を食べ始める。
「おとなしく部屋にいてくださいね」
朝食を食べ終わるとリナが食器を持って部屋を出て扉を閉めた。
もう行きましたかね?
ベットから出て扉に耳を当てて足音を確認すると、足音はもうしなくなっていた。
「魔力創造、小枝」
部屋の中でもスキルは使えるので、とりあえず昨日より短めの枝を出して見た。
体が一気に重くなり魔力が枯渇したのがわかった。
今日はこれくらいにしときましょう……
わたしはフラフラになりながらベットまで行くとそのまま意識を失った。
次の日からは走り込みと剣の素振りなどの基礎トレーニングをしたあと「魔力創造」を使って小枝などを作って倒れない程度に魔力を消費するのが日課になった。
時々魔力を消費しすぎて倒れてしまうことがあったが日を追うごとに魔力量が増えていくのがわかる。
わたしが8歳になるときには実践で使える長剣を1本創造できるようになっていた。
そしてその頃から不思議な力が芽生え始めた。
剣聖の父の屋敷には仕事の関係でたくさんの冒険者や騎士が出入りする。
わたしは鑑定眼は使えないがその冒険者や騎士を見るとだいたいの魔力量がわかるようになっていた。
父に相談してみると、それは戦士の勘のようなもので、その戦士の勘に魔力を乗せられるようになれば鑑定眼が使えるようになるらしい。
この勘が掴める人が冒険者の中でも1割くらいしかいない為、鑑定眼を使える人は貴重で冒険者の序列が上がりやすい。
A級冒険者の中でも鑑定眼が使える人が20人くらいしかいないらしいです。
実戦もしていないのに鑑定眼の片鱗を見せたわたしは天才らしく本来は10歳からつけようとしていた家庭教師を来月から付けると言い始めた。
早く強くなりたいわたしとしてはとても嬉しいことに思えた
「はじめまして私はマイヤ・マトローナ、これから2年間よろしくね」
父と話してから1か月後、わたしの家庭教師が家にきた。
マイヤさんはなんか眠そうなお姉さんです。
これから週に1回のペースで2年間剣術や冒険者の仕事について教えてくれる。
「ハル・ヒラハシヤです。よろしくお願いします」
わたしの勘によるとマイヤさんは今のわたしの倍くらいの魔力量を持っている。
「よろしく、じゃあ今からハルちゃんの実力を見せて貰おうかな……おぉ〜すごいね……その歳で魔力2500はさすが剣聖の娘さんだね〜」
おそらく鑑定眼でわたしを鑑定している。
魔力感知がすごい人なら鑑定された瞬間に鑑定されたことに気づけるが、わたしにはさっぱりわからない。
「まずは鑑定眼を使えるようになろうか、これで目を隠して」
わたしの鑑定が終わるとマイヤさんは黒い布を取り出し渡してきた。
「今からハルちゃんの周りに魔力の塊を設置するからその木刀が斬ってみて」
目隠しをするとわたしの周囲に魔力を複数感じた。
この辺りでしょうか……
木刀を振り下ろすがなにも感触がない
「近いけどもうちょっと先だね〜」
その後何度も振り下ろすが全く当たらない。
「目隠しを外して斬ってごらん」
目隠しを外したら修行にならないじゃないですか……
言われた通りに目隠しを外すと辺りにはなにもないし魔力も感じない。
「これはどうゆうことですか?」
さっきまで感じていた感覚がまるでない。
「ハルちゃんはさっきまでなにを斬ろうしていたの?」
そんな決まっています。
「魔力の塊です」
マイヤさんはニコニコしている。
「じゃあ魔力を持たない人が魔力を見ることができると思うかい?」
魔力がとても強い人の魔力は可視化できることもありますが基本的に魔力を持たない人が魔力を見ることは不可能です。
マイヤさんは今さらなにを言っているのでしょうか?
「できないです」
マイヤさんはずっとニコニコしている。
「わかっているじゃないか、魔力は魔力がないと感知できない、じゃあどうして目隠しをしているときは無意識のうちに自分の周囲に魔力を張り巡らせて魔力感知していたのに、目隠しをとった瞬間に魔力感知をやめてしまったの?」
確かに今まで魔力を魔力で感じて可視化していたのに今は目に頼って魔力を見ようとしている。
魔力を張り巡らせて魔力を視る。
「それだよ〜それが魔力感知だよ〜」
さっきまで何もなかった空間に無数の魔力の塊が見える。
「これが魔力感知ですか……」
今まで何となく感じていた魔力が今はハッキリ存在を感じる。
「鑑定眼はその魔力感知の延長線上にある技術でね「長剣術」などの身体強化系のスキルを持っている人なら誰でも使える可能性があるんだ」
すごい……1日目で魔力感知ができるようになってしまいました。わたしは天才なのかもしれません。
「じゃあ来週また来るからそれまで今の感覚を忘れないでね」
そしてこの人について行けばわたしは強くなれます。
「今日はありがとうございました」
はやく鑑定眼が使えるようになりたいです。
マイヤ先生と出会って一年後
「スキル「上級長剣術」と炎みたいなものが見えました。魔力量は17000くらいでしょうか?」
鑑定眼のテストでマイヤ先生を鑑定している
「だいたい合格だね〜今は私とハルの魔力量の差が大きいからぼやけて視えるだけで、ハルの魔力量が増えればもっとはっきり見えるようになるよ」
確かに通りすがりの冒険者やメイドさんはハッキリと鑑定できていた。
「わたしって魔力少ないほうですか?」
今までずっと訓練してきたが少し不安になってきた。
「そんなことないよ魔力5500もあれば高い方だよ。A級冒険者にも魔力5000の人いるしね」
その人に会ってみたいです。
「それと鑑定眼が使えるようになったからって誰でも鑑定しちゃダメだよ。鑑定眼が使える人にはバレちゃうしスキルでステータスを隠蔽して偽のステータスを見せてくる人もいるからね気をつけてね」
この1年鑑定眼を習得する為に必死に頑張ってきたが魔力の差でマイヤ先生を鑑定できないのは悔しかった。
「鑑定眼も取得できたし、これからは「長剣術」の修行をしていこうか」
マイヤ先生がニヤリと笑う。
「よろしくお願いします」
なんだか嫌な予感がしますが先生について行けば大丈夫でしょう。きっと。
そこからの1年間は地獄でしたが剣聖になる以外に目標がなかったわたしに目標ができました。
戦技修得の為には闘うしかないと言いながら一日中わたしと模擬戦をして最後には「来週までに強くなっといてね〜」なんて言いながら帰っていくし。
毎週毎週ボロ雑巾のようになるのが嫌でサボろうとすると、どこまでも追いかけてきて結局ボコボコにされ、屋敷に連れ戻されるし。
時には狩りに連れ出されて、知らない魔獣に襲われ死にそうになりました。
そんなことが続き家庭教師を変えてもらおうと父に相談すると「良い修行をしているじゃないか」と笑って褒められて絶望したのを覚えています。
「ハルならきっと良い剣聖になれるよ……」
修行の最終日にいつものようにボロ雑巾になっているわたしを抱きしめてくれました。
少し感動してやっぱり良い先生だなと思いかけた瞬間。
「まぁ、剣聖になっても私は倒せないけどね〜いつでも挑戦待ってるよ。あと、見送りの時に毎回私に向かって中指立ててるの知ってたからね」
そう言い残すと冷や汗をかいたわたしを捨てて、帰って行きました。
そんな1年間を送った結果、スキル「長剣術」が「上級長剣術」になり魔力量が10000まで上昇してわたしは強くなりました。
そしてあの女をぶっ○すという新しい目標ができました。
「ハル、修行はどうだった」
最終日の夜しょんぼりしながら食事をとっていると父が嫌なことを思い出させる。
「父様、わたしは結局マイヤ先生に一撃も入れられませんでした」
泣きそうになりながら結果を報告するわたしを見て父は不思議そうな顔をしている。
「それはそうだろ、S級冒険者に一撃入れられるわけがないだろ」
え?
「マイヤ先生ってS級冒険者だったんですか?」
S級冒険者に教わっていたら強くなるに決まっている。
「知らなかったのか?S級冒険者マイヤ・マトローナ様だぞ」
先に言って欲しかったです。
「でもどうして?」
S級冒険者が動くときは国家レベルの災害などの人類が太刀打ちできない時だけのはずです。
「父さんが剣聖になった時に王様に頼んだんだ、学園への入学のために最高の家庭教師を雇ってくれってな。まさかS級が来るとは思わなかったがな」
父は笑っているがわたしが人生で初めて殺意抱いた相手がS級冒険者だと知って絶望しています。
わたしの父は親バカなんだろうか?
「そういえばハル、レイギス学園には実技や模擬戦だけじゃなくて筆記の試験もあるが、マイヤ様に教わっているのか?」
父様それは初耳です。
あの女はいつかぶっ○すとして、筆記の勉強をしなければなりません。
「はい、大丈夫です」
明日から頑張ります。
先生と別れてから4年ついにレイギス魔剣学園の入学試験の日がやってきました。
わたしは、この日の為に今までの特訓に耐えてきました。
今年の受験生は、レイギス王国第二王女をはじめ元剣聖の孫や有名な貴族のご子息などの強者が揃う黄金世代と言われていますが、もちろんわたしの首席入学は当たり前です。
わたし他にS級冒険者に教わっている受験生がいなければですが。
学園の門に着くとすでに数人が受付に並んでいて受付を始めていた。
わたしもその列に並んで受付を待っていると、列の横をものすごい速さで何かが通り過ぎて門の中に入って行った。
おそらく2人組でなんらかの戦技か魔法を使っていて目で追うのもやっとだった。
受付をしないで門に入るところをみると学園の先生か臨時で試験管をするA級冒険者のどちらかだろうが、どちらにしろ今のわたしでは足下にも及ばないと思い少し不安になる。
あの2人組に気づいた人がどれくらいいたか辺りを見渡すと広場の隅の方で挙動不審になっている黒髪の少女を見つけた。
最初は受験生の妹さんかと思ったが係の人が話しかけて行ったので受験生なんだろう。
なんとなく気になって鑑定してみるとスキル「双剣術」「氷の担い手」魔力700、受験生としては並のステータスをしているがこの学園に入学するには魔力1000くらいはないと厳しい。
筆記で満点をとって実技では全魔力使うしかあの子が合格する方法はなさそうですね。
そういえば受付はまだでしょうか?
「やっときたニャ、遅いニャ2人とも」
受験生達がまだ受付をしている頃学園の教職員と臨時の試験管であるA級冒険者達が学園の中庭に集められていた。
「ギリギリ間に合ったから良いでしょ」
1番最後に来たのに堂々としながらミミロの頭を撫でているライサ。
「ライサが少し寝坊しちゃたの、だけど怒らないでねミミロちゃん」
ライサを庇うふりをしてライサの事をチクるアクリナ。
「どうでも良いけど私の頭を撫でるのをやめるニャ」
ミミロの頭を撫でるのは最早挨拶になっている。
「久しぶりねミミロ、2週間くらい王都では見なかったけど何してたの?」
ミミロとライサ、アクリナは序列が近いこともあって王都のギルドで顔を合わせることが多いのでそれなりに仲が良い。
「護衛任務に行っていて、昨日王都に帰ってきたニャ」
クウキのことを探られないように最低限の返事をするミミロ。
「へー、大変だね、そういえばさっき化け物に追いかけられてなんだよ、ねアクリナ」
興味ないなら聞くなよ、と思ったミミロだったが化け物と聞いて嫌な予感がした。
「そうなのよ、遅刻しそうだったからライサの「雷鳴の言霊」の移動魔法を使ってここまで来たんだけど……その私達を尾行してきた女の子がいるの!」
ライサ序列59位のスキル「雷鳴の言霊」の移動魔法は常人の目には映らないスピードで移動できる、A級の中でもトップクラスのスピードを誇る魔法だ。
「そんな子いるわけないニャ」
ミミロにはこころあたりがある。
「しかもスキルや魔力を使っている感じはしなかった」
ミミロは化け物の正体を知っている。
「そんな化け物いるわけないニャ、見た目はどんな感じだニャ?」
2人は首を傾げる。
「あれ?確かにいたけど……思い出せない」
「印象にないですね……」
おそらくクウキは認識阻害をしていたのだと思いミミロは安心した。
「変なこと言ってないで静かにするニャ、もうナツメが来ているニャ」
3人で話していると学園長であるナツメ・サイジョウがステージの壇上に上がる。
「ごきげんよう皆の衆、毎年試験のたびに集まってくれて感謝している、今回も例年通りの仕事をしてくれれば良いが、今年の受験生には癖が強い者がちらほらいるみたいなので気をつけて監督するようにのぅ、ではよろしく頼むぞ」
先程まで騒がしかったA級冒険者達30人がS級冒険者1人のなんだか軽いあいさつで静かになった。
「それではそれぞれ指定された教室に向かうがいい、あっそうじゃミミロは残ってもらいたいのぅ」
学園長がミミロを睨む。
「なんか用かニャ?」
クウキのことを探られると思い焦り始めるミミロ。
「ミミロたーん」
ミミロが学園長に近づくと目を光らせてミミロをモフリ始める。
「やめるニャー、こんなことで呼ぶなニャー」
内心安心しているミミロは学園長を引き剥がして自分が担当する教室に向かう。
「お待ちしておりましたハル様。この受験カードを持って中の誘導員の指示にしたがってください」
受付を済ませて門をくぐると誘導員の人がたくさんいて迷わずに教室にたどり着くことができた。
教室の中には10人くらいの受験生がいてノートを見返したり神に祈るようなポーズをしている者もいて少し入りづらいが、
わたしも中に入って試験開始を待つ。
少し時間がたち、扉の外でオドオドしている人以外は教室に集まっているがすごく静かで居心地が悪い。
あっ入ってきました。
さっきの黒髪の少女じゃないですか、なんだか少し可愛く見えてきましたので影ながら応援させていただきます。
黒髪少女がわたしの斜め前の席についてからすぐに試験管の方が入ってきた。
「みんな集まったかニャ〜?」
あの銀髪の獣人族の方はA級冒険者序列85位のミミロさんではありませんか!
噂通りとても可愛らしい容姿をしています。
ミミロさんが試験の説明をしながら試験用紙を配っている。
なんかミミロさんが黒髪少女にウインクしているように見えるが気のせいだろう。
黒髪少女とミミロさんを交互に眺めていると学校内に試験開始の笛が響く。
「試験開始ニャー」
一枚目は数の試験ですか……
この4年間筆記試験の勉強をしてきたわたしにとってこんな学園の試験簡単に決まっています。
自信満々で問題を解き始める。
最終問題は少し難しかったですが、おそらくわたし満点ですが黒髪少女さんはどうでしょう?
黒髪少女の方見るとすでに試験を終わらせて机に肘をついて前の方を見ている。
わたしより早く解き終わっていた?スキルや魔力の修行を捨てて筆記試験に標準を合わせているのでしょうか?それにしても天才のわたしよりも早く解き終わるはずがありません。
ますます黒髪少女さんに興味が出てきました。
二枚目はスキルの試験ですか……
スキル大全集を暗記しているわたしにとってはサービス問題ですね。
最終問題までなんの躊躇も無く進んでいく。
最終問題の超級スキルを7つ全て答える問題はおかしいです。
超級スキルの情報は国家機密になっていて剣聖の父にも知らされていない様子でした、おそらく知っているのは国王とS級冒険者くらいでしょうか。
この王都を覆っている結界は超級スキルで作られていると知った時はS級冒険者に恐怖を覚えました。
この問題は空欄でいいでしょう。
スキルの試験を終えて黒髪少女を見るとさっきと同じように机に肘をつけて前を見ている。
またわたしより早く解き終わっています。
この黒髪少女もしかして分からない問題を全て諦めているのでしょうか?
そんなことをしたら実技試験や模擬戦でいい成績を出さなければいけませんが、魔力700の彼女にはそれも難しいです。
わたしより天才なのかもしれません。
3枚目は冒険者の試験ですか。
A級冒険者序列1位の娘にとってはこれもサービス問題ですね。
冒険者の問題を解いているとあの女の顔がチラついてイライラしてきますが今回は黒髪少女さんよりも早く解き終わりたいです。
裏の問題に入る前に少し斜め前を見ると、黒髪少女はすでに机に肘ついて前を見ていた。
これで確信しました。
あの黒髪少女さんは記念受験というものですね。もうあの子のことは気にしないで試験に集中しましょう。
裏の問題も特に難しいものはなく最終問題にたどりついた。
最終問題、S級冒険者の名前を7人全て答えなさい。
この問題もおかしいS級冒険者が7人いることは公表されているがその名前は公表されていない、ギルドに入っていれば7人知っているのかもしれないが一般的に知られているのはこの学園の学園長ナツメ様と王都を結界で覆って王都を防衛しているキイナ様くらいだ。
一応ナツメ様とキイナ様のとあの女の名前を書いて試験を終了した。
試験終了後、自然と黒髪少女の方を見ている自分に気づき慌てて試験用紙の見直しをする。
「お疲れ様だニャ」
ミミロさんによると運動場で明日の実技試験の練習していいとの事なので、急いで荷物の整理をしに寮に向かう。
寮は2人部屋になっていてルームメイトはランダムに決められる。
寮の部屋に着くと中には誰もおらずルームメイトを待ちながら荷物を整理を始める。
ルームメイトと仲良くしたいですね。そのためにはやはり第一印象が大切ですね。とびきりの笑顔でお出迎えしましょう。
そんなことを考えながら荷物を整理していると部屋の扉が開いた。
「はじめまして、わたしはハル・ヒラハシヤ」
相手の顔が見えた瞬間とびきりの笑顔で自己紹介するが扉はすぐに閉まってしまった。
ん?
いきなり話しかけて驚かせてしまったでしょうか?そんなことより一瞬しか見えなかったですが、黒髪少女さんじゃなかったですか?
確認のためにすぐに扉を開けるとそこには涙目をしたさっきの黒髪少女が立っていた。
「大丈夫ですか?ビックリさせてしまってすみません、中に入ってください」
改めて見るととても可愛らしい顔をしていて、なにか守ってあげたくなる感じがする。
「大丈夫、私こそ驚かせてごめん、私はクウキ」
クウキさんは中に入るとわたしの隣で荷物の整理を始めた。
「筆記試験は難しかったですね」
なんとなく探ってみる。
「そうだね」
なんか流された気がする。
荷物を整理しながらクウキさんのことを探ろうとしたが、この短い時間ではクウキさんのことは全くわからなかった。
わたしは荷物整理が終わると、実技試験の練習をするために運動場に向かった。
クウキさんも誘って一緒に練習したかったが、筆記試験で疲れた昼寝するらしい。
遠くから来たと言っていたので、長旅の疲れがでたのでしょうか?
運動場に着くと多くの受験生が練習を開始していた。
的に向かって魔法を打ち込んでいたり、カカシのような物を戦技で斬りつけていたり、受験生同士で模擬戦をしたりして明日の実技試験に備えている。
「あら、ハルじゃない」
わたしが準備運動をしていると後ろから声をかけられた。
「ルーアですか、久しぶりですね」
振り向くと金髪ツインテールの少女、ルーア・ダルクルが双剣を構えた立っていた。
ルーアは先代剣聖ザイア・ダルクルの孫で、小さい頃からわたしに勝負を挑んではボロ負けしてきている。
「今回の試験、1位になるのはこの私よ!」
ルーアも少しは強くなったのでしょうか?鑑定させてもらいましょう。
ルーア・ダルクル、スキル「双剣術」「氷の担い手」、魔力3300。
そういえばクウキさんと同じスキルでしたね、魔力は受験生の中では高い方ですね。
「そうですか、頑張ってください」
絡まれるとめんどうなのでその場を立ち去ろうする。
「ちょっと待ちなさいよ!」
ルーアは相変わらず声が大きいですね……
「どうしたんですか?」
ルーアが双剣を構えて挑発してくる。
「模擬戦くらい付き合ってあげるわよ」
わたしも特に何をすれば良いかわからずに運動場に来ていたのでちょうどいい誘いだった。
「ではお願いします」
ルーアをボコボコにしていると辺りが暗くなっていることに気づいた。
「ルーア、わたしはこの辺で失礼します」
ボロボロになったルーアに声をかけて寮の部屋に戻ると二段ベットの下の段でクウキさんが寝ている。
よっぽど疲れていたのでしょうね。
「クウキさん起きてください、ご飯の時間ですよ」
その場で呼びかけてもクウキさんは起きない。
今度は近くで声をかけるためクウキさんの顔を覗き込むとそこには天使のような寝顔をしたクウキさんがいた。
なんだか変な気持ちになってもう少しよく見ようとクウキさんに顔を近づける。
クウキさんの鼻息がわたしの頬をかすめて正気に戻った。
わたしはなにをしているのでしょう……
「クウキさん起きてください」
そのままクウキさんを起こして夕食に行った。
夕食中もクウキさんの寝顔が忘れられずに変な気持ちになっていたので、夕食後は1人で運動場に向かい無心で剣を振り続けた。
わたしはどうしてしまったのでしょう……
汗をかいて気持ちもさっぱりしたところで寮に戻ってシャワーを浴びることにした。
「ただいまクウキさん」
部屋の中に入るとバスルームからバスローブ姿のクウキさんがふらふらになりながら出てきた。
なんだかいい香りが部屋中を満たしていて、その中で目を潤ませながら頬を赤く染めているクウキさんがとてもいやらしい。
「大丈夫ですか?クウキさん」
わたしはクウキさんの体を触ろ……支えようとクウキさんに駆け寄る。
「大丈夫、もう寝るね」
クウキさんはバスローブのままベットに飛び込み布団をかぶってしまった。
「おやすみなさい、クウキさん」
「おやすみ」
わたしも同じベットに飛び込みたい気持ちを抑えてバスルームに向かう。
バスルームにはさっきまでクウキさんが使用したであろう下着やタオルが散乱していてわたしを誘惑しているように見えた。
もちろん嗅いだり被ったりなんてしてませんよ……
少し長めのシャワーから出てわたしも眠りについた。
「クウキさん起きてください」
翌朝クウキさんの寝顔を一時間くらい眺めてから、さすがに遅刻すると思い声をかける。
「あと……すこし……」
クウキさんは寝起きが悪いらしくベットから出ようとしないので半ば無理やりベットから出して、クウキさんを背負うようにして食堂に運ぶ。
食堂に運ぶ道中クウキさんの体が密着してとても幸せな気持ちになった。
「心配だなぁ」
クウキさんは試験の心配をしているみたいで、なんだか元気がなかった。
確かに魔力700では少し厳しいかもしれません……
「大丈夫ですよ、自分を信じていきましょう」
もし試験に落ちてもわたしが使用人として雇って一生めんどうみます。
食事を終えて闘技場に行くと試験特有の緊張した空気が流れていて、さっきまで緩んでいたわたしの表情も引き締まる。
「長剣術、スラッシュ」
実技試験が始まり1番に呼ばれた受験生の戦技が炸裂する。
おそらくスキルを持っていれば入学できると思い込んでいる貴族の典型的なパターンですね。
ろくに練習もせずに試験に臨んでいるに違いありません。
「いきます、炎の担い手ファイアーボール」
2番目に呼ばれた受験生を見て他の受験生が小さく歓声を上げる中わたしは感動していた。
炎魔法の中でも最弱の魔法をここまで成長させるとは並の努力では辿りつけない領域にいます。入学したらお友達になりたいです。
その後は平均的な受験生が20人くらい続き、わたしの番がきた。
壇上に上がると試験管の先生が鑑定しているのがわかったが気にしないで剣を構える。
父様が学生の時に出した記録が1200点それを超えるのが今のわたしの目標。
出し惜しみなんてしてられない、全力で目の前の盾を叩き斬る。
「上級長剣術、シュレット」
最大限の魔力を込めて剣を叩きつけて息を切らしながら、盾の点数をみる。
987……
表示してある点数をみて残念な気持ちになり、クウキさんが目をキラキラさせて褒めてくれたがあまり喜べなかった。
もっと修行を積まなければ剣聖になんてなれない……
悔しさを隠すように俯いているとクウキさんが呼ばれた。
「頑張って」
笑顔を作ってクウキさんを送り出す。
今のクウキさんでは150点くらい出せばいい方で、魔力を全て乗せれたら500点くらいは出せますが……
低い点数が出たらわたしの胸を貸してあげましょう。
クウキに手を振りながら、自分の胸で泣くクウキを想像していると辺りの気温が下がった気がした。
「氷の担い手、アイスアロー」
あれっ、魔力おかしくないですか?
クウキさんが魔法が盾に当たった瞬間その場で立っていられないほどの衝撃が会場を襲う。
壇上をみると穴が空いた盾を見ながらなぜか諦めた表情をしているクウキさんとこの学園の学園長が立っていた。
学園長の話によれば盾が故障し爆発してしまったとのことで、クウキさんの点数は300点らしい。
いろいろ腑に落ちないことはありますが、クウキさんが高得点を取れてとても嬉しいです。
その後実技試験が終了して明日の模擬戦に向けてクウキさんを練習に誘うも断られてしまったので1人で素振りを始める。
わたしも小さい頃、魔力を使いすぎて倒れたことを思い出しクウキさんを見送った。
「あらっ、ハルじゃない、実技試験どうだった?」
剣の形を確認していると昨日に引き続きルーアが話かけてきた。
「まあまあでしたよ……」
今日のルーアはいつにも増して自信満々の顔をしている。
「今回の実技試験で歴代最高得点が出たんですって」
歴代最高得点が何点かは知らないがわたしよりも高い点数なのは間違いない。
「確か受験番号1366の受験生で1300点以上を叩き出したそうよ、明日の模擬戦で当たらなきゃいいわね」
それだけ言うとルーアは寮に帰って行った。
明日の模擬戦の組み合わせは完全ランダムでは無く、今日の実技試験の点数が近い者同士組まれるのでわたしの相手は高確率で1366番の受験生になるだろう。
久しぶりに強者と戦える気がして素振りにも熱が入る。
満足するまで素振りをしているともう食堂の利用時間を過ぎていたためお腹を空かせて寮に帰る。
部屋に戻るともしもの時のために持ってきた保存食を食べてクウキさんを起こさないように静かにシャワーを浴びる。
早く休んで明日に備えましょう。
二段ベットの上の段に登ろうと梯子に手をかけると下の段で寝ているクウキの吐息が聞こえてきた。
いけない気持ちになる前に自分のベットに潜り込みわたしは就寝した。
朝日と共にに目を覚ますとクウキを起こすためにベットの下段を覗き込む。
何度見ても天使のような寝顔をしていて気がつくとクウキの顔に吸い込まれるように自分の顔を近づけていた。
わたしは朝から何をしているのですか!
正気を失い唇を重ねようとすると目の前の天使が目を覚ます。
「ハル、近いんだけど」
慌てて体勢を立て直し起こそうとしていたことを伝える。
「食事の時間なので、クウキさんを起こそうと思いまして……」
クウキさんが目を覚さなかったら、わたしはどうなっていたのでしょうか……
「ありがとうハル」
朝のクウキさんの笑顔はやましい気持ちでいた自分を殺した、いい笑顔でした……
朝食を摂り模擬戦の会場に向かうと対戦票が張り出されていた。
わたしの相手は1002番の方ですか、1366の方と戦いたかったですが残念です。えーとクウキさんの相手は……1366番……
え?
これは何かの間違いですか?
実技試験で1300以上も出した方とクウキさんが戦ったら確実にクウキさんが怪我をしてしまいます。
クウキさんに対戦相手がとても強いことを伝えると「じゃあ頑張らないとだね!」と言って、わたしに心配かけないように無理やり笑顔を作って答える姿がなんとも健気で愛おしく見てしまいます。
クウキさんに次会う時は合格発表と言いましたが1002番さんを一瞬でKOしてクウキさんの元に向かいます。
自分の模擬戦の会場に向かうと対戦相手は来ておらず試験管に受験カードを提示して準備運動を始める。
「1044番がまさかハルだったとはね〜」
顔を上げると1002と書いた受験カードを渡すルーアの姿があった。
「模擬戦の相手がルーアだなんて嬉しいです」
相手がルーアなら、なんの迷いも無く一瞬で片つけられます。
「私も嬉しいわよ、今までの屈辱ここで返してあげる」
ルーアの構えと共に模擬戦開始の笛がなる。
「双剣術、乱れ斬り」
ルーアの双剣の蓮撃ハルに襲いかかる。
クウキさんの事を考えていたらルーアに先制を許してしまいました。
「どうよ、避けるのが精一杯でしょ」
確かに手数が多くて反撃できません。
「魔力創造、土壁」
ルーアのとハルの間に大きな壁が出現する。
「こんな壁!」
ルーアは壁を飛び越えて再度ハルに襲いかかる。
「あなたは飛び越えるしか考えてないですもんね」
壁を飛び越えたルーアの視界に剣を構えたハルの姿が見えた。
「上級長剣術、スラッシュ」
ハルの一撃を双剣でガードするも、剣圧が高すぎて後方の壁に叩きつけられるルーア。
そのままルーアは倒れ込み模擬戦はハルの勝利で終わった。
「少しは強くなっていて安心しました。ではまた」
ルーアに声をかけてから一目散にクウキの元に向かった。
クウキの模擬戦の会場に着くともうそこにはクウキの姿は無く、代わりに大きく地面が抉れた跡が残されていた。
これは1366さんがクウキさんを攻撃した跡ですか……
クウキさんは今頃大怪我をしているに違いないです……
わたしのクウキさんがぁ……
模擬戦で死ぬことはないし合格発表の日にまた会えるので今は目の前の試験に集中しましょう。
気を取り直して面接会場に向かうとさっき倒したルーアが順番待ちをしていた。
「怪我はないんですか、結構な威力で斬ってしまったのですが?」
急いでいたとはいえ少しやりすぎてしまった。
「この学園の医療魔法は王国最高の技術を持っているのよ、ハル程度の攻撃でついた傷なんて一瞬で直してくれたわ!」
自慢げに言い放つとルーアは面接室の中に消えていった。
「次の方どうぞ」
ルーアが消えてからすぐにわたしの番が来て面接が始まった。
「お名前と受験番号をお願いします」
「はい、受験生番号1044、ハル・ヒラハシヤです」
面接では「試験はどうでしたか?」など「模擬戦の相手は強かったですか?」などの試験に対する質問が続き最後に志望動機を聞かれて面接は終了した。
面接が終わり荷物を取りに部屋に戻ると中から物音が聞こえる。
クウキさんが荷物を取りに来ているのかもしれません。
「はニャ、お邪魔してるニャ」
期待を胸に扉を開けると一日目の試験管だったミミロさんが荷物を漁っていた。
「何しているんですか?」
もしかしてクウキさんの下着を盗みに……
「クウキが何も持たずに帰ったから荷物を整理してこいってナツメに頼まれたニャ、全く人使いが荒いニャ」
もしかしてクウキさんは荷物が取りに来れないほど重症なの……
「クウキさんは大丈夫なんですか?」
クウキは魔人と戦った後、怒ったキイナに連れてかれたって聞いたニャ
「たぶん死にはしないニャ、そんなことよりもこのパンツはクウキのかニャ?」
あれはクウキさんの下着……
「それは私のです」
ミミロさんから宝物を受け取り荷物の整理を開始する。
「それじゃ、手伝ってくれて助かったニャ」
ミミロさんを見送りわたしも家に帰る。
「ただいま帰りました」
3日ぶりの自宅はなんだか懐かしく思えた。
「おかえりなさいませハル様、試験はどうでした?」
メイドのリナの顔を見るのも久しぶりで懐かしい。
「試験はまあまあでしたが、疲れたので今日もう休みます」
自分の部屋に入ると寝巻きに着替えて試験中ずっと我慢していたことを実行した。
「魔力創造、クウキさん人形」
本物のクウキと同じくらいの人形を作り抱き枕のようにしてベットに入る。
本物にはほど遠いですが今はこれで我慢しましょう。
早く本物のクウキさんに会いたいです。
ハルは変態です




