私はチート少女
初めての投稿でいろいろヤバいかもしれませんが是非読んでみてください。
パパの手伝いくらいしてあげればよかった……
そんなことを考えながら私、クウキ・アニシスは人からも魔人からも恐れらているダンジョン「龍王の深淵」で魔獣の群れに囲まれている。
なぜこんなところに居るのかというと、ただ誰にも邪魔されずに昼寝したいのと、食堂を営んでいるパパの手伝いをしたくないから……つまりはサボる為に人間界と魔界の狭間まで逃げてきた。
私、人と話したりするのちょっと苦手だから接客業とか無理だから、店にいても逆に迷惑になるだけだから……
あと普通の人はサボりたいからといって「龍王の深淵」なんかに来ちゃダメだからね?私くらい強くないとダンジョンに入って一歩も進めずにやられちゃうからね!
ここなら誰にも邪魔されずに昼寝する事ができると思って、来てみたけど聞いてた話とだいぶ違う。
空気中のマナが濃すぎるせいで、大体の生物は呼吸困難になり一歩も進めないから、マナに強い耐性がある人にとっては基本的に静かで過ごしやすい場所とママが言っていた。
確かに入り口付近には立ち入り禁止の看板が立っていて、静かな場所なのかなと思ったが、そんなに良い所ではなかった。
魔獣が絶え間なく襲いかかってくる。しかもただの魔獣じゃない、この呼吸困難になるほどの濃いマナに、対応している変異個体だ。
変異個体はこの濃いマナを吸収して強化されている為、一体一体とてもタフで、倒すのがめんどくさい。
さっき倒したクモの魔獣なんて出会い頭に炎の上位魔法を打ってきたし、今目の前にいるゴブリンは一回魔石になったのに蘇生してまた襲いかかってきてる。
ダンジョンの魔獣がこんなにも好戦的で倒しにくいとは思わなかったよ。
森の魔獣だったら目を瞑ってでも倒せるのに、このダンジョンにそんな魔物はいない。
どこかに安全で気持ちよく昼寝できそうな場所とかないかなぁー。サボりたくてここに来たのに、なぜこんなにも忙しいのだろう?
それはママが嘘の情報を教えてきたからだ。次会ったら文句言ってやる。
襲い掛かってくる魔獣を魔石に変えながらダンジョン内の森を進んでいくと、微かな木漏れ日の中心に大きな岩をみつけた。
近づいみると、苔が生い茂っており小柄な私が昼寝するには丁度いい大きさをしている。
想像通りの良い感じのベットを見つけてしまった。
しかもさっきまで絶え間なく襲ってきていた魔獣が、姿を現さなくなった。噂に聞くセイフティスポットってやつだろうか。
魔獣との連戦で疲れていることもあり、今すぐにでもここで惰眠を貪りたいけど、念の為魔獣獣に邪魔されないように対策をしておく。
「万物の鏡、結界」
私がそう呟くと岩の周りを透明な壁が囲んだ。
この結界は、周囲から私の存在を隠す役割と対物理魔法障壁を兼ねている、お昼寝にとっても適した魔法だ。
これで誰からも邪魔されずに昼寝する事ができる。
岩の上に寝そべるとパパとママの顔が頭に浮かんだ。
きっとパパは、私を探す暇もなく店を切り盛りしているのだろう。なんとなく罪悪感が湧いてきたので、たまには店を手伝ってあげよう。
ママは私が「龍王の深淵」に来たことを知ったらニヤニヤしながら感想を求めてくるだろうなぁ……ここに来たことは秘密にしておこう。
自分の中で罪悪感を消す為の言い訳をしていると、暖かい日差しとふわふわの苔クッションが、だんだんと私の眠気を増大させて意識を奪っていく。薄れゆく意識の中で私は決心した。
「明日からもここでサボろう」
小さな宣誓をして私は眠りについた。おやすみ
眠りについてから数分後、結界を攻撃される音と衝撃に私の昼寝は中断された。
結局昼寝を邪魔された私は、イライラしながら周囲を見渡すが何も見当たらない。
気のせいだと思い、昼寝の続きをしようとしていると上空で影が動いた。その瞬間さっきよりも強い衝撃が襲う。
上空の影を見ると、巨大な翼を持つ真っ黒なドラゴンが口から光線を出して結界を攻撃していた。
なぜ結界が見えたのかはわからないが、私の結界を見破れるってことは、相当な強敵に違いない。
「エンシェントアークドラゴン……」
鑑定スキルで視てみると種族名「エンシェントアークドラゴン」、称号「龍王」となっていたのでおそらくこのダンジョンのボスだと思う。
このドラゴンを倒せばもう邪魔するものは何もない。
「万物の鏡、火精霊の吐息」
結界を攻撃しているブレスを結界の中から火魔法で迎撃するが、龍王なだけあって余裕で押し返してくる。
このままだと結界が破壊されちゃう。
「やばっ」
結界が破壊される寸前でその場から離脱して、体勢を立て直す。
「貴様の様な小娘が、我の領域に何をしに来た?」
龍王が話かけてきた。人の言葉を喋れる魔獣とはこれまでに何回か遭遇したことがあるので驚きはしない。
相手に言葉が通じるなら、話し合いでなんとかなるかもしれない。正直に本当のことを言おう。
「昼寝しにきたの、だから邪魔しないで」
「嘘を吐くなぁぁぁ」
龍王は激昂した。嘘じゃないです。
「その馬鹿げた魔力、まさか魔王の転生体か?」
違います。人間の女の子です。
「最古の魔王の証を盗みにきたのだろ?」
それは何?
「あれは誰にも渡さない」
龍王は大きな口を開けて、巨大な火の球を飛ばしてきた。
話し合いは失敗したので、私もじっとしているわけにもいかない。
「万物の鏡、海皇の鎖」
火の球を避けながら、スキル「海溝の覇者」の拘束魔法を発動させる。
水の鎖が龍王の顔に絡まり、火の球を吐くことができなくなり龍王の攻撃が止んだ。
鎖を外そうとしている龍王の仕草が猫のようでなんだか可愛い。
今度は私の番、龍王にピッタリの戦技があるよ!
「万物の鏡、龍殺の聖剣」
空中で鎖を外そうとして隙だらけになっている龍王に、跳躍して接近し、私の中で必殺の戦技を叩き込む。
この技で倒せなかったら、あのスキルを使うしかない……
光の刃が龍王の首を切断し、私の心配は杞憂に終わった。
「ふぅ〜疲れた〜」
魔石になった龍王をポケットにしまって、再び岩の上に寝そべる。
ママ以外に結界を破壊されたのは今回が初めてだったので、つい本気を出してしまった。
龍王が魔石になった瞬間、ダンジョン内の濃いマナが消えた気がするが、そんなことはどうでもいい、これでやっと邪魔されずに昼寝できる。
私は再び夢の中へ旅だった。
目を覚ますと知らない夜の森……じゃなくて「龍王の深淵」にいた。正確には「龍王の深淵」だった森にいた。
この「龍王の深淵」はボスを倒すと消滅するタイプのダンジョンだったのか……
「やばっ」
ダンジョンを消滅させるつもりも無かったし、夜まで寝るつもりも無かった。急いで帰らなければ。
パパの怒った顔が目に浮かぶ。
店の手伝いをサボるのはいつもの事なので、怒ったりはしないが、危険な場所に行ったり、門限を破ったりするとパパは鬼のように怒る。
「万物の鏡、転移」
私は急いで街の近くの森の中に転移した。
街の中に転移するわけにはいかないし、店の中に転移するとお客さんにスキルがバレてしまうし、自分の部屋に転移するとパパに遠くに行っているのがバレてしまうので、街の近くの誰もいない森から店まで歩いて行くのが定番の帰り道になっている。
この森は普段から薬草採取や狩りなどでたくさんの人が利用しており、街の人や冒険者に出くわすことも良くある。
しかし夜になると魔獣が徘徊する危険な森になるので、森に入るのは魔獣の討伐や調査の依頼を受けた冒険者か、森で肝試しをしようとするバカくらいなので、転移を他人に見られる心配はない。
スキルを他人に知られたくない私は、昼間この森に転移するのは有り得ないが、夕方以降の日が暮れた今なら最高の転移場所だと思っている。
転移成功後、一応誰にも見られてないか周りを確認してから街の門を目指す。
森から出るといくつかの畑があり、その間の道を進むと街の門が見えてきた。
門には常に門番がいて、森の魔獣や盗賊が街に入らないように監視している。
「おっクウキちゃん、今日もサボりかい?」
いつものように話しかけてくる門番に会釈しながら門をくぐる。
この門番はパパの店の常連さんで、店で会うときも、こうして門で会うときも、気さくに話しかけてくれる。
良い人なのはわかっているのだけど、特に話すようなことも無く、私としては会釈するくらいしかない……てか会釈しか出来ない……
いや、本当は私だってあいさつくらいはしなきゃとは思うよ!でも人と話すのって難しくない?他人の視線って怖くない?会釈するのにだって勇気いるんだから。
よって私はこの門番の名前すら知らない。
門から家までは大通りを真っ直ぐ街の中央に進めばすぐに着くのだが、人とできるだけ会いたくない私は人通りの少ない路地裏を通った。
しばらく路地裏を進むと、賑やかな話し声と共にいい匂いがしてきた。パパの店だ。
この街で数少ない飲食店だけあって毎晩人が溢れ返っている。
店に入りたくない。
ガチャ
パパのお説教を想像しながら、路地に面した裏口の前でモゾモゾしていると不意に裏口が開いた。
「あら、おかえりクウキちゃん」
パパの店でウエイトレスをしているアンナさんが、ゴミ袋を持って出てきた。
アンナさんは数年前にママが街に連れてきた女性で、なんでこの街に来たか知らないし、この街に来る前に何をしていたか教えてくれない。
アンナさんと初めて会った日に鑑定でアンナを見ようとしたが、ママが私の目を覆ってきて見れなかった。
その後ママが「絶対に鑑定しちゃダメ」と言ってきたのでアンナさんを鑑定したことはない。
ママとの約束は何があっても破ってはいけない。もし破ってもバレてはいけない。
アンナさんの素性はよくわからないけど、綺麗で優しいアンナさんが大好き。
「こんにちはアンナさん、パパ怒ってる?」
とりあえずパパの機嫌を探ろう。
「もうカンカンよ!」
アンナさんはいつもの優しい笑顔でこれから始まる地獄を教えてくれた。
アンナさんに隠れながら店の中に入ると、巨大な岩のような男がこちらを睨みながら近づいてくる。
「た、ただいまパパ」
「何時だと思ってるんだ、クウキ」
元冒険者のパパ、フリーグ・アニシスの怒鳴り声は店中に響いた。
「ご、ごめんなさい〜」
ほんとにごめんなさい。ほんとはもうちょっと早く帰ってくるつもりだったの。
しかし説教が長くなるので言い訳はしない。私も成長している。
「だいたいお前、こんな時間まで何をやっていたんだ?森に行ってたみたいだが?」
ん?
なんでパパが森に行っていたことを知っている?
軽くパニックになりながらキョロキョロしていると客席にさっきの門番がいた。
門から店まで路地裏を通った私よりも、表の大通りをまっすぐ来た門番の方が二倍くらい早く店に着くのだ。
この門番、やりやがった……
「森で何をしていたんだ?」
パパが追撃してきた。
「昼寝をする場所を探しに……」
嘘はついてない。
「はぁ……お前がママと同じスキル持ちで強いのは知っているが、夜の森は危険だ」
龍王を倒した私に危険なんてない!と言いながらポケットの魔石を見せようとしたが、もっと怒られそうなのでやめた。
「ごめんなさい」
私のママは現役の冒険者で、この国でトップクラスの実力を持っているらしい。
そんなママに私は、小さい頃から鍛えられた。
さっき使った結界や転移はママから教えてもらった技なの。
ママと私の修行を誰よりも近くで見ていたパパは、私が誰よりも強いことを知っている。
「一日中店の手伝いをしろとも、森に行くなとは言わないが、もっと早く帰ってきなさい」
知っていて尚心配してくれるパパのことが、私は大好き。
「明日からはもっと早く帰るよ」
もうパパに心配かけないようにしよう。
「これを持って行きなさい」
しょんぼりしながら一階の店舗から二階の私たち家族が生活する住居スペースに上がろうとするとパパが晩御飯のスープと一通の封筒を渡してきた。
二階に上がると真っ先に食卓に向かった。
よくわからない封筒はおいといて、まずはお腹を満たそう。
スープを温め直そうと鍋に魔力を注ぐ、この鍋は魔道具になっていて魔力を注げば中の物が温まるようになっている。
いつものパンをスープで流し込んだところで、自室に行き封筒を開封した。
送り主はレイギス魔剣学校の校長で、封筒の中には試験の招待状と王都の地図が入っていた。
スキルを持つ私には学校の入学試験を受ける資格があるから、王都レイギスまで試験を受けにきてほしいとのことだった。
この世界では百人に一人くらいの確率でスキルを持って生まれてくる。世間では「スキル持ち」と呼ばれていて、神様が人類を魔物から守るために、地上に送り込んだ戦士だと言われている。
スキルには様々な種類があり、スキルによって魔法が使えるようになったり、戦技を使えるようになったりする。
例えば火の魔法を使うには生まれつき「炎の担い手」などのスキルを持っていなければならない。
しかしスキル「炎の担い手」を持ってる人全員がファイアーボールを使えるとは限らず、同じスキルを持っている人同士でも、スキルの練度や魔力量のよって魔法や戦技の威力や種類が違うので、スキルを完全に使いこなすには、スキルを育てる必要がある。
スキルの熟練度が上がると稀に上位スキルに進化することがあり、魔法や戦技の威力が倍増される。
レイギス魔剣学校は十四歳以上のスキル持ちを集めて、三年間スキルの使い方や練度の上げ方を教え、スキルに合った職場を提供してくれる、国が経営する学校で、この学校を卒業すれば人生勝ち組が約束される。
しかしスキルを持っていれば誰でも入学できるわけでも無く、平民、貴族、王族関係なく平等に試験を突破しなければならない。
試験は四日間かけて行われる。試験内容は一日目に筆記、二日目に実技と魔力測定、三日目に受験生同士の模擬戦があり最終日に面接がある。
毎年の合格率は8%くらいになるんだって。私なら確実に合格だけどね!
人生楽して生きて行きたい私が、こんなめんどくさい試験を受ける筈も無く手紙を丸めようとすると、ある考えが頭によぎった。
この学校に入学して将来成功を約束された人と仲良くなって、その人に養ってもらえば私も楽して生きていけるのでは?
さすがに養ってくれるなら誰でも言い訳じゃなく、強いのはもちろんのことだけど、優しくて、私を甘やかしてくれて、料理がうまい人がいいなぁ。
卒業までに見つからなかったら、パパとこの店で働けばいいよね!
でも学校に行くってことは、この家を出ないといけないわけで寂しがりのパパが絶対に反対してくるだろうなぁ。明日はパパの説得で忙しくなるぞー。
人生の転機を感じながら私は眠りについた。
翌朝、パパに試験を受けに行きたいと伝えた。
「そうか〜、今まで一人も友達ができなかったクウキが学校に行きたいだなんて、パパは嬉しいぞ」
パパは賛成してくれた。
「王都ならママもいるし安心だな」
パパは賛成してくれた。
「クウキの実力なら学生の試験なんか簡単だろうけど、油断するなよ」
パパはとても賛成してくれた。
「私が学校に行くってことは家を出るってことだよ?パパは寂しくないの?」
もしかしたらパパは家から通うと思っているのかもしれない。
「このまま一生自立しないと思っていた娘が、自立の第一歩を踏み出そうとしているんだ!寂しいなんて言ってられるかぁ」
パパ今まで心配かけてごめんなさい。私自立……じゃなく寄生先を変えます。
「で試験日はいつなんだ?」
そういえばいつなんだろう?手紙を再度読み返す。
「えーと、牡羊の月の1日目だって」
今日が魚の月の17日だから試験の日は13日後ってことになる。
「13日後か、あまり時間がないな」
ここから王都まで馬車で4日かかるので遅くても8日後にはこの街を出なければならない。ママが迎えに来てくれれば一瞬で王都まで行けるのに……
スキル「束縛の断絶」の転移は、一度行ったことのある場所にしか行けないので王都に行ったことの無い私は馬車で行くしかないのだ。
試験まで時間がないが、幼い頃からママに鍛えられた私には今頃になって試験対策なんて必要がない。
試験までにやるべきことは、王都に行っても美味しい料理を食べたいのでパパに料理を教えてもらうことと、養ってくれそうな人とすぐに仲良くなるためアンナさんに友達の作り方を教えてもらうこと。
まぁ明日から頑張ろう。
出発の日、馬車の乗合場にパパと向かうとアンナさんが見送りに来てくれていた。
「いい?笑顔よ、笑顔」
見送りのときまでアンナさんは友達を作るためのアドバイスをしてくれた。
学校に行くと決めた日から何度かアンナさんに友達の作り方を聴いてきたが、アンナさんは「笑顔が大切よ」とか「笑顔は人と人を繋ぐのよ」と笑顔でいれば自然と友達ができるらしい。
正直、他の子と仲良く出来るか不安だったけど私のスーパーカワイイ笑顔があれば楽勝じゃん。
でも友達の作り方はわかったが試験に落ちる可能性もあるわけで……
「学校の試験なんてクウキには簡単だろ。気楽に行けよ」
パパの安心する声が私の少しの不安をかき消した。
「試験結果が出たらすぐに伝えにくるからね、行ってきます」
二人に手を振りながら馬車に乗り込むと、私の乗車を待っていたかの様に馬車は走り出した。
街を出発して半日ほど森の中を進むと、綺麗な湖が見えてきた。
「馬を休ませるから休憩するニャ、私たちもお昼ご飯にするニャ」
馬車を運転してくれているミミロさんが昼食の準備をしながら声を掛けてきた。
ミミロさんは銀髪青目の獣人族女性で私よりも小柄な体格、頭に猫のような耳、お尻に尻尾が生えている。
私の護衛と王都までの案内役としてパパが雇ってくれた冒険者でパパの昔からの知り合いで、パパ曰く、見た目のよらず恐ろしく強いらしい。
私のスキル鑑定で視たところ、スキル「大剣の狂者」と「風の担い手」を持っている。
スキル「大剣の狂者」は多分「大剣術」の上位スキルだろう。
魔力量は5200
一般的な魔力量を知らないけど、パパと同じくらいしかないので多分低めだと思う。
パパは昔のことをあまり話さないので、この旅の中でミミロさんから聞き出そう。
「ミ、ミ、ミミロさん」
よく知らない人と話すのはとても久しぶりで、今から愛の告白でもしそうな感じに呼んでしまった。
「ミが多いニャ」
ミミロさんは笑いながらパンを頬張る。その姿が可愛いすぎて本当に告白してしまいそうになった。
「パパとはいつ知り合ったの?」
「私たちがレイギス学校に通っているときニャ、あの時はフリーグとパーティーを組んでいたニャ」
パパが「王の城砦」と「身体強化・剛」のスキル持ちなのは知っているが、レイギス学校の通っていたことを初めて知った。
スキル「王の城砦」は自身のパーティーが受けるダメージを全て肩代わりするやばいスキル、「身体強化・剛」は自身の防御力を上昇させて受けるダメージを減らすスキルでこのスキルがなかったら「王の城砦」なんて発動出来ない。
「パパって強かった?」
「フリーグはとても優秀なタンクだったニャ、私は何回も命を救われたニャ」
パパのことを褒められるとなんだか嬉しい。
昼休憩中もその後の馬車の中もミミロさんはパパの昔のことをいろいろ教えてくれた。
ミミロさんが可愛いくて優しくてよかった。王都まで楽しい旅になりそう!
出発してから3日目の朝、楽しい旅ではなくなった。
「ミミロさんは、凄腕冒険者なんでしょ?」
大きめのクマの魔獣に追われながら質問する。
誤ってクマの棲家に入ってしまったようだ。
「そうニャ、序列85位のA級冒険者だニャ」
必死に馬を操作しながらドヤ顔するミミロさんはやっぱり可愛い。
「じょれつ?って?」
「はぁ……クウキは何も知らないのニャ、でもその話しは後ニャ」
森の木々の間をジグザグに進み、クマが木に引っかかっている間に道に戻り一気に突き放す。
「凄腕冒険者なら倒しちゃえばいいのに?」
ミミロさんが戦ってる姿をまだ見ていないので、少し見てみたくなった。
「無理ニャ、あれはエンペラーグリズリー。この森のボス魔獣で、ソロ討伐できるのは序列30位くらいの冒険者じゃにゃいと無理ニャ」
ミミロさんを危険に晒すわけにもいかないし、ここは逃げよう。
私ならスキルを使えば簡単に倒せるだろうけど、ママとの約束で「双剣術」と「氷の担い手」の技しか使えないからなぁ……
双剣なんて持ってないし、普通の氷魔法じゃあ倒せなさそうなので、クマが諦めるまで逃げ続けるしかないよね!だんだんクマとの距離も離れてきているし大丈夫でしょ。
そんなことを考えていると、馬車が急停車した。
「どうしたの?」
「もう終わりだニャ」
馬車の前を見ると追いかけてきているクマとは別の個体が道を塞いでいた。
「エンペラーグリズリーが二頭もいるなんて聞いてないニャァー」
森の方からはさっきのクマの足音が迫ってきている。もう馬車を捨てて森の中に逃げるしかない。
「ミミロさん、こっち!」
ミミロさんの手を取り森に逃げ込もうとすると、ミミロさんは私の手を振り払った。
「楽しい旅ももう終わりニャ、私が時間を稼ぐからクウキは逃げるニャ」
ミミロさんが私の前で大剣を構える。
「そんなのだめだよ、一緒に逃げよ?」
ミミロさんは首を横に振った。
「一緒に逃げたところでどちらも助からないニャ、それにこれはフリーグに恩を返せるチャンスニャ」
さっきまで可愛いかったミミロさんの後ろ姿が、今はとてもカッコいい。
クマの一頭くらいなら余裕で倒せそうなほどにカッコいい。
「大剣の狂者、豪剣」
スキルを発動させたミミロさんはすごいスピードで、道を塞いでいるクマに斬りかかる。
大剣がクマの前足を切り裂こうとするが、毛皮が硬すぎて刃が通らない。
ミミロさんは身を翻し私の前に戻ってきた。
その瞬間、最初から追いかけてきていたクマが森の中から姿を現す。
「早く逃げるニャ」
二頭のクマが徐々にに距離を詰めてくるのを見てミミロさんが、再度私に逃げるように指示してきた。
ミミロさんが、死ぬ気で私を守ろうとしているのに私は何をしているんだ……
「大丈夫だよミミロさん」
私はミミロさんの前に立ち、両腕を上げる。
「何をしてるニャァー」
ミミロさんの怒鳴り声をはじめて聞いた。
ママとの約束を破るのは少し怖いが、ミミロさんは私が守る。
「万物の鏡、氷槍の乱舞」
少し周り温度が下がり、数百の氷の槍が私の頭上に現れた。
私があげていた両腕をそれぞれクマに向けると、氷の槍が一斉にクマめがけて発射された。
数百の氷の槍に強襲されたクマは、最初は避けたり前足でガードしたりしていたが、この魔法は相手を倒すまで終わらない。
数秒でクマは動かなくなった。
「ねっ、大丈夫だったでしょ?」
笑顔で振り返るとミミロさんは腰を抜かしていた。
「今のは一体何ニャ?」
困惑した顔をしているミミロさんにすべて説明してあげたいけど、私のスキル「万物の鏡」については誰にも言うわけにはいかない。
「実は私とても強いの、怖い思いさせてごめんなさい」
ミミロさんは立ち上がり、私の頭を撫ではじめた。
「きっとクウキにも事情があるし謝らなくていいニャ、それよりも助けてくれてありがとうニャ」
ミミロさんの小さな手はとても暖かかった。
「まだまだ道は長いニャ、出発するニャ」
クマの魔石と素材を回収して馬車に乗り込むと、すでにミミロさんが出発の準備を整えてくれていたみたいで馬車は再び王都目指して進み出した。
「その魔石どうするニャ?」
そろそろ王都が見えてもおかしくない頃、私は魔石を持って悩んでいた。
王都で換金しようにも、ギルドに入ってない私には換金できないし……あっ、そうだ!
「ミミロさんにあげる!」
「いらないニャ」
食い気味で断られてしまった。
「確かに序列85位の私がエンペラーグリズリーの魔石を換金したら、一気に序列50位圏内に入れるから欲しいけど、それは不正ニャ。不正がバレたら、また序列4桁からやり直しになるニャ」
冒険者にもいろいろあるんだなぁ。じゃあ魔石は王都にいるママへのお土産にしよう。
「そういえば、じょれつ?ってなに?」
「はぁ〜、クウキは何も知らないのにゃ」
それからミミロさんは王都やギルドのことを教えてくれた。
ミミロさんによると、この国でスキルを使って仕事をするには国営ギルドに所属する必要があり、ギルド序列はギルドに所属する冒険者や軍人、騎手など全ての人に与えられる。
順位の付け方はスキルの強さや魔力量だけでなく、依頼達成度や国への貢献度、魔獣の討伐数などを総合して決められる。
序列1500位以下をD級、1499〜1000位をC級、999〜100位までをB級、99〜2位までをA級と呼び、序列1位は剣聖と呼ばれる。
剣聖は三年に一度の武芸大会で決定されるが誰でも大会に出場できるわけでなく、大会の参加資格は序列50位以上であることで、剣聖になれば国王が可能な限りの願いを一つ叶えてくれる為、だいたいの冒険者や騎士は剣聖になるために、依頼をこなしたり鍛錬したりしている。
そして1位より上、国では管理できない人智を超えたスキル持ちをS級と呼び序列からは除外している。現在S級と呼ばれる人は7人いて一人一人が一国の軍事力に匹敵する力を持っているらしい。
ママって序列何位なんだろう?
「クウキも剣聖になる為に学校に通うのかニャ?」
私は序列には興味がないが、剣聖には大いに興味がある。
「私は将来の剣聖を見つける為に学校に行くの」
「ニャ?」
ミミロさん「この子は、なにを言っているの?」みたいな顔で見ないでください。
話を変えなければ……
「あっ、あれが王都?」
森の街道を抜けると高い壁にに囲まれた巨大な街が見えてきた。
「あれが王都レイギスニャ」
やっとこの旅が終わる。
「あの結界はなに?」
王都をよく視ると透明な結界で街全体が覆われている。
「あれはS級冒険者キイナが王都を守る為に張っている結界ニャ」
薄々気づいていたけど私のママ、キイナ・アニシスはS級冒険者だった。
「ママの結界だ……」
懐かしくなって、つい呟いてしまった。
「いま、なんて言ったニャ?」
ミミロさんが困惑していると、馬車が止まり目の前が光始めた。
スキル「束縛の断絶」の転移だ。
「ママが来る」
光の中から現れた長い黒髪の女性が、逃げようとしている私を抱きしめる。
「クゥウ〜キちゃ〜ん、久しぶりね〜会いたかったわ。どうして王都にいるの?」
痛い抱きしめる力が強い。約2年ぶりの再会で嬉しいのはわかるが痛い。いい匂いがする。柔らかい。
「久しぶりママ、学校の試験を受けにきたんだよ。」
痛いのを我慢して答える。
「魔王クラスの魔力が王都に近づいてくるから、ママびっくりしちゃったわ」
一応隠蔽している私の魔力が、見破られている。
「キイナ、久しぶりニャ。クウキがキイナの娘だって知らなかったニャ」
ミミロさんもママと知り合いみたいだった。
「ミミロちゃん!」
ママはミミロさんと目が合った瞬間ミミロさんをモフり出した。
「やめるニャ〜、クウキ助けるニャ〜」
私には無理だ、そんな目で見ないでくれ。
「ミミロちゃんがクウキを連れてきてくれたの?」
ミミロさんをモフり終わったママは、私たちと一緒に馬車に乗り検問の列に並ぶ。
「そうニャ、フリーグに依頼されたニャ」
「そうなの……私に言ってくれれば一瞬で王都までクウキを送れるのに」
パパと私はママへの連絡手段がないから無理だ。
「ママお土産あげる」
ママの機嫌が悪くなりそうだったので、クマの魔石を渡して機嫌を取ろうとする
「あらエンペラーグリズリーの魔石じゃない、クウキが倒したの?」
「そうだよ」
ママの顔色が怪しくなってきた。
「ミミロちゃんの前でスキルを使ったってこと?」
完全にママとの約束を忘れていた。
私のスキル「万物の鏡」は見たり聞いたりしたスキルをなんでもコピーできる能力を持っている。強すぎるが為にママ以外の人前で使ってはいけない約束だった。
しかしそれだと不便なのでスキル「双剣術」と「氷の担い手」の能力だけ人前で使うことを許されている。
「氷の魔法しか使ってないよ」
嘘はついていない。しかしクマを倒したときに使った「氷槍の乱舞」は「氷の担い手」ではなく上位スキル「氷界の聖騎士」の魔法だ。
「下位スキルでエンペラーグリズリーを討伐できる訳ないでしょ、クウキちゃんはいつから嘘をつくようになったの?」
いや、嘘はついてない……
「ミミロちゃん、クウキちゃんの強さについては他言無用よ?」
「もちろんだニャ」
ミミロさんは、ママの機嫌が悪くなったのを感じたのかとても良い返事をした。
「クウキちゃんには、自身の立場を教え直す必要がありそうね!」
笑顔で殺気を発しないでママ、怖すぎるから。
「束縛の断絶、転移」
馬車ごと転移させられた。ここはどこ?
「ここは私の家の庭よ」
馬車から出ると中々大きいお屋敷があった。うわぁ〜お金持ちの家だぁ。
「ミミロちゃんはこれで依頼達成ね?」
笑顔で威圧してる……
「そうですニャ、ではギルドに報告してきますニャ」
ミミロさんは逃げるように門から出ていった。
「じゃあ私も……」
ミミロさんを追うように門に向かうとママの冷たい手が肩を掴む。
「クウキちゃんはどこに行こうとしてるのかしら?」
「学校の下見に……」
「明日の朝、私が連れていってあげるから大丈夫よ」
はい、もう諦めます。ママの説教を久しぶりに堪能しようと思います。
諦めて屋敷の方を向くと、ママが満面の笑みで手を引いてきた。
「見せたいものがあるの」
屋敷の中に手を繋ぎながら入ると、すぐに地下室に連行された。
「ここは?」
地下室には家具などは一切なく、ただただ広い空間が広がっている。よく視ると部屋全体に何重にも結界が張ってある。
「すごいでしょ?」
ママは体をほぐすような動きをしながら部屋の中央くらいに立っている。ママとの模擬戦は2年ぶりかなぁー。
「クウキちゃんが全力を出しても壊れない部屋よ、クウキちゃんが鈍ってないか見てあげる」
ママとの戦績は47勝125敗、ルールはお互い体に結界を纏って、先に纏った結界が壊れた方が負けとなる。さすがにスキルを使うと街が消し飛ぶのでスキルの使用は禁止、その代わり魔力を飛ばしたり、魔力を拳に込めて殴り合うシンプルなルール。
幼い頃から戦い続けてきて、10歳超えたくらいからだんだん勝てるようになってきた。今日は勝ちに行こうかな。
「万物の鏡、結界」
私が結界を纏った瞬間、数え切れない量の魔力弾が飛んできた。魔力を足に込めて跳躍し避けると、それを読んでいたママが目の前で拳を振るかぶる。反射的に私も拳を突き出した。
魔力の衝突とともに、両者後方の壁に叩きつけられた。
結界はまだ無事だがまともに受けていたら私の結界が砕け散っていた。
「隙だらけだよママ」
体勢を立て直そうとしているママに、今度はこっちから魔力弾を打ち込むがママの魔力弾に相殺されてしまう。
「さすがね!少しヒヤヒヤしたわ。でも無駄な魔力が多い」
褒めてくれてるのはわかるし、アドバイスは嬉しいけど、少しは息を切らしたり、汗をかいたりしてほしい……
ママは成長を見せてこいと言わんばかりに、ニヤニヤしながらこちらに向かって来る。
心配しなくても、ちゃんと見せてあげるよ。
私は再び魔力は足に込めてママに急接近すると、全力の連打を繰り出す。
このスピードについてこれる?
「少し速くなったみたいね」
私の拳を捌きながら余裕を見せているママに、敗北をプレゼントする時がきた。
戦いが始まってから今まで私は圧縮した魔力を霧のように散布し続けていたので、今部屋全体に私の魔力が満ちている。
上下左右360度からの攻撃にママは耐えらてるかな?
「爆ぜろ」
圧縮していて魔力が一気に膨張し爆発する。
眩い光と轟音、そして凄まじい衝撃が地下室全体を襲い、私とママを壁に叩きつける。
我ながら凄まじい威力に驚いている、でもママはもっとビックリしているに違いない。
爆発が終わるとママの結界も私の結界も地下室の結界も吹き飛んでいた。
「私の勝ちだね」
床に倒れているママを起こしながらドヤ顔を決めるが、私もめっちゃダメージ喰らって体中が痛い。
「もう完敗よ、私の娘は魔王にでもなるのかしら?」
微笑みながら抱きしめてくれる。
S級冒険者に勝つ私って、ほんとに何者なんだろう?
初めて書いてみて、小説家ってすごいんだなぁと思いました。




