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1、婚約者破棄そして捨てられる⁈

「リアメル・サラ・チベーリア公爵令嬢そなたとの婚約を破棄する。この場の者が証人だ。」


悪役令嬢である私、リアメルは只今、この国の第一王子であるベルク・ルイ・マーベル様主催の夜会にて、断罪イベントの真っ最中である。


はぁー、やっぱり悪役令嬢というものは、ストーリーの強制力には敵わないものなのね。

ヒロインになんて、全く関わっていないのに…でも、陛下と王妃様は味方につけてあるし、国際会議に出席されている陛下とお父様達は、明後日には帰国されるはずだから、この場さえ凌げば大丈夫……よね?


私は幼い頃から前世の記憶があり、ここがゲームの世界である事に気がついていた。

バットエンドを回避する為に、王子の婚約者にならないよう、出来るだけ関わらないようにしていたのに、何処かで私を見初めたという王子からの熱い要望により、シブシブ婚約者になったのは、殿下8歳、私が5歳の時だった。


それでも、ゲームのシナリオとは異なり、私の事をとても大切にしてくださった。

時折、授業をサボろうとして周りを困らせていたが、それでも勉学や剣術も真面目に取り組まれていた。

そんな時間を過ごす中で、もしかしたらヒロインなんて現れずに、このまま過ごせるんじゃ無いかと思った時期もあったけど、そう上手くはいかなかった。


本来のストーリーであれば、悪役令嬢の入学時に、希少魔法の使い手であるヒロインが、隣国より魔術の勉学に励む為、魔法先進国であるマーベル王国へと転入してくる。

幼い頃、王子に一目惚れした悪役令嬢は、権力を使って婚約者の座を勝ち取り、その地位を周りへと自慢しているだけで、勉学や王妃教育に励まずに成績は最低レベル。

そんな婚約者を王子がいくら改心させようとしても無駄な努力に終わり、年々我儘になって行く悪役令嬢に、王子も困り果てていた。

そんな所に、希少魔法の使い手にも関わらず、直向きに努力し、身分の低い者達にも手を差し伸べる、美しい心を持ったヒロインと出会う。

お互いに惹かれ合い、悪役令嬢の妨害にもめげずに、愛を育んで行くと言うストーリーだったはずなのだが…


何故かヒロインは殿下の入学と同じ年に学園に入学しており、私が学院に通う頃には王子を始め、攻略対象者のハーレムを築き上げていた。

ヒロインに夢中な王子の成績は12歳の入学時から徐々に落ちて行き、17歳になられた今では中間以下で公務までも、疎かにする始末。


ヒロインなんて、悪役令嬢の立場からすれば、ただの男好きの阿婆擦れ女じゃないの!と思うけど、元々婚約破棄の覚悟はできていたし、少なからず対策もしてきた。

ヒロインとの逢瀬に忙しく学業や公務を疎かにし、王位継承権をいつまでも受け継ぐことの出来ない王子に対してなんて、なんの未練もないわ。

私が長年どれだけ妃教育を励み、王子の代理 訪問などをこなして来たと思っているのよ!


「婚約破棄の件、確かに賜わりました。それでは第1王子殿下、私はこれで失礼致しますわ。」


「まっ、待て!そなたの処分についてまだ伝えておらん」


「処分?私には何を仰っているのか分かりませんが?」


「しらばっくれるつもるか!ここにいるサアラ・カーセル伯爵令嬢への様々な嫌がらせの数々。希少魔法の遣い手である隣国からの留学生に対しての軽率な行い、国際問題に発展してもおかしくないのだぞ!」


一歩前に出た殿下に寄り添うカーセル伯爵令嬢、その両脇には、魔導師団長子息と騎士団長子息が2人を守る様に固めている。

それから私が行ったと言う嫌がらせについてコンコンと語られたのだが、全て身に覚えのないもの。

ヒロインのすすり泣く姿はとても庇護欲をそそられるのだけれども、あの女、全て演技だろうに…


私の味方である陛下やお父様が不在の機会を狙っての行動だろうが、国外追放にしても陛下の王印が無ければ成し得ない筈だし、今話を聞いていた感じ、大した証拠は無さそうなんだけど、何を企んでいるんだろう?何らかの実力行使に出てくるかもしれない。

それなら抵抗せずにそれに乗るまでか、お母様の事は王妃様にお願いしてあるし、私だけなら大丈夫、なんとかなるわ。


「全く、身に覚えが御座いません。では、殿下!私が行なったであろう愚業の証拠を全て揃え、陛下の御膳にて改めて話し合いの場を設けましょう?私が何もしていないと言うこ事もその時に全て証明致しますわ。それでは、こんな茶番にこれ以上、付き合うつもりはございませんの。もう宜しいでしょうか?」


「なっ!そなた逃げるつもりだな。そうはさせぬ、良かろう陛下がお戻りになるまで離宮に幽閉しておけ!」


「殿下、こんな無礼者に慈悲の必要はございません!今すぐに国外に追放を!」


「そうです!魔法が殆ど扱えない無能者とは言え、このまま国に置いておけば何をしでかすか分かりません!」


まぁまぁ、無罪の人間に対して酷い言いようです事。

あれだけ私に夢中だと仰っていた王子殿下が私の事をまるで居なかった人間のように扱うぐらいですものね。

学院で公務を疎かになさいませんようにと、何度か此方の方々にお声がけさせて頂きましたが、どなたも耳を貸しては下さらなかったですし、ヒロインはそこまでに魅力的な方なのでしょう。

物思いに耽っていると、スッっと王子の腕に縋り付き、愛らしいお顔に涙を浮かべ、上目遣いに王子を見上げているのは勿論、演技派の悪役ヒロイン。


「ベルク様、私…リアメル様にこれ以上、何をされるのかと考えるだけで…怖い」


「サアラ案ずるな、全て私に任せておけば大丈夫だ。レイン!ブラン!リアメル・サラ・

チベーリア公爵令嬢を離宮へ連れて行け!」



とか…なんとか、言っていたのは何時間前のことだろうか…

あの後、離宮に監禁されたのだが、運ばれてきたお茶に薬を仕込まれていたようなので、意識を失う振りをしていたら、手足を縛られ装飾品を奪われた。

お前達は泥棒か?と思っていたら今度は、馬車に運ばれ、転移門を抜け、揺られる事数時間。

騎士団長子息のレイン様と魔導師団長子息のブラン様によって死の森の中へと捨て去られたのだ。

試しに「何をなさるの?」と泣き真似をしながら可愛く言って見たものの「何を今更いい子ぶって!サアラが貴方にどれほど傷つけられた事か!此処で魔物に食われて死ぬがいい」と吐き捨てられたのよね。


死の森は世界の中央に位置しており、処刑にならない程度の重罪人は身分を剥奪されこの森に捨てられる。

国外追放は王印が無ければ出来ないから、死の森に捨てたって事か…まさかここまでするとは、死の森は予想外だったかな。


「さてと、もう馬車も見えなくなったし、どーせならもっと、森の奥深くまで行きたいわよね。何処か景色のいい場所あるかしら?ってゆうかこれ、この縄外していきなさいよ…」



「リアメル 良いカッコだなぁ。しかし、本当にこれで良かったのか?」


「ちょ!グレイク、お母様の事お願いしておいたのに、どうして貴方が此処にいるのよ!でもちょうど良かった。これ外してくれる?」


手足を縛られた状態で、森に放置された私の背後に突然現れたのは、契約精霊のグレイクだった。

グレイクは風の高位精霊で、私以外の人が居る所では声が聞こえるだけで、普段は姿を現す事はないし、契約を口外する事を許してないから陛下と王妃様、側近3名、後は家族しかグレイクの存在は知らない。


褐色の肌に、白銀の短髪で黒目だけの瞳、整った顔立ちで、17、18歳ぐらいの青年の姿をしているのだが、実は3000年以上生きているらしい。

なんでも数えるのが面倒くさいという理由から数える事をしなかったのだとか、自分より下位の精霊が3000歳を超えた為、3000年以上は生きていると言っていたのよね。


私を追放した奴らは、私が魔法を使えないと思っている為、魔封じは施されなかった。

学園では魔法の実技だけは、ある理由により免除されていたのだが、それが功を奏したようね。

手足のロープはグレイクに解いて貰ったのだが、強く縛りすぎた為にロープの跡がくっきりと残ってしまった。


「アイツらリアメルの肌に傷をつけやがって、切り刻んでくれようか!」


「グレイク、待って!これくらい大した事ないわ。治癒はあまり得意じゃないんだけど、治すから大丈夫。それよりも、お母様よ!お母様!」


「あぁ。お前に言われた通り、王妃の所へ届けたし、中位精霊をつけてあるから安心しろ。それよりもだ、お前は本当にこれでいいのかと聞いている。」


「何が?国を追い出される事は想定済みでしょ⁈死の森は想定外だったけど、これはこれで誰も近寄れなくていいじゃない。私はこの森でしばらく暮らすわ。グレイク!ギルドカード作っておいて役立ったでしょう?他国への入国や仕事もできるもの。王子がいくら手を回していようとも、陛下がお戻りになれば私は罪人ではなくなるはずよ。大丈夫!……にならなければ、その時はグレイクに少しお願いしてもいい?」


「全く、心配する必要は無さそうだな。お前の頼みならいくらでも叶えてやるが、俺は高いぞ。さて、冗談はそのぐらいにして、お姫様、綺麗な湖のほとりか、壮大な景色を眺められる場所、何方が好みだ?」


全く!ニヤリと人の悪い笑みを浮かべたかと思えば、片膝をつき私の手に口づけを落としながらグレイクはからかう様に問いかけるんだから、もう私も14歳なんだから、子供扱いしないで欲しいわ。

でも、湖か壮大な景色かぁ……うぅーん、今までずっと狭い世界で生きてきたから景色を見渡したいかな。

「壮大な景色がいい!」その一言を聞くとグレイクは私を抱え、遥か上空へと飛び立った。


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