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仮面α  作者: 霧咲 ユウ
22/22

エピローグ+β。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「あの…すいませ〜ん‼︎」




…私はネットカフェの受け付けで店員さんを呼んだ。




…出て来たのは孝明さんじゃなかった。




…その店員さんに孝明さんの事を尋ねたら…








…彼は1週間前に辞めていた。








…私は中に入り、例の小説にアクセスしてみたが…








…あれから更新されていない。
















…孝梨 志穂…


…ちゃんと彼らの名前が入っていたのに…


…どうして気付かなかったんだろう。
















…私は彼の家に向かった。
















「…………孝明さん?」








…彼の部屋のドアが開いていた。







…なのに呼んでも返事が無い。








…しばらくすると、孝明さんが出て来た。


…スーツの男性と一緒に。








…彼は頭を下げ、男性に鍵を渡した。








「…涛生⁉︎」


…階段を降りた時、彼は私に気付いた。


「…引っ越すんですか?」


…今見た光景が、部屋の引き渡しだと思ったから…




…彼は頷いた。


「……親父から電話があって……仕事を…手伝って欲しいって…。」




…そっか…孝明さんのお父さん…社長だったもんね…。




…でも…




「…それで黙って行っちゃうんだ。」




「……ごめん……。」




…彼は少しの間の後、一言そう言った。




「…サヨナラも言えないなんて、余計…寂しいじゃん。」




「…そうだよな……ちゃんと言わなきゃいけないよな。」




…彼は悲しそうに笑った。




…彼にとって、この街は悲しい思い出が多過ぎるから…。




「……孝明さんに聞きたい事があるんです。少し時間いいですか?」








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…私達は、すぐ近くの公園に来ていた。








「…聞きたい事って?」


ベンチに座った孝明さんが尋ねた。




「孝梨 志穂の正体…。」


「…………。」




…私がそう言った瞬間、孝明さんから笑顔が消えた。




「…あの…私やっぱり……」




…また辛い話になるかもって思ったら、聞いちゃいけない気がして……




「……いや、……聞いて欲しい。」








…彼は自販機でジュースを買った。


「はいよ。」


「…あ…ありがとうございます。」








「…孝梨 志穂……孝明の【孝】と、梨子の【梨】……後は母親の旧姓、浦星をひっくり返して【シホ】。…漢字は当て字だ。」




「…じゃあやっぱり、2人で孝梨 志穂だったんだ…。」




…彼は首を振った。




「…小説を書いたのは妹だ。俺はアイツの小説を読んでただけ…。」








…それから…


…梨子さんの夢を聞いた。








…彼女は孝明さんに嬉しそうに話していたそうだ。








…でも…








…彼女はもう…








「…俺に出来る事は、これぐらいしか無くて…」








…孝明さんは、梨子さんの夢を叶える為に、ネットの小説家になった。








「…孝明さんがネットに載せてくれたおかげで、私は梨子さんの小説のファンになって…孝明さんとも仲良くなれた。」




「…それ…梨子が聞いたら喜ぶだろうな。」




…孝明さんは空を見上げた。




「孝明さん…あの小説の続きは……?」




「…もう無いんだ。」




…梨子さんの最期の小説は未完成のままだった。




「…孝明さんが続き…書いてみたら…」




「…俺には出来ない…。梨子が何を書きたかったのか…わからないんだ。」








…彼女が書き溜めた物は全て出し尽くした。


…未完成の物語の途中まで。








…あの物語のラストは、梨子さんの頭の中で描かれて…


…もう誰も知る事の出来ない結末なんだ。








…彼は目に涙を溜めていた。








「……梨子さんとの思い出……いっぱいあったんだね……。」


「……涛生まで泣く事ねぇだろ!……」


「……えっ?」








……いつの間にか涙が流れていた。








…ううん…本当は悲しくて堪らなかったんだ。








…孝明さんはもっと…








「……向こうで落ち着いたら連絡する……そしたらまた会ってくれるか……?」




…彼は目元の涙を指で押さえた。




「うん!」




…私は精一杯の笑顔で頷いた。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…孝明さんと別れた後、私はあの場所へ向かった。








…狂也がいるかもしれない唯一の手がかり…。








…あの廃虚へ…


「…えっ…⁉︎」








…思わず声を上げた。








…そこには、あの廃虚は無く…


…ただの空き地が広がっていた。








…そこにもう1人…


…呆然と空き地を見ている少年がいた。








…中学生ぐらいだろうか?


…風呂敷で梱包された小さな箱を持っていた。








「…こんなの…無かったよね?」


「…うん。」


…少年の問いに、私は頷いた。








…私は廃虚が見えなくなった。


…けど…


…あの少年には何も無い空き地の場所に、何かが見えている。








「和馬…早く来なさい。」


…遠くで黒スーツのおじさんが声を上げた。




…少年は、黙って私の傍を去る。








…私は、少年の後姿を見ていた。








…黒スーツの男性と、喪服の女性…。








…あの少年の家族が亡くなった…。








…淡々と…


…でも寂しい後姿。















…ねぇ狂也…


…あなたは死んでしまったの?
















…それとも…


…私には見えなくなってしまったのかな?
















…会いたいよ…


…狂也…























【Next→仮面β】


□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








…突然猫が…‼︎


「うわっ‼︎‼︎」








「…ってぇ…………」




…猫を避けた俺は転倒した。




…肘と膝を擦り剥いた。




「…何見てんだよ。」




…猫が俺を睨み付ける。




…俺はゆっくり起き上がった。








…本来なら…


…起き上がった俺は、まっすぐ家に帰るんだろうけど…








…何故か…








…足が止まった。








…猫が乗って倒れたゴミ箱から…








…出て来た。








…仮面…。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□

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