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仮面α  作者: 霧咲 ユウ
20/22

解離。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「…竜也‼︎…奏太‼︎」


…勢いよく玄関のドアを開けた。




「涛生‼︎」


「渚‼︎」


…門の前に2人はいた。




…パトカーのサイレンが近付いて来た。




「もう大丈夫だね。」


…私は安堵した。




「……そういう…事なんだ……。」


…外の景色で状況を理解した渚。




「…どうして気付けなかったんだろう…。」


「…渚のせいじゃ…………えっ⁈」


「涛生ちゃ……」








…突然、後ろに引っ張られた。








…咄嗟に伸びた渚の手も掴めず…








…私は再び家の中に…………
















…そこには…


…別人の様に笑みを浮かべた彼がいた。
















「…もう観念したらどう?」


『……………………ふっ。』




…私の声に反応して、彼は小さく笑った。




「今更私をどうにかしたって、あんたは逃げられないよ。」


『…逃げる?…そんな気はないさ。』




…今度は開き直った態度。




…黒い仮面に触れた時に聞こえた、『切り離された心』の声だった。








…昨日の夜、警察を名乗って私を襲った声。








『…君も綺麗に飾り付けてあげるよ。』


「…うっ…………」








…苦しい…








…凄い力…








…首を絞められたまま、私の身体は宙に浮いていた…。








「……ゃ……め…………て……………………」








「涛生‼︎」


…その声と共に三條さんが倒れた。




「…………っ…………」


三條さんが負傷した頭を押さえた。




「涛生…大丈夫か⁉︎」


そう…この声。




「…………けほっ…………」


……助かった……。








…また狂也に助けられた。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「……っ…………涛生さん……私はあなたを殺そうとしたのですね…………。」


…頭を押さえて起き上がったのは、さっきの思い詰めた三條さんだった。








「……切り離された心……の方にね。」


…私も息を整え、ゆっくり起き上がった。








「…あれに…………あの仮面に触れたのですね……。」




…私は頷いた。




「……あれは……あいつは…………いえ…あいつは私……。」




…あいつの所為にしたい気持ちと…


…あれが彼自身だという真実。








…三條さんも止めたいんだ。








「……あんたがやった事は、とてもじゃないけど酷い。……でも……渚だけは殺せなかったんでしょ……。」




…見上げると、彼は泣いていた。




「……いえ…………殺していたかもしれません……。」




「……それでも……渚だけは……やめてくれって……必死で叫んでた。」








…黒い仮面に触れた時…




…梨子さんや他の女の子達が殺された時…




…渚を飾り付けて、殺そうとした時…








…あんたは確かに叫んでた。








『…やめろ‼︎……もう…やめてくれ‼︎』








「……渚だけは……あんた自身の意思であいつを止めたんだと思う。」








「……………………」








…彼は下を向いたまま動かなくなった。








「……三條さん……罪を償って下さい。これ以上、渚を悲しませちゃダメだ……。」








「……………………」








「…三條さん?」








『……殺せなかったんじゃないさ。……殺さなかったんだ。』








…顔を上げた時、再びあいつになっていた。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「……渚を殺さなかった……?」




『…彼は恰好の人質だったからね。』




…不気味にほくそ笑んだ。




…そして続けた。




『…渚を殺すと脅せば、奴は俺の言いなりだった。』




「…じゃあ…渚を襲ったのは…………」




『…奴が俺に逆らおうとしたからだ。』




…大方、自首しようとした…とかだろう。




…それで、渚をあんな目に…。




…三條さんは渚が助かる代わりに、あいつの言いなりになるしかなかった。




…今度逆らったら確実に渚が殺されるから。








「もう1つ、聞きたいんだけど……。」




…私は敢えて、『あいつ』に尋ねた。




「…私に送った写真の仮面男は、あんただよね?」




『……何故そう思う?』




「…三條さんを苦しめる為…。」




…私は続けた。




「…あれは…あんた自身が身体に縄を縛って固定してから首に縄をかけ、死んでるように偽装したんだ。

…恐らく身体には縄の跡が…。」




『……ふっ……はははははっ‼︎』




…彼は突然、大声で笑い出した。




『…賢いね……良くできました。』




…そう言って服を脱いだ。




『…渚とお揃いだ。』




……この縄の跡がある限り、三條さんは渚にした事を責め続ける。




『…遺言はもう終わりか?』




…彼は服を1枚羽織った。




「……もう……こんな事は終わりにする。」




『…そうか。なら、死んでもらうよ。』




「……死ぬのは……あんただ。」




…私は隠し持ってた黒い仮面を出した。




『…それは…‼︎』




「…あんたは、これが無いと生きられない。」








…私は仮面を持って走った。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








『待て‼︎』


…彼は血相を変えて追いかけて来た。








…この時…


…私は無我夢中で走っていた。








…三條さんから仮面を引き放せば、『切り離された心』が消えると思ったんだ。








…裏口…


「…開かない。」




『残念…鍵は此処だ。』


…彼はポケットからそれを見せた。




「涛生…こっちだ‼︎」


狂也に手を引かれた。








…階段…








…でも、そっちは…








…逃げ場を失うんじゃないか…








…屋根裏まで来た。








「涛生…先に行け。」


…狂也が窓を開けた。




「…うっ…」


…高い…


…風が…




『…追い詰めたぞ。』




…その声を聞いて、私は窓から屋根に上った。




「狂也も早く‼︎」


…私は手を伸ばした。




…彼は首を横に振った。




『…ならばお前から死ね‼︎』








…嫌な音がした…








…次に目にしたのは…








…彼の胸に刺さったナイフ…。








「…そんな…………」








…血が…








「…………涛生…………」








…狂也が私を見上げた。








「…狂也…………」








「……もう…大丈夫…だから。」








「…………えっ…………?」








…彼はそう言って、ナイフを刺したままの三條さんの手を掴んだ。








「…………ありがとう…………」








…そして彼は、三條さんもろとも窓から落ちた。








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