第1話:運命の転機
戦争が絶えず、人々が欲望のままに力を求める世界。
人間は、自らの欲望や性格から「鬼化」と呼ばれる異能を生み出した。
それは人類を救う力なのか。
それとも、人類そのものを滅ぼす力なのか。
戦火によって故郷を失い、7歳以前の記憶を持たない少年――レノ。
彼の背中には、「001」という数字が刻まれていた。
これは、戦争に翻弄されながらも、
「人間であること」を捨てなかった少年たちの物語。
そして、荒廃した世界を変えようとする四人の物語。
――これは、人間が生み出した地獄の物語。
『人間地獄』、始まります。
※本作は二週間に一度の更新を予定しています。
長編作品として、少しずつ世界を広げながら完結まで描いていく予定です。
作品を読んでいただける方、感想をくださる方、
そして、この世界を一緒に形にしてみたいと思ってくださる方がいれば、とても嬉しいです。
将来的にはイラスト・漫画・その他の形で『人間地獄』の世界を広げていくことも目指しています。
もし本作に興味を持ち、キャラクターや世界観を描いてみたいと思ってくださる絵師・クリエイターの方がいましたら、ぜひ気軽に声をかけてください。
一人ではなく、誰かと一緒にこの物語を大きくしていけたらと思っています。
それでは、『人間地獄』の世界をお楽しみください。
第一話:運命の転換点
「オール大陸 開暦910年」
ハサラの街――路地裏
「逃がすな!」
「捕まえろ!」
背後から兵士たちの追跡が迫ってくる。
マンディは盗んだ食料を抱えながら、上を見上げる。
そこには一人の人影がいた。
マンディはその人物に視線を送り、合図を送る。
突然――
空から一筋の雷が降り注いだ。
「落雷・天罰!」
レノが空中から、手に宿した雷を地面へ叩き落とす。
前方の兵士たちと、その進路が雷撃によって遮られた。
「くそっ! 二手に分かれろ!」
後方の兵士たちが別の方向へ走り出そうとする。
その瞬間――
周囲に小さな火の粉が舞い始めた。
「なんだ、これは……?」
兵士が異変に気づく。
「蛍火・爆裂!」
エンの手から無数の小さな火の粉が放たれた。
次の瞬間――
周囲一帯が一気に燃え上がり、兵士たちは完全に炎の中へと閉じ込められる。
そしてアイヴェルが、突然ボタンを押した。
実は彼女は、あらかじめ指定した場所に罠を仕掛けていたのだ。
地面からいくつもの円盤が現れる。
レノは前方から、体内に蓄えたすべての電気を放出した。
「うおおおおおおおっ!!」
凄まじい電撃が一帯を駆け抜ける。
兵士たちは広範囲にわたって感電し、その場で動けなくなった。
こうして――
四人は追手から逃げ切ることに成功した。
――――――――――
「オール大陸 スラム街」
四人は盗んできた食料を、夢中になって分け合っていた。
エン
「いやー、あの兵士たち、俺たちの敵じゃなかったな! 今回も大収穫だ!」
アイヴェル
「油断しないで。毎回こんなことをしていたら、いつかこの場所を襲撃されるわ。そうなったら、また別の場所へ移動しなくちゃならないんだから」
マンディ
「そうよ! 私の華麗な演技と天才的な作戦がなかったら、今頃とっくに捕まってたんだからね!」
エン
「レノ? レノ!」
レノはようやく我に返った。
エン
「まったく……最近ずっとぼーっとしてるじゃないか。早く食えよ。次の飯がどこにあるかも分からないんだからな……」
レノ
「そ、そうだな……」
――――――――――
「俺の名前はレノ。
七歳以前の記憶がない。
ただ覚えているのは、瓦礫の中から目を覚ました時、周囲が一面の惨状になっていたこと。
どうやら戦火によって、俺の故郷は失われたらしい。
俺は難民となり、そしてこの三人と仲間になった」
「この時代、各地で戦乱が絶えず、ほぼ一秒ごとに誰かが死んでいく。
まるで、この世界そのものが地獄と化しているようだった」
「人間は欲望や性格によって、『鬼化』と呼ばれる謎の力を生み出した。
誰もが異なる能力を持ち、それは軍事兵器として利用され、戦場では圧倒的な力を発揮した。
しかしその力は、各地の戦況をさらに悲惨なものへと変えていった……」
――――――――――
(深夜――)
薄暗い実験室の中。
白衣を着た研究員が、注射器を手にゆっくりと前へ歩いていく。
「番号001、お前は戦況を変える、すべての希望となるのだ!」
「嫌だ……嫌だよ……!」
「いやああああああああああああ!!」
叫び声が響き渡る。
「――っ!」
レノは激しく目を覚ました。
左肩の後ろに刻まれた「001」の文字が、ズキズキと痛む。
レノ
「頭が……痛い……。俺は……最近、どうしたんだ……?」
(コンコン――)
扉を叩く音がする。
アイヴェルがやって来た。
「大丈夫……?」
「もう大丈夫だ……でも、頭が痛い……」
レノは頭を押さえる。
「昔のことを思い出したの?」
アイヴェルはレノのそばへ歩み寄り、優しく声をかける。
「大丈夫……いつか……戦争は終わるよ……」
「そうだといいな……」
レノはため息をついた。
――――――――――
「大変だ!」
エンが突然駆け込んできた。
「東から軍隊が攻めてきた!」
「今夜こそ、オール大陸を制圧するぞ!」
前方の指揮官が兵士たちを鼓舞する。
号令とともに――
軍隊がスラム街へ一気に侵入してきた。
大量の人々が、銃撃や刀によって命を奪われていく。
鮮血が飛び散る。
レノたちは必死に逃げ回っていた。
「くそっ……どうすれば……どうすれば、この悪夢を終わらせられるんだ……!」
ドンッ――!
「痛っ!」
突然立ち止まったエンに、レノがぶつかる。
「……あいつら……」
エンは拳を強く握りしめる。
その手には、激しい炎が燃え上がっていた。
目の前では、軍隊が武器を持たない人々を――
老人も、子供も、女性も関係なく殺していた。
エンは勢いよく戦場へ飛び出す!
「烈焔拳!」
ドォンッ!!
拳が敵を吹き飛ばす。
「俺は……もう……こんなのは嫌なんだ!」
エンは歯を食いしばった。
戦場へ向かおうとするエンを、マンディがすぐさま抱き止める。
「あなたまで死にに行くつもり!?」
マンディが叱りつける。
「でも……!」
エンは拳を握りしめ、悔しそうに歯を食いしばった。
その時――
重い足取りで、レノがゆっくりと前へ歩き出す。
「……お前の言う通りだ、エン。
ただ黙って殺されるくらいなら……自分から戦う!」
レノの手から電光が走る。
「俺も……もう、こんな逃げ続ける生活には耐えられない!」
「あなたまで……。アイヴェル、あなたは――」
マンディが言い終える前に――
アイヴェルはすでに「機械」の能力によって電磁砲を作り出していた。
エンもすでに戦闘態勢へ入り、全身から炎を噴き上げている。
「……本当に、あなたたちには敵わないわね」
マンディもついに覚悟を決めた。
四人は戦場へ飛び込んだ。
――――――――――
エンが軍隊へ突っ込む。
身体を回転させながら大量の熱気を放出し、炎が巨大な竜巻を形成する。
「紅蓮・暴風!」
巨大な赤い炎の竜巻が、軍隊へ襲いかかる。
レノはゆっくりと前へ進みながら、全身から電気を放つ。
そして――
雷のような速度で戦場を駆け抜け、敵を次々と薙ぎ払っていく。
アイヴェルは電磁砲を構え、戦場へ向けて次々と砲撃を放つ。
マンディはまだ能力が覚醒していない。
しかし、彼女には地形を利用する知恵があった。
高所へ登り、以前スラム街で拾った廃鉄から作り上げた通信機を使って、三人へ位置と戦況を伝えていく。
四人の連携は非常に熟練していた。
攻撃は次から次へと繰り出され――
東方軍は徐々に追い詰められていった。
そして――
「――ここまでやるとは、なかなかやるじゃねえか!」
煙をまとった戦士が、レノを捕らえる。
エンもまた、「流水」の能力を持つ鬼化した戦士と対峙していた。
「大洪水!」
ドォォォン!!
エンは激しい水流によって壁へ叩き込まれ、そのまま動けなくなる。
マンディが我に返った時――
いつの間にか背後には巨大な蝙蝠が現れていた。
「きゃあっ!」
マンディは捕らえられ、そのまま空中へ連れ去られる。
一方、アイヴェルも――
「くっ……!」
「磁力」の能力者によって引き寄せられていた。
戦況は一気に逆転した。
――――――――――
「まったく残念だな……。
まだ能力を完全に引き出せていない、青二才どもが……。
死ね!」
刀がレノの胸へ突き刺さろうとした――
その瞬間。
――――――――――
ヒュッ――!
一閃。
鮮血が飛び散る。
地面へ落ちたのは――
戦士の腕だった。
「……!?」
男が勢いよく振り向く。
そこには――
一群の人影が立っていた。
全員がマントと軍服を身にまとい、その背中には飛竜の紋章が刻まれている。
そして、その数は次々と増えていく。
「飛竜騎士団!?!」
男が驚愕に目を見開く。
騎士団が戦場へ投入される。
戦況は一瞬にして変わった。
東方軍はまったく歯が立たず、次々と打ち倒されていく。
そして――
撤退を余儀なくされた。
――――――――――
突然、一人の男がレノのもとへ歩み寄り、手を差し伸べる。
「大丈夫か……。
もう大丈夫だ……」
飛竜騎士団――団長、ダム。
レノはゆっくりと立ち上がる。
先ほど死にかけた恐怖がまだ残っていた。
荒い息を吐きながら、目の前の男を見つめる。
騎士団は素早く戦場を整理し、残された人々の救助を始めた。
レノはその光景を見つめる。
そして――
一つの思いが、胸の中に浮かんだ。
「俺は……もう、こんなことを続けたくない!」
レノは力強く叫んだ。
ダムが足を止める。
そして、目の前の少年へ振り返った。
その瞳を見た瞬間――
ダムはすべてを理解したように微笑む。
そして、レノたちへ心からの誘いを告げた。
エン、アイヴェル、マンディも――
同じ答えを返した。
こうして――
四人の運命は、この日を境に大きく変わることとなった。
――――――――――
(それから三年後――)
某国・港湾施設。
その一角では、クレーンがコンテナを船へ積み込んでいた。
突然――
周囲に火の手が上がる。
近くの工場からは、次々と爆発音が響き渡る。
「爆炎天星!」
無数の火球が空から降り注ぐ。
その正体は――エン。
作業員たちが反応する間もなく――
次の瞬間。
ドォォォン!!
コンテナ船までもが爆発した。
「レノだ!」
「お前ら悪党は……!」
レノが雷を放つ。
一瞬にして、周囲の船舶が次々と破壊されていく。
人々は慌ててその場から逃げ出す。
しかし――
「な、なんだ!?」
ゲートが突然、動かなくなった。
「どこへ行くつもり?」
アイヴェルが機械の腕を操り、逃げようとする者たちを一掃する。
そして港の指揮センターでは――
すでにマンディが完全に制圧していた。
――――――――――
エンはコンテナの中から、赤い薬瓶を取り出す。
そして興味深そうに眺める。
「これが……血魔剤ってやつか。
どんな味がするんだろうな……?」
レノの手が、エンの頭へ勢いよく振り下ろされる。
ゴンッ!
「痛い痛い痛い痛い!」
「ふざけるな!
この薬はすでに市場に出回っている……。
今はその流通源を突き止めて、根こそぎ消し去らなければならない!」
レノが厳しく叱りつける。
「その通りだ!」
そこへ、ダムがゆっくりと歩いてくる。
「血魔剤……。
それは一般人を強制的に鬼化させ、さらに身体能力や各種能力を強化する薬剤だ。
過剰に使用すれば依存性を生み、戦場で使用されれば、さらに深刻な事態を引き起こすことになる!」
ダムはそう告げた。
「行くぞ!
次の場所へ向かう!」
ダムが撤退の命令を下す。
四人はその場を後にする。
「三年前のあの日――
俺たちの運命は変わった。
そして今の俺たちは――
この壊れた世界を変える!」
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
『人間地獄』第1話、いかがでしたでしょうか。
この物語は、戦争、欲望、鬼化、そして「人間とは何なのか」をテーマに、長編作品として描いていく予定です。
第1話では、レノたち四人の出会いと、彼らが戦うことを決意したきっかけを描きました。
そして、レノの背中に刻まれた「001」。
なぜ彼は7歳以前の記憶を失っているのか。
「001」とは一体何なのか。
そして、鬼化とは何なのか。
これらの謎が、今後少しずつ物語に繋がっていきます。
更新は二週間に一度を予定しています。
まだまだ未熟な部分もありますが、最後まで自分の手でこの物語を完成させたいと思っています。
「面白い」と思っていただけた方、
「続きが気になる」と思っていただけた方、
ぜひ感想や評価をいただけると励みになります。
また、もし『人間地獄』の世界観やキャラクターに興味を持ち、
「このキャラクターを描いてみたい」
「この作品に関わってみたい」
と思ってくださるイラストレーター・絵師・クリエイターの方がいましたら、ぜひお気軽に声をかけてください。
この作品を、いつか自分一人だけの物語ではなく、
たくさんの人に愛される世界へ育てていけたらと思っています。
それでは、第2話でお会いしましょう。
――『人間地獄』を、よろしくお願いします。




