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豪華な食事達を目の前にお預けをくらった次の日いつもの引率者達と洞窟に来ていた。
「今日は一番奥まで進むから気を引き締めるように。」
何故か私を見つめながらクレア先生がいつも以上に気をつけるよう言い渡してきた。
洞窟に潜り始めた時と違って私とアリスが前衛でクレア先生達は私たちが下手を打った時用に後ろに控えてもらっている。
「小冬音、暗視装置付けなくても完全に見えるようになったの?」
「目が暗闇に慣れてきたのかな?遠くまで見えるよ。」
「慣れって・・・。」
アリスが呆れたような顔をしているところもバッチリ見える。
「だって見えるものはしょうがないじゃん。アリスも洞窟に入り出してから変わったでしょ?」
「私は視力と反射神経が少し良くなった事と力と体力が少しついたくらいだよ。小冬音みたいに人外の粋には至ってない。」
5m以上の高さのある洞窟の天井に頭をぶつけたり真っ暗な中でも昼間と同じように見えている事を言っているようだがそれでも普通の女の子だと思いたい。
外見・・・いや外見からして銀髪とか染めない限りいないしそもそもオッサンが幼女化してる時点で普通じゃなかったよ。
考えたところで仕方がないと気を持ち直す。
「何か考え事してたみたいだけどゴブリンの首を無意識に刎ねてたわよ。」
アリスに言われ周りを確認してみるとゴブリンの残骸が転がっていた。
最初のうちはゴブリンの死体を見ただけでも気持ち悪くなっていたが今は何ともない。
慣れというのもあるのだろうが元々の性格もあるのだろう。
「アリスも平気な顔して倒してるじゃん。」
「私は元々そういう精神的な訓練を受けてたから・・・。ていうか暗視ゴーグル付けてるから私の顔見えてないでしょ。」
的確なツッコミをされたが知らない顔をして先に進んでいくと大きな木製の扉が見えてきた。
最近できたというには年月を感じさせる古ぼけた扉の前までくる。
「小冬音、ストップ。護衛の方の準備と扉の先のモンスターの説明をするから聞きなさい。」
クレア先生が扉の先に躊躇なく進もうとした私の首根っこを掴み止めてきた。
「この先にいるのはゴブリンのボス、ゴブリンもそうだが仮称でボブゴブリンと名付けられている個体だ。ゴブリンは1m弱の個体だがボブゴブリンは2m弱になる。体格が大きい分力は強くてタフだが動く速度はゴブリンと大差ない。お前たちが危機的状況になれば援護するが基本は二人で倒せ以上。」
今日洞窟挑む前に説明されていた事を私に向かって再度確認してきた。
私の能天気な所があるのは理解しているがそんなに話を聞いていないように見えるのだろうか?
アリスに言っていない所をみるにそうなのだろう・・・解せぬ。
まぁ本物の天才と中年幼女だと知識量は中年幼女のほうが多いだろうが頭の回転は天才に負けるようだ。
最近では知識の方でも負けてる気がしないが気にしたら負けなのである。
「クレア先生行きますね。アリス行こ。」
クレア先生たちの準備が終わったのを目の隅で捉えながら木の扉を開けていく。
扉の向こうは物凄い広い空間が広がっていた。
野球の球場くらいの広さで天井も10m以上ありそうだ。
「アリス、広いねー。」
「広さに感心してないで集中しなさい。」
集中しきれてない私にアリスが注意する。
アリスが最近意地悪な姑みたいになってきたなと思っているとまだ集中しきれていない事がバレて後ろから軽く叩かれる。
そんなアリスを見てみると少し緊張してるのか槍を持つ手に力が入っていた。
「アリスこそリラックスだよ。」
「はぁっ。」
ため息を吐かなくてもいいだろうに私に注意するのを諦めたようで目の前の敵を凝視していた。
私も正面を向くとクレア先生に説明されたとおりに2mくらいのゴブリンが一人で立っていた。
ゴブリンが引きこもりのニートみたいだとするとボブゴブリンは2年くらい筋トレをしてバルクアップしたオッサンくらいに筋肉質。
初めてのボス戦に私は気合いを入れ直し足に力を入れて跳躍する。
20m程あった距離を3歩で踏破し腰の日本刀を抜刀し足を切る。
格好良く首や胴体を切れれば一撃で片付けられただろうが私の身長が足りないし下手にジャンプすると前にやらかした天井に頭を打つという事故にも繋がってしまう事を考えると安全策として仕方がないのである。
それに洞窟に入る前にクレア先生にボス戦は一人で倒さずに連携するように言われていたため一撃で終わらせると私の頭にクレア先生の一撃が降ってくるので我慢した。
「アリス、よろしく。」
「ふっ。」
アリスは返事の代わりに足を切断され崩れ落ちながら私を見ようと振り返ろうとしているボブゴブリンの心臓目掛けて槍を突き刺す。
そのまま地面に横たわったボブゴブリンは痙攣をしたのち絶命した。
「ナイスアリス。」
親指を立ててアリスによくやったと合図を送る。
『そんなところにおったのか通りで見つからんわけよ。』
急に私の周りの時間が止まり頭の中に声がする。
「誰?」
『ああ、そうか中身は我が消した。だから何も知らぬのか。』
尊大な声に話しかけられ困惑しながらも問おうとするも考えが纏まらない。
『我を滅ぼそうとして封印するしかなかった愚物たちの龍、森、土、空、海、獣の王の倅たちを呪い殺してやったのに何故死体が無くなったのかわからなんだが別の世界に転移していたとはな。』
呪い殺した・・・。
ゲームの設定の姫たちを亡き者にした黒龍って事?
「あなたが王たちの子供を呪い殺した黒龍?」
『?中身が違うのに何故我を知っている?ああ、そうか女神が我の呪いから子供達を助けようと一時的に女神の世界に隔離したが呪いが世界をも貫通し結局死なせてしまい更には勢いで別の世界に亡骸まで飛ばされたのか。フハハ、子供は死に亡骸さえも喪失し王たちの絶望実に楽しいものだ。』
私の質問に答える気がないのだろう。
黒龍は一方的に話し続ける。
『ふむ、女神の最後の抵抗で肉体だけでも守ったか。中身である魂までは神でも治せぬ。魂がなければ肉体は腐る。そうか女神の出した答えは適合する異世界の魂を無理やり入れたのか。自分の世界の人間じゃなければ殺しても構わぬか。そんな事をしても元には戻らぬどころか中身が赤子になるだけで意味がないだろうに。』
「あのーすみません。」
『女神自ら取り返しのつかない悲劇を作り出した事を知れただけでも気分がいい。我はもう外に影響を及ぼす力を殆ど失ってしまったが小さきものよ我の加護をやろう。そなたの存在が我を楽しませてくれた礼だ。』
え、何かわからない物を押し付けられても・・・。
「すみませーん。おーい。」
「何してるの小冬音?そのゴブリン死んでるわよ。」
死んでいるボブゴブリンに話しかけているように見えたのだろう。
暗視ゴーグルを外したアリスがアホの子を見るような目で見てきていた。
「え?聞こえなかったの?」
「何が?それよりボブゴブリン倒したからなのか私も暗視ゴーグル無しで見えるようになったよ。」
嬉しそうにしているアリスには悪いが私はそれどころではない。
一方的に話しかけてきて一方的に加護を付けてきて私の出生の秘密的な事は勝手に話して満足していなくなった・・・。
元々別の体に転生って時点で色々巻き込まれるだろうなと思っていたが黒龍の加護まで付いちゃって美幼女になって人生イージーモードかと思ったらベリーハードでした的な事になりそうで途方に暮れるのであった。




