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ゴンッ!
痛。
熟睡している所を何か硬い物で頭を殴られた。
誰だと思い飛び起きると。
「おはよう、早くこの服に着替えろ。」
黒と灰色の縞々模様の服を渡される。
服を渡してきた人物を確認する。
渡された服と同じ柄の服を着て黒い警棒を握ったクレア先生が立っていた。
いつものクレア先生と違い緊迫した雰囲気を醸し出していたが。
「痛いです。」
頭をさすってみると小さいたんこぶができていた。
抗議の目で見ている私を無視して先に着替えていたのであろうアリスがやってくる。
「すごい音したけど・・・。起こしたのに起きなかった小冬音が悪いんだよ。」
頭を撫でながらクレア先生が持っているものをアリスが確認する。
「あれで殴られて小さなたんこぶだけって・・・。」
少し引き気味に見てきているがやったのはあなたの母親だからね。
不平不満を漏らしたいが今日のクレア先生的に口答えをするともう一発追加されそうなので黙って着替える。
着替え終わりリビングに行く。
「すぐに出るよ。」
その言葉だけでアリスがクレア先生に付いて行き外で停車している車に乗り込む。
車は映画とかでよく見る迷彩柄のハンブー?ハンビー?とか言う車だったはず。
特殊な車両のようで後ろの席は窓が完全に迷彩色が塗られており内部から外を見れそうにない。
乗ってみると運転席も見えないようにされ完全閉鎖空間になっていた。
不安になり隣のアリスを見るとホットドックを食べていた。
「何?小冬音の分もあるよ。」
小さい手でバスケットの中のホットドックを手渡してくる。
欲しいと思ってみたわけでは無いのだが無碍にすることもなく受け取り食べる。
二人で食べていると車が動き出したようで振動が伝わってくる。
「どこに行くか聞いてる?」
「実戦って聞いてる。」
「・・・・・。」
え?実戦?人を撃つの?
いや、アメリカ国内だと対人は無いか。
あったとしてもエアガンで撃ち合うとかだよね。
私相手だとゴム弾使われそうでちょっと怖いところがなんともいえない所なんだけど。
「相手は?」
「聞いてない。」
熊とか鹿?
私殺せるのかな?
けどやらないとクレア先生に私がヤられそうな気も。
「アリスは怖く無いの?」
「おじいちゃんと狩りに行ったこともあるから平気。猟銃は12歳からじゃ無いとダメだから撃ってないし体ができてないからダメって言われたけど。」
12歳からでも銃撃ってるアメリカ怖いと思ったが国の成り立ち自体が違うのだ違って当然だろう。
それから熊や鹿、うさぎとかの肉の味を説明されるもやはり日本人だからなのか牛豚鳥という味を知っている肉以外は食べたいとは思わなかった。
出されれば食べると思うが率先して食べようとは思わないだけだが。
肉の話からパン、ラーメン、餃子の話しに夢中になっていると車が止まる。
「出ろ。」
クレア先生に言われたアリスと一緒に車から出ると辺りは真っ暗。
車の後部座席の方を見るとうっすらと光が見える。
「洞窟?」
「そうだ。」
完全にいつもと違う仕事用の姿のクレア先生を見ると顔が真っ黒だった。
じっくりとクレア先生を見ていると。
「後ろの3人は気にしなくていいからな。」
そこで初めてクレア先生の後ろにいる3人に気がついた。
顔や手など肌が見えるところは黒く塗られており地肌の色はわからないがアジア系一人、目が青い白人系一人、そして日本人かな?一人だけ迷彩服が違うようだ。
日本人だと思われる人の迷彩服は従来の緑、黒、茶色が混じったやつを着ていた。
そして・・・全員アサルトライフルを携帯していた。
その銃を見てアリスも普段の狩では無いことを実感したようで私の服の袖を掴む。
「これからこの洞窟内の探索を行う。荷物を渡すので各自装備を確認しろ。」
そう言われ荷物を渡される。
アリスは荷物を渡される前にクレア先生に捕まり顔に黒いものを塗りつけられている。
荷物を確認したら次は私かっと思いながら荷物を見る。
缶詰に白い粉、水に長い袋に包まれている物。
紐で括られている袋の紐を解くと日本刀が入っていた。
6歳児にこんな物振り回せるのかと思い日本刀を鞘に入ったまま振ってみる。
普通に振れてしまっておまけに団十郎先生に刀の重さに振り回されると利き足を切ることがあると聞いていたが力強く振っても地面に刀が当たることもなく地面スレスレで止められている。
凄い凄いと振り回していると後ろから殴られる・・・警棒で。
「脇差をそんなに振り回すんじゃ無い。鞘から刀身が抜けないように固定されていたからいいものを。」
「ごめんなさい。」
クレア先生は更にお尻に一発入れアリスの方に帰って行った。
脇差か・・・日本刀を見た瞬間刀だという思いが強すぎて自分の体の大きさを忘れていたが普通の刀だと大きすぎて扱えないだろう。
脇差を袋に戻そうとすると袋の中から紙が落ちてくる。
『贈り物だ。危険な物だから扱いは注意するように。団十郎』
団十郎先生遅いです。
柄の部分にでもテープで貼っておいてください。
更に袋の中を覗くとベルトが入っていた。
普通のベルトでは無く脇差を差せるように改良がされているようだ。
ベルトを付けて脇差の刃が上を向くようにして付ける。
つけ心地を確認するために一周くるりと回る・・・。
半回転くらいしたところで何かに当たったのか強制的に停止させられる。
当たった箇所を見てみると丁度クレア先生の脛の位置で止まっていた。
ヤバいと思い逃げようとするが襟首を掴まれる。
「少しは大人しくしておこうか・・・。」
クレア先生口角がピクピクしてますよ?
クレア先生は何かに手を突っ込み引き抜いてそれを私の顔に擦り付ける。
口に少し入って苦しいから少し暴れるも。
「抵抗するなよ。」
アリスの時と違って顔に圧力が結構かかってる気がするのですが。
顔、首、手が真っ黒になってようやく解放される。
そんな私をアリスが苦笑して見ていたが他の3人の軍人さんは顔がピクリともしていない。
パチンっと音が鳴り音が鳴った方を見てみるとクレア先生が手を叩いたようだ。
「今から赤外線暗視ゴーグルを渡す。それを渡し次第出発する。私語は禁止。私がいいと言うまで喋るな。」
最後の言葉でなぜ私を見るんですかクレア先生。
先程のやらかしを見ればわかりますけど一度言われればわかります。
クレア先生は他の軍人3人に指でサインを出し一人が先頭に行き二人が最後尾に着く。
真ん中が私、クレア先生、アリスだ。
クレア先生と軍人3人はアサルトライフルの先に黒いナイフを付けると行動を開始する。
何故か私は恐怖より楽しそうという想いが上回り脇差の柄に片手を置き進んでいく。
前世ではクレア先生の足にしがみついて歩く邪魔をして蹴られる自信があるが体が変わったせいだろうか?恐怖という物をあまり感じなくなっている。
この状況では悪いことでは無いが恐怖があることで人間は生存できてきたのだ。
恐怖のせいでより賢くより狡猾に。
一瞬私自身が人では無いナニカに変わってしまったのかと寒気がしたが隣で不安そうなアリスを見ていると守らないとという気持ちが大きくなる。
保護欲なのかそれとも元男だった時の矜持かわからないがアリスの頭を撫で手を繋ぐ。
片手が塞がるのはいけないのだろうが震えが止まる。
手を繋いだ幼い子供たちが大人に囲まれて洞窟の奥深くに向かって歩き出した。




