18
街路樹の桜が舞う中、私立御手洗小学校の校門にお母様、妙さん、頓田さんと並んでいる。
頓田さんは写真に写るのが嫌なようでカメラマン役をかってでてくれ私たち3人で記念撮影をする。
子供の頃は煩わしさを感じていたが大人に一度なっていると大切さが身に染みてわかっているので撮ってもらっている。
けど2、30枚はやりすぎでは無いだろうか。
「お母様もう恥ずかしいです。」
「小冬音は可愛いんだからもっと撮っておかないと。」
お母様もテンションが上がっているようで今度は私一人を撮り続ける。
もう聞いてもらえないだろうしなるようになれと私もポーズを変え撮り続けられる。
前世では普通の顔面だった為こんなことをされるのは死んでもごめんだったがやはり美人やイケメンになると自信が出てくるのか堂々とできるようになっていた。
世の中には整形を馬鹿にする人もいるが一度美人になってみると整形依存症になる人の気持ちもわかる気がする。
まぁ両親が整形だと子供が悲劇に見舞われるのだが。
写真撮影をしていると横を通り過ぎたイケメンのガキが鼻で笑って校門をくぐっていった。
腹が立つが私が今している事は親バカに写真を撮られている馬鹿ガキなので耐える。
「あら時久君じゃない。」
どうやらあのイケメンのガキが私の許嫁なようだ。
お母様の親戚であるならイケメンなのも仕方がない。
どうやら私のことを鼻で笑ったのも写真撮影をしていたことだけが原因ではないようだ。
「私あいつ嫌い。」
「こらそんなこと言っちゃいけません。」
お母様に怒られる。
でもイケメンが嫌いなわけではなく性格が悪そうなイケメンが嫌いなのだ。
イケメンな許嫁の後ろ姿を睨んでいるとお母様が。
「男の子だから可愛い女の子を見て照れているだけよ。意地悪しちゃダメよ。」
好きな女の子に意地悪をして気をひく男の子の心境はわかるが人に聞こえるように鼻で悪う時点で性格悪いと思いますお母様。
気分が少し悪くなっていると。
「こんにちは、初音さん、小冬音。ここに時久が来なかったか?一人で行けるとわしらを置いて行ってしまったんだが。」
お母様が先に校門を潜っていた事を伝える。
「そうかあいつも誰に似たのやらわんぱくで困るのう。」
「父さんに似たんじゃないの?」
長秀様の後ろに眼鏡をかけたイケメンと泣きぼくろが特徴的な和服美人が立っていた。
「こんにちは、正和さん、香さん。小冬音、この方達が時久君の両親よ。」
お母様に前面に押し出される。
「初めまして、九十九小冬音です。」
無理矢理にでも決まった事だが婚約者の両親に挨拶することなど29年間生きてきて初めての行いで小声になってしまう。
「まぁ可愛い。時久には勿体ないくらい可愛い子ね。お人形さんみたい。私は九十九薫隣にいるのが正和さん私の旦那さんです。」
息子がイケメンなだけあって母親もやはり美人か・・・お茶目そうな雰囲気の人だ。
紹介された当の本人は私を一瞥すると先に校門を潜り行ってしまった。
やはり親子かと思っていると。
「ごめんね。人見知りなの。仕事中だと頼り甲斐があって人見知りの素振りも見せないんだけどプライベートだとね。まぁ、今回は恥ずかしかったんだと思うわよ。新しい娘ができてどう接すれば良いかわからないって漏らしてましたし。」
「相変わらずわしと違ってヘタレだの。」
「お父様はそのお年で勢いがありすぎますよ。」
はははっと笑いながら先に長秀様が始業式でと言い残し校門を潜っていった。
その後を薫さんが追い校舎に消えていく。
「小冬音も緊張しちゃって。私たちも行きましょうか。」
お母様に手を握られ校門を潜る。
妙さんと頓田さんはここまでのようで手を振ってくれている。
始業式の受付に行くと胸に桜の花のブローチとその下に平仮名で『ことね』と書かれたものを受け取り胸につける。
するとスーツを着た女の人が沢山椅子が置いてある所に案内してくれる。
「この椅子に座って待っていてね。」
どうやら先生だったようで私を案内すると別の子の案内に戻るようだ。
私は椅子に座り周りを見回してみる。
結構な子供がこちらを見ていたが気にしない。
親たちがいる席を見てみるとやはり進学校だとわかる親たちだ。
皆んな黒髪もしくは少し茶色が入っている髪の大人たちばかりだ。
これが公立だと茶髪だらけで下手をすれば金髪までいる。
やはり私は場違いだなと視線を前に戻そうとすると黒以外の髪の毛が目に映ったような気がした。
その色が気になり見てみると黒いスーツを着た金髪の綺麗な外国人がいた。
170cm中盤はあるのだろう。
周りの男親と同じような身長で外国人でおまけに美人、目立たないわけがない。
その美人を見ているとこちらが見ていることに気がついたようで手を振ってくる。
「何でクレア先生が?」
同じようにクレア先生を見ていた子供が再度私を見て頷いている。
親子だと思われたようだ。
私も日本人とはかけ離れてるからな。
「あなたが小冬音、ふん。」
隣に案内されてきた女の子が話しかけてくる。
横を見ると金髪で可愛いけどキツそうな女の子が睨んできていた。
「どちら様で?」
「ふん。」
答える気がないようでそっぽを向かれる。
イケメンに鼻で笑われた時は腹が立ったが可愛い女の子に変な態度をとられても腹が立たない。
やっぱり元男だな男は捨て去っていない事に安堵しながら女の子をもう一度見る。
日本人ではないな。
けど顔立ちは目が少しつり目で怖い印象があるが幼い見た目だ。
小学生なので幼いのは当たり前だが成長しても変わらない顔立ちのような気がする。
「ハーフ?」
「そうよ悪い?」
睨まれた。
これ以上彼女の機嫌が悪くならないように関わらない事にする。
「ママが言ってた天才って本当にあなた?」
関わらないようにしていたのにどうやら関わってくるようだ。
「ママって?」
彼女は親指で保護者席の金髪を指差す。
「ママ。」
ああ、うん多分そうかなって思ってたけどクレア先生結婚してたの?
そちらの方に驚愕していると何かを察したようで。
「ママは今シングルよ。パパは戦死したみたい私が生まれる前に。あと家事は全部私がやってるわよ。」
私が何を考えていたかわかるようで聞きたい事を全部読まれた。
「あなた顔に出すぎ。本当に天才なの?」
29年生きているので天才ではありませんと言いたいところだが言えない。
そして自分で天才という人間と私自身関わり合いになりたくないので否定しておく。
「天才ではないです。」
「ふーん。」
なにやらすごく見られている。
居た堪れなくなり彼女に質問をしてみる。
「お父さんはアメリカ人?」
「違う、日本人。」
そう言われ私が髪を染めているのか気になり見つめていると。
「ああ、髪が染めているのか気になるの?それに気がつくって事は多少頭はいいようね。」
上から目線に少しイラッとしたが質問する。
「有性遺伝子的に黒髪しか生まれないからお父さんはハーフ?」
「そうよ。天然の金髪よ。」
黒髪人種と金髪人種が子供を作ると絶対に黒髪しか生まれないのである。
例外が目の前のこの子で黒髪だけど親が金髪人種と黒髪人種のハーフだと金髪の人と結婚すると子供も金髪の可能性が出てくる。
「あなたの銀髪はアルビノみたい?少し違うけど目も赤くない。何処の生まれ?」
アルビノとは色素が生まれつき薄い先天性の疾患である。
私の見た目もそれに似ているのだろうが目は金色に近い黄土色でアルビノではない。
「女性のアルビノはかなり少ないし違うっぽいし何処の生まれ?」
再度聞かれる。
ゲーム産と答えられれば楽だが言うと頭おかしい奴判定を受けるだろう。
ここで最初私が使っていた設定を思い出す。
「5歳以前の記憶がなくて生まれた場所はわからないのです。」
彼女は胡散臭そうな表情を浮かべていた。
何故だ完璧な演技だったはず。
「何を隠したいかは知らないけどもっと表情筋鍛えたら?」
失礼なと思いながら忠告を受け入れて表情を作ってみる。
「ふふ、何それ。まぁいいわ始業式が始まりそうだし後にするは。」
彼女の言葉で壇上を見ると幸薄そうな中年のオジサンが立っていた。
「えーでは始業式を始めます。桜の咲く季節になり新しく小さな子供たちが我が学舎にて生活を開始します。今年度は例年に無いほど外国籍の子供たちも入学しています。肌の色髪の色は違えど皆さんのお友達になる大切な学友です。切磋琢磨しお互いに磨きあい・・・・・・・・・。」
校長先生の言葉の途中で外国籍の子供と言われ周りを改めて確認すると何人か隣の彼女以外にもいる。
周りの子も校長先生の話に飽きてきたのか落ち着きのない子が増えてきていた。
落ち着いていない子供たちを見てまだ小学生だとこういうところは普通の一般的な子供と変わらないようだ。
「ですから楽しい学園生活を営んでください。」
校長先生が壇上から降りこれからの流れを別の先生が説明していた。
「ねぇ、小冬音。ママがあなたの家に行く時に着いていっていい?」
彼女と一緒にいるといつか私が28年のアドバンテージがあるだけの只のおっさんだとバレる気がする。
偽天才と小学生でこの受け答えをする彼女。
友達付き合いをするか一瞬迷ったが可愛い子と一緒に居たいと煩悩がささやき気がつくと頷いていた。
反射的に頷いてしまったと少し後悔してたがよく考えるとクレア先生の娘。
どうせ関わり合いになるだろうと開き直る事にする。
「いいけどあなたお名前は?」
「ごめんなさい、教えたつもりになってたわ。アリスよ。よろしくね。」
「小冬音。よろしく。」
アリスとの会話が終わり先生たちが生徒の名前を呼びクラスごとに分けているようだ。
そこでアリスと私が同じクラスに呼ばれる。
一緒だねと笑いあっていると全クラスの子供が揃ったようで教室に連れていかれる。
席に名前入りのプレートが置いてあり自分の名前の席に座るように言われ座る。
私の席は一番後ろの窓側の席で隣がアリスだ。
前と斜め前は別の外国人の子供が座った・・・。
私でもわかるぞ外国籍の子供が沢山入学してきたといえクラスでのこの比率はおかしい。
席もおかしい。
純粋な学園生活をおくれると思っていたが無理な気がしてきた。
「では自己紹介をしていくぞ。」
担任教師がそう言うと席の前の方から始まり私の番が来た。
「小冬音です。よろしくお願いします。」
頭をペコリと下げ無難に終わる。
他の生徒は自分名前だけを言うか名前を言わず好きな物を言う子、いろんな子がいたがアリスの番になった。
「アリスよ。アメリカから無理矢理来させられたけど面白そうな子がいたし不機嫌じゃなくなったわ。機嫌が良いから私に釣り合う子だったら友達になってあげる。」
超上から目線だが可愛らしい見た目もあり微笑ましいと見ていたが男子達は喧嘩を売られたと思ったようでアリスに突っかかるが。
「何?文句があるならかかってきなさい。」
男子を挑発するも流石ここに入学できるだけの教育をされている子ばかりなので手を出そうとする子はいなかった。
「ふん、腰抜けね。」
私この子といるとトラブルかなり巻き込まれそうで早々に友達辞めようかなと思っていると。
「小冬音は私の友達だから手を出したら処すからね。」
逃げ道塞がれました。
担任教師も困った奴を受け持ったなという顔をしていたがその顔で私まで見るんじゃない。
強烈な自己紹介が終わり無難な自己紹介が続いていると変なイケメンの自己紹介の番になっていた。
「俺は九十九時久、九十九グループの次男でそこにいる小冬音は俺のものだ。」
優越感に浸った顔でこちらを指差す。
自分で言うのもなんだが確かに人間離れした美人であろう。
私もこんな子が恋人なら自慢するだろう。
しかし今日初めて会った子に観衆の前で言うだろうか?
私の前世がチキンだった事も含めても有り得ないだから無視する。
「おい。何か言えよ。おい。」
薫さんこの子早めに再教育お願いします。
私の胃がヤバくなりそうです。ストレスで。
無視していると怒ったのか近づいてくる。
「お・。」
何か言う前にアリスに制圧された。
クレア先生が子供の訓練に手慣れていたのは実の娘を鍛えたからかと思いアリスに仲間意識が芽生えた。
「ママにもなぜか小冬音を守れって言われてるからこいつ捕まえたけど処す?」
アリスが可愛らしく首を傾ける。
私はため息をつきながらアリスの肩に手を置き首を振る。
「処さなくていい。一応そんなのでも許嫁。」
許嫁とバレたくは無かったが仕方がない。
アリスが手を離すと半泣きなイケメンが何かを喚きながら席に帰っていった。
もし家の力で仕返しをしようと思っているならやめておけと言った方がよかったが確実に薫さんに怒られるのが目に見えていたので放置する。
実際家の力を使っても相手は多分米軍、勝てるわけがない。
私の憐れみの視線に気づいたようで余計に怒っていたが無視無視。
担任教師も止めようとしたがどちらの子供もバックにいる組織がヤバい事を知っているのだろう右往左往していた。
私は担任教師に向かって合掌すると担任教師は苦笑して助けを求める顔をした。
わたし6さいわかんないという顔で返すと項垂れていた。
担任教師を見ていると前世の自分を思い出し今度から優しくしようと心に誓う。
担任教師は事が治ると何事もなかったように自己紹介の続きを諭し自己紹介が終わると親が迎えに来るまで待機と言い教室の隅で何事も起きないように祈っていた。
「小冬音、次のママの訓練の日に行くね。」
あんな事があったのにこの子強い。
私にこの精神力があれば幸せになれるだろうな。
「何ぼーっとしてるの行くからね。約束だよ。」
アリスはそう言うとクレア先生が迎えにきていないのに教室を出て行った。
しばらくすると薫さんがイケメンを迎えにきたようでイケメンがこちらを指差し何かを訴えていた。
薫さんはイケメンの話を2分ほど聞いたのちこちらに来る。
「小冬音ちゃんおばさんに本当の事教えて?」
イケメンは信用されてないようだった。
私はことの顛末を話し誰と揉めたのかも付け加えておく。
すると薫さんがため息をつきイケメンの首を掴み強制連行していく。
怒らせると優しそうなのに怖い。
連行していく途中でこちらに振り返り。
「この子の再教育手伝ってね。」
ウィンクでこちらに言ってきた。
長秀様の『これならいけそう』という言葉を思い出しもしかしてあのイケメンの再教育も含んでのいけそうという事だった事に気がつく。
イケメンが問題を起こした時の尻拭いに強気なアリス。
わたし6歳で胃に穴が開きそうです。
お母様も迎えに来られ帰路に着く。
家に帰ると知らないオッサンがいたが疲れていたので挨拶も適当にし眠りにつく。
オッサンが寂しそうにしていたが知らん。
翌朝お母様に家にいた人が誰かたずねるとどうやらあの人が父親のようだった。
娘になった子が小学生になると聞き無理して海外出張から帰ってきたようだ。
悪いことをしたなと思い会いたいと伝えるも出張先に朝早くに戻ってしまったようだ。
お母様はお父様が気にしていなかったと言っていたが表情的にそれはないだろう。
次会った時は娘として精一杯のお出迎えをしようと思いながらランドセルを背負い学校に向かうのであった。




