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小学校入学まで後3日。
精神年齢的には29歳になるが新しい制服、新しいランドセル、新しい教科書それらを見ていると嬉しくなってくる。
年をとっていても新しい生活、おまけに人生をやり直せているのだ嬉しくないわけがない。
前世の半袖ハーフパンツだけの制服とは違ってブレザーなのも良い。
ブレザーなんて高校でしか採用されていないと思っていたがどうやら違うようだ。
値段を聞けば制服、体操服、ランドセルどれも10万円を超えているようで一般的な会社員の月給を超えている。
大事に使わないと出していた制服を畳んで箪笥になおしているとお母様に呼び出される。
いつもお母さんと言っていたが小学生になると対外的な視線的にお母様と言った方がいいのだそうな。
分家と言っても古い家なので何処の馬の骨かわからない幼女を養子として迎え入れることが異例であり私の弱みを極力減らすために淑女として礼節を弁えなければいけないようだ。
部屋で教科書の内容を確認しているとお母様にリビングに呼び出される。
初めて呼び出された事で何かあるのかと緊張しながらリビングに行く。
「小冬音、こちらに座りなさい。」
お母様が座っていたソファの横に座るように言われる。
「はい、お母様。」
座ると目の前に70歳くらいに見える老人が座っていた。
顔を見ると日本の初代総理大臣のような髭を生やし歴史の教科書にのっていそうな人だった。
「こちらは本家の当主、九十九長秀様よ。」
「小冬音です。初めまして。」
席から立ち頭を下げ挨拶する。
それを目で確認し九十九様が話し出す。
「わしは九十九長秀という小冬音よ楽にしていいぞ。」
九十九家の当主ということは旧財閥の当主という事で楽にしろと言われて楽にできるわけがない。
流石に元庶民でもそれくらいはわかる。
私が背筋を伸ばし同じ姿勢でいると感心したような顔をされる。
「お上から分家の養子にねじ込んでくれと言われた時にはどうなることかと思ったが中々。初音さんあんたが教育を?」
「いえ、この子は元々頭がいいようで多少の言葉遣いの矯正はしたと聞いていますがそれ以上は何も。」
「そうかい、これならいけそうか。小冬音いきなりで悪いが戸籍的に本家に入ってもらう。生活環境はこのままでいいがな。」
お母様が驚いたような顔をしている。
聞いていなかったようだ。
「長秀様、それは何故ですか?」
普段冷静なお母様も少し動揺したようで言葉が震えている。
「米帝の方がな小冬音の監視に力を入れたようでな何か重要なことがあったのではないか、左派共のせいで重要になりうる子供が2人も既に取られている。最後の一人は国益上重要になりうる可能性があると右派共にせっつかれてな。流石に旧財閥の本家の人間を同盟国である日本から奪いはしないだろうということで戸籍だけは移動させることになったのだ。」
「わかりました。この子を守るためなら。」
お母様は安心したようでいつもの調子を取り戻したようだ。
最近お出かけの日に黒服が増えてるなと思っていたがアメリカの方の警備の人だったのか。
長秀様が手を打ってくれたお陰で日本にこのまま暮らせるようだ感謝感謝。
「あとこれも急で悪いがわしの孫でもある時久を小冬音の許嫁とする事が決まった。」
お母様は許嫁と聞いても平然としているが私は焦っている。
元男として男の人とお付き合いは遠慮したいと思っていた我が身としては付き合うのを通り越して婚約というのは無理ですやめてください本当に無理です。
私の顔色から何かを察してくれたのか長秀様がフォローしてくれる。
「大丈夫だぞ。次男だから家を継ぐこともなく分家になるじゃろうからな。」
違うそこじゃない。
「いいえ、私なんかが恐れ多い。辞退させていただければ。」
断固拒否したいが。
「いい話じゃない小冬音。」
「同い年で同じ学校に入学するんだ時間をかけてお互い知ればいい。それにわしの孫に女子はおらんかったからな。」
お母様乗り気。
権力者嬉しそうに私の頭を撫でる。
よし合わなかったという事で破談にする・・・できたらいいな。
遠い目をしていたら他にも色々決め事を話していたようだが気が付いたら長秀様が帰るようだ。
「また入学式での。そうそうこれは贈り物じゃ。」
綺麗な色々な花があしらわれたネックレスを首にかけられる。
「家紋ではないが財閥関係者と政府の者にはそのネックレスを見せると九十九本家の女子という事がすぐにわかるだろう。大事にしなさい。」
デザインも好みだし色も綺麗、でも予約札をつけられたようで喜びきれない。
「ありがとうございます。長秀様。」
「今度からはおじいちゃんでも良いぞ。ではな。」
お母様と一緒に門まで行き長秀様をお見送りしてリビングに戻る。
「よかったわね小冬音。これで安心ね。」
私を抱き寄せ嬉しそうに頭を撫でてくれる。
そんなお母様の表情をみると暫くはこの状態でも良いかとお母様に抱きつき返し良い匂いがする中眠りに落ちるのであった。




