16
時は早いもので気付けば小学校入学まで1月を切ろうとしていた。
富裕層には有名な私立で小中高一貫校の学校に行くようだ。
やっと今までの授業から解放されると思いきや15時30分から18時まで武術の訓練は続くようです・・・ちくしょう。
それでも大幅に訓練時間が減ることは確実で喜んでいると。
「何嬉しそうにしてるんだい。」
頭を叩かれ集中するように諭される。
訓練中だった為クレア先生に怒られる。
「もっとキツイ方が良い?」
「嫌です。ごめんなさい。」
型稽古を再開しているとクレア先生のスマホが鳴る。
クレア先生が横目で私の訓練をスマホで話しながら見てくれていると5分ほどで通話が終わったようだ。
「すまんな小冬音、ちょっと本国の方で召集かかったからこれから帰るよ。」
「急にどうしたんですか?」
「わからないんだよな。何でもいいから帰ってこいだとさ。」
両手を上げ首を振るジェスチャーをクレア先生がした後外に止めてあった車に乗って帰ってしまった。
今日の訓練はこれで終わりかと喜んでいたのだが団十郎先生を呼んだそうで来るまで自主練だそうだ。
余計な事をしてくれる・・・。
団十郎先生との訓練が終わり最近日課になりつつある晩御飯後にお母さんが絵本を読んでくれる時間が来る。
お母さんは忙しいらしく丸一日時間が取れないからせめて晩御飯と食後の1時間は一緒にいれるように調整してくれているみたいだ。
絵本を読んでくれるようになった時に大学の勉強を強制させてる鬼の側面があるのに今更絵本なのかと思い聞いてみたらどうやら私の勉強の方の教育方針は本家の意向らしい。
勉強に関しては鬼と心の中でお母さんのことを思っていてごめんなさい。
そして本家嫌い。
お母さんは私に害になりそうにないから様子を見ていたようだけど勉強の内容までは知らないようだ。
お母さんに心配をかける程の事ではないと判断し勉強が辛くないか聞かれたが辛くないと答えた・・・本家は許すまじ。
クレア先生がアメリカに帰ってから1週間がたちそろそろ入学準備をしようとしているとクレア先生が帰ってきたらしい。
今日の武術の訓練から来るそうだ。
「よぉ!久しぶり。」
何もなかったようで明るそうに挨拶をしてくるクレア先生はいいのだが隣の外国人の方は誰だろう。
東洋人のようだがもう見た目からして日本人ではなく叩き上げの軍人だとわかる角刈りの人だ。
「私はこれで失礼する。」
私をチラリと見たと思えばクレア先生に小声で話して立ち去っていく。
何だったんだろうとクレア先生を見ると。
「部署が違うんだが上司みたいなもんでな。何かしらないが小冬音を一目確認したいってついてきたんだ。」
どうやらクレア先生にもわからないようでクレア先生がわからないなら私がわかるはずもない。
「今日は訓練は休み、体操服を作りに行くぞ。」
訓練が休みなのは嬉しいが学校の制服関係は全部採寸しているはずだが。
「クレア先生制服ならもう発注していますけど。」
「ああ、制服はそのままでいい小冬音が本気で動いたらヤバそうな体操服はこっちで用意する事になったんだ。」
そういう事ですか。訓練の時私が本気で動くと関節の部分の布が結構な頻度で破れていた為最初はお洒落な運動服を着ていたが今は昔のドラマでおにぎりが大好きな絵描きのおっさんが着ていた服のようなものを着ている。
お嬢様云々以前に普通の女の子としてどうかとも思ったがクレア先生が直接買ってきたようで断れなかったのだ。
妙さんにはその服で家の外に出てはいけませんと何度も注意されたものだ。
私も流石にあの服で富裕層が集まる学校に行くのは嫌だったので渡りに船である。
制服も小学生なのにブレザーで体操服もお洒落だったのだ。
クレア先生に抱っこされ服屋に行くのかなと思っていたら家の前にワンボックスカーが止まっておりそこで着替えるようだ。
お出かけできると思って楽しみにしていたが呼び寄せたようだ。
「はい、これ着るよ。」
真っ白い病衣のようなものを渡される。
「これは?」
「それを着て外で軽い訓練をして服の素材が耐えれるかみる。」
お洒落も何もない。
訓練が休みだと思っていたら服の耐久試験をさせられる。
女心が少し芽生えてきた私はクレア先生を軽く叩き服を着て激しい動きをさせられる。
3時間ほどいろんな素材を試しやっとクレア先生のお眼鏡に叶う素材の服が見つかったようだ。
「これで破けないし妙さんに怒られないし問題なし。」
「ハァハァ。」
私には問題があります。
3時間ノンストップで型の稽古、着替えの往復作業。
私の考えていた女の子が服を選ぶ時間が長いというイメージと全然違う。
「完成楽しみにしてな。」
私のためにやってくれているのがわかるだけ怒るに怒れない。
動けない私を担ぎ家に戻りいつものようにクレア先生から妙さんに引き渡され今日を終えるのであった。




