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Vの者!~挨拶はこんばん山月!~  作者: サニキ リオ
超番外編 ~推しのVたれ!~
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【別れ】次ぎ会うときは、はじめまして

 飛乱さんがバーチャル学園を去る日がやってきた。

 情けないことに、私は未だショックから立ち直れずにいた。


「よう、乃尋」

「……鶫、何の用? 私と絡む気はなかったんじゃないの」

「このまま落ち込まれっぱなしやとウチが困るんや」


 そう言うと鶫は私を強引に連れ出して事のあらましを聞き出した。


「あの飛乱がなぁ……」

「随分と落ち着いてるんだね」


 鶫のことだから飛乱さんのした行為に烈火の如く怒り出すものだと思っていたが、彼女は驚くほど落ち着いていた。


「乃尋に言われて気づいただけや。バーチャル学園で生き残るためには綺麗ごとなんて言うてられへんってな」


 鶫はバツが悪そうに頭を掻くと、小さくため息をつく。


「それにウチはあんなに仲良さそうにしてたお前らがこんな形で別れる方が嫌なんや」

「てぇてぇは嫌いなんじゃなかったの?」

「アホ抜かせ。ウチが好かんのはてぇてぇ営業や。こちとら生粋のカプ厨。真のてぇてぇは大好物や」


 開き直ったように言い放つ彼女だが、その言葉の裏にある優しさが痛いくらい伝わってくる。


「ありがとね、鶫」

「うっさいわ、ボケ」


 このツンデレめ。素直じゃないにも程がある。

 だが、おかげで少し気が楽になった。


「と、とにかく! ウチには飛乱がお前をただの踏み台にしとるようには見えんかった」

「……なるほど、亀梨先生と同じパターンか」


 バーチャル学園で生き残るために必死になり、自分と同じで才能がないと思っていた友人の私が急に人気者になったことで焦った。

 その結果、私の配信にトラブルを起こして助けるというマッチポンプに繋がってしまったのだろう。


「なあ、乃尋。お前はどうしたい?」

「どうって……」


 飛乱さんは私と会うことを望んでいない。

 会えばまた彼女は自分のしでかしたことで罪悪感を覚えてしまうだろう。


「決まってるじゃん」


 でも、そんなものは飛乱さんの自業自得だ。

 大切なのは私がすっきりして前に進むこと。


「ちゃんとお別れしてくる!」

「おう、一発くらい拳叩き込んだれ!」


 こうして、私は飛乱さんとの決着をつけるべく、退学者達が乗り込むバスの元へと向かった。

 バスの前まで行くと、そこには飛乱さんの姿があった。


「飛乱さん!」

「乃尋、さん……」


 私が声をかけると、飛乱さんは驚いた様子で振り向く。私達のやり取りに気付いたのか、他の生徒達もこちらを見つめていた。


「言い忘れてたことがあったんだ」


 私は大きく深呼吸すると、大切なことを伝える。


「飛乱さんの夢はまだ終わってないよ」

「何を――」

「だって4DLIVEでデビューできなくなっただけで、Vたれにはなれるでしょ!?」


 短い間でも、バーチャル学園のカリキュラムは濃い内容が詰め込まれている。

 余所でデビューすることだって不可能ではない。少なくとも、それだけのものを私達は学んできたのだ。


「……そんなの無理ですよ」

「無理じゃない!」


 飛乱さんが諦めようとしているなら、私が背中を押したい。

 それが、英乃尋が飛乱綺羅莉にできる最後の役目だ。


「チャンスは努力している人には平等に降ってくる。それを掴めるかどうかは飛乱さん次第だよ」


 飛乱さんには夢を諦めずに頑張ってほしい。そして、いつかVたれとしてコラボがしたい。これはただの私のワガママだった。


「私は先にデビューして待ってる。だから、もう一度頑張ってほしいんだ」

「どうして、私なんかにそこまで……」

「嘘だったとしてもあなたが私を友達と呼んで傍にいてくれたから……この学園で不安だった私の心を救ってくれたヒーローだったからだよ!」

「乃尋、さん……うぅ……ごめん、なさい……ごめんなさい……!」


 顔を上げた飛乱さんの瞳は潤んでいた。

 私はそのまま彼女を抱きしめる。一瞬、肩を震わせた飛乱さんだったが、すぐに脱力すると私に身を預けてきた。


「だから、今度は私があなたのヒーローになる。私がきちゃ! ってね」

「ありがとう……ありがとう……!」


 しばらく泣き続けた後、飛乱さんは再び立ち上がると真っ直ぐな視線を向ける。


「乃尋さん、今までごめんなさい。それと、ありがとう。私、絶対に夢は諦めません!」


 その表情からは迷いや憂いは一切感じられなかった。

 きっと大丈夫。そう確信させるだけの何かがその目に宿っていた。

 バスが出発する時刻となり、退学者達が次々と乗っていく。


 最後に残った飛乱さんは私の方を振り返ると笑顔を浮かべ、私に星型の髪留めを私に手渡して告げる。


「次ぎ会うときは〝はじめまして〟ですね!」


 それはまるで青空に燦燦と輝く太陽のような笑みだった。


超番外編を読んでいただきありがとうございました!

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