27 花火。夏祭りの日。
花火。夏祭りの日。
『あんたはなんでそんなにすぐに人を殴るの!? ものに当たり散らすの!? そういうの、やめなさい!! 人様に迷惑をかけるんじゃないよ!!』
しばらくの沈黙のあとで、「そっちへ行っても構いませんか?」と睡蓮さんが言った。そっちとはどうやら小唄の隣の席のことを指しているようだった。小唄は睡蓮さんに「はい」と返事をした。睡蓮さんは音を立てず静かに席から立ち上がると、にっこりと笑いながら小唄の隣の席に移動した。そうすると客車の座席は決して狭い座席ではなかったけれど、小唄と睡蓮さんの体はぺったりとくっついて離れなくなった。睡蓮さんからはとてもいい匂いがした。睡蓮さんは小唄の膝の上にある、ぎゅっと硬く閉ざされた小唄の握りこぶしの手の上にそっと自分の手のひらを置いた。それはとても冷たい手だった。小唄の頭のすぐ横には睡蓮さんの大きな胸があった。小唄はそのことがとても恥ずかしかった。なんとか睡蓮さんの大きな胸から顔を離そうと努力した。しかし睡蓮さんは小唄の思いとは逆に小唄の体を自分の体のほうにぎゅっと引き寄せた。だから結局、小唄の顔は睡蓮さんの柔らかい胸に密着した。小唄は恥ずかしさでまた顔を赤くした。睡蓮さんはなにも言わなかった。睡蓮さんの大きな胸はその手とは違って、冷たいということはなく、……とても暖かかった。
小唄の胸はどきどきしていた。緊張で体も強張っていた。




