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Name Less Story  作者: 雅風
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プロローグ3



 泣いたあの日以来、僕の時間は止まってしまったかのようだった。覚悟はできていると思っていたけどそれはちっぽけなものだった。両親や小百合が来て話をしてくれても、その内容が右から左に流れ意識があるのにないようなそんな矛盾したなかで、ただ時間が過ぎるのを待っている生活が続いた。


 そんな日々を少し変える出来事が起きた。それが親友の仁が病院に来るようになったことである。

仁は、僕が話を聞いていないこともお構いなしに毎日来てはいろいろな話をしていった。最初は話の入ってこなかった僕も次第に相づちを打つようになり、返事をするように変化していった。そのころから徐々にリハビリも行うようになった。




「おい、春大丈夫か?どっか具合でも悪いか?」


「ああ、いや大丈夫。ちょっと今までのことを思い出してて」


「ふーん、ならいいけど。それより今度出るVRのゲームなんだけど、ベータテスト参加した感じかなり面白いぞ。これは春にもぜひやってみてほしいね。」


「へぇ、そんなゲームが出るんだ。VRってあれでしょ?現実みたいな電脳世界でやるゲームでしょ?」


「ふわっとしてるが、おおむねそんなところだな。でさ、このゲームの最大の特徴がステータスがないことなんだよ。」


「それって珍しいことなの?」


「そうだな。ゲームやらない春からしたらそうかもしれないが、普通はステータスがあるもんなんだよ。HPとかな。でもこのゲームはよりリアルを追求するために、ステータスって概念を捨てたんだと。まあゲームとして成り立たせるために、レベルやスキルってのはあるんだが。それと最初にモンスターの卵をランダムでもらえて、そこから生まれるモンスターを使い魔とするんだ。これが結構人気が高いな」


「なかなか面白そうだね」


「俺はベータテストやってるから、製品版が発売されると同時にできるんだよな。もし春もできたら一緒にやりたいな」


「うーん、どうだろうね。もしできるようだったその時はよろしくね」


「おう、じゃあ時間だから帰るわ。おつかれ」


「うん、またね」


 一人になると途端に静かになる病室で動くことができない僕は今日の話を振り返っていた。


(やっぱり泉さんも倉敷さんも気にしてるよね。でも一回くらいは顔を見ておきたいな。それに仁の言ってたゲームも面白そうだな。今はリハビリ以外暇だし。できるかは分からないけど)


コンコン

「失礼します。体の具合はどうですか?あと食事をお持ちしましたよ」


「もうそんな時間ですか。ありがとうございます。体調のほうは問題ありませんよ」


 看護師の登場により思考を打ち切った僕は、お礼を言いながら看護師のほうを向く。当然看護師と目が合うのだが、なぜか少しすると目をそらされてしまう。他の看護師の人、特に若めの人たちにそういったことが多くあるのだが、不思議なことにならない日もあるのだ。


「あの、僕何か変ですか?」


 気になって聞いてみると、看護師の人は慌てた様子で


「いえいえ、そんなことないですよ」


と答えるその表情は心なしか嬉しそうな表情に見えることがさらに謎だ。僕は首をひねりながらも食事を済ませた。


 看護師にトレイを片付けてもらう時にまた目をそらされたが、気にしないことにした。


 

 実はこれには春の容姿と髪形が関係していた。春は仁に引けをとらずイケメンである。茶色がかったサラサラな髪にクッキリとした二重の目は優しさを感じさせる。仁がワイルド系なら春は王子様系という感じだ。しかし、春は自分の容姿にあまり興味はなく無頓着であるため、普段は伸ばした前髪が目を隠しているため目立つことはない。よってあまり視線は集まらず、いつも一緒にいる仁に注目がいく。だが最近はリハビリ等で邪魔になるので、後ろで結んでいることが多い。結果、そのイケメンな顔をみた最初の看護師から噂が広がり、さらに物腰柔らかな態度から、今では春のところに行くのに争奪戦が勃発するようになっているのである。


自分の容姿に疎い春はそんなことが起きているとは知らずやることを終わらせ、早々に寝ることにした。



 

 次の日僕は先生と面会していた。定期健診はまだ先だし、リハビリにも真面目に取り組んでいる。これといって何をしたわけでもない僕は、いきなり来た先生に戸惑いを隠せなかった。


「いきなりごめんね春君。少し聞きたいことがあってね。ああ、変に身構える必要はないよ、たいしたことではないから。」


「はぁ、そうなんですか。それで聞きたいこととは何でしょう?」


「うん、そのことなんだけどね。いきなりだけど春君はゲームは好きかな?」


「ゲームですか?あまりやったことがないのであまりよくわかりませんが」


「じゃあ、今度でるVRゲームについては知らないかな」


「VRですか?それなら何となくは知っています。友人が話していたので」


「そうか、なら話が早いね。いきなりなんだけど春君、ゲームをやってみないかい?」


「……はい?」 


 いきなりのことで全く理解が追い付かなっかった僕は、気の抜けた返事しかすることができなかった。


「あの、あまり理解ができていないのですが。なぜゲームなんですか?」


「はは、そうだよね。じゃ、今から説明するね。」


先生の話を要約するとこういうことだった。


 もともとVRゲームは医学的に注目されていて、今回のVRゲームでそれを検証してみようということになったらしい。その調査の枠が余ったため僕のところに話が回ってきたということだった。両親に確認をとったところ、息子の判断に任せるとのことだったので、あとは僕次第とのこと。昨日仁から話を聞いて興味がわいていたので僕の答えはもちろん


「お願いします」

だった。


 余談だが、先生に看護師を虜にするのはやめてくれと言われたが、何を言っているのか分からなかったので首をひねっていたら、君は賢いのに抜けているところがあるんだね。というお言葉をいただいた。解せぬ。


 ゲーム開始は正式サービスが始まって少し経ってから行うことになった。それまでは普通に過ごすだけで特にやらなくてはならないことはないらしい。

一通りの説明が終わったので僕はさっそく仁に連絡を入れることにした。


(昨日の今日でびっくりだけど、これで仁とも一緒にできるな)


バン!ドン!

「おい、春!ほんとか?」


「いきなり騒がしいな仁は。ゲームのことでしょ?なんか先生から進められてね」


「じゃあ一緒にできるな!春と一緒にゲームできるのか、楽しみだな」


「でも、僕ができるのは正式サービスから少し経ってからだよ」


「わかってるって。これだけは言っておくけど、情報収集は大切だからいろいろと調べておけよ」


「んー、わかった。暇なとき調べとくよ」


「ほんとか?おまえそう言うとき大体やらないしな。いいか?…………」


 このあと僕は仁からのおせっきょうをいただいたあと、ゲームの話しで遅くまで盛り上がりその日はお開きとなり、僕も食事をとったあとすぐに就寝した。


 そこから数日が経ち、ついに僕のゲーム開始日がきた。え?早いって?だってこの数日やったことといえばリハビリと家族や仁と話しているだけだったからね。その話をしようか?つまらないと思うけど。ああでも、妹の小百合が何か言いたそうにして我慢してる感じがしたのだけは気になるかな。なんとなく予想はついてるんだけどね。


とにかく僕は今日を楽しみにしていたから、早くやりたくてソワソワしていた。


「入るよ、春君。じゃ、春君もソワソワしてるし早く移動しようか」


 先生は僕の様子を見て笑いながら言った。そんなに分かりやすかったかと少し恥ずかしかったが、ようやくだったので仕方がないと自分で勝手に納得することにした。


移動し終えた僕は、先生の指示のもとゲーム用カプセルに入り準備を進めていた。


「よし、準備は終わったね。あとは機械を作動させるだけで始まるからね。では楽しいゲームを」


先生の言葉が終わると同時に、意識がスゥーっと落ちていき瞼が自然と閉じていった。


やっとで前振りが終わりました!

次からゲームの話しになりますが、そこでも設定やら説明やらになるかもしれません。

ですが、私的にどうしても書きたいことなのでどうか優しい目でみてください。

では次回お会いしましょう!


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