プロローグ2
ここはどこだろうか。自分だと認識できているのに自分が誰かは分からないという矛盾。宙に浮いているかのような浮遊感。そんな不思議な感覚は突然終わりを告げる。
吸い込まれるような感覚を感じたかと思うと同時に、一気に意識が覚醒する。
「ん……ぅん」
「…!……お…さん……おか…さん……は…にぃが!」
(誰だろう?懐かしい声だ。聞き覚えがある…そうだ、妹の小百合だ)
「ぁ……ぅ…」
小百合にこたえようとして声を出そうとするが声が出ない。それならと体を動かそうと思い力を込めようとしても、まったく動くことができない。目はいまだに焦点が合わずにいた。
いきなりのことに僕は混乱していたが、ドンっと体に衝撃がくる。大きさ的に小百合であろう、抱き着かれていた。その温かいぬくもりに思考が落ち着いてきたのか、自分が事故にあったことを思い出していた。そこから考えるに自分は病院にいることにも察しがついていた。
時間が経つにつれて目が慣れてきたのか、少しずつ目が見えるようになってきた。そのまま周りを見ると父さんと母さんがいた。二人とも泣いているように見える。
(そんなにひどかったのか)
ふと自分に抱き着いている妹を見てみると、何故か違和感を感じた。
(なんだ?何かが違う気がする)
そう思いよくよく妹を見てみると、自分の記憶にある妹の制服と今着ている制服が違うことに気が付いた。
(なんで制服が違うんだろう?引っ越しでもしたのかな)
そんな疑問を浮かべていると、ドアの開く音がして誰かが入ってきた。
「目が覚めましたか。ああ、私は担当医の三井です。よろしくお願いしますね。さて、いきなりですみませんが少し容体を見させてください」
制服のことが気がかりだったが、今は自分のことのほうを優先すべきだと思い検査に集中した。
一通り検査が終わったところで、医師から少し説明がされた。僕は車にひかれて気を失ったあと、救急車が到着し病院に運ばれたらしい。かなり危険な状態だったが何とか一命はとりとめた。だが、意識は回復しないまま長い間眠っていたらしく、先ほど目が覚めた。というのが今までの大まかな流れだった。具体的にどれくらい寝ていたのかの説明はされなかったが、そんなに長くはないだろうと思う。
意識を取り戻して間もないことからその日はすぐに終わり休むことになった。家族も今日は疲れているだろうからと帰ることにしたみたいだ。
みんながいなくなった後、自分が思っていた以上に疲れていることに気づき、横になるとすぐに強烈な睡魔に襲われた。
次の日僕は両親と先生の話しを聞くことになったため、両親と先生が来るまで話しをして待っていた。
「僕はいつ退院できるのかなぁ」
「そうねぇ、お母さんもあまり詳しくは知らないから何とも言えないわ」
「お金のことは気にするなよ?これでも稼いでいるからな」
「いや、稼いでいるとかの次元じゃないでしょ、父さん」
「ははは、まあな!だが、お前は自分の好きなことをしていいからな」
そう僕の父さんの家系は御堂家といって、日本に古くからある巨大企業グループの御堂グループの創始者は祖先に持ち、以来ずっとトップをしているのだ。
僕はそこの長男なのだが、今まで継げ等々を言われたことはなくどちらかというと好きなことをとことんやれ、という教育方針のもと育っている。しかし、歴代を見ていると最後には家業を継いでいるのをみていると僕もそうなるんだろうなと考えている。
コンコン、ガラガラ
「失礼します。おそろいですね、では御堂春君の現状の説明とこれからについてお話しましょう」
(きたか、といってもある程度は想像できてる。最悪の場合もほぼ間違ってないだろう)
「では、まずは眠っていた期間についてですが、落ち着いて聞いてください。春君あなたはおよそ半年間ものあいだ眠っていたことになります。」
「…はる」
母さんが悲しそうな顔で心配そうに僕を見る。
「大丈夫だよ、母さん。これにはある程度予想がついてたから」
「そうだぞ美代子。春は俺たちの子供だぞ?これくらいは受け入れる度量はある」
父さんはそう言って僕の頭をなでる。しかし、その顔は悲しみにゆがんでいる。僕に父さんの言うような度量があるとは思えないけど、これについてはあまり気にしていない。
(だけど問題はこのあとだよな)
「先生質問なのですが、半年意識を失っていて寝たきりになっていたのにもう腕を動かしたりできるのは、普通に考えてあり得ないと思うのですが。」
「そうですね、その質問はもっともです。その答えは今回使った機材にあります。その機材は、寝ている春君の体に電気を流す等の処置をすることで筋力が落ちるのを防いでいたためです」
(やっぱりそうか。話には聞いたことがあったし、高いけど父さんなら使うよね。じゃあ、もうほぼ確定かな。でも聞かなければいけないことか)
「では、僕の足がその機材を使ったにも関わらず動かないのは…」
「そうですね、考えられていることで間違いないでしょう。春くん落ち着いて聞いてください。いいですか?」
横を見ると、母さんは耐えられなかったのか泣いている。父さんも今にも泣きそうだ。
「ふー、、大丈夫ですお願いします」
僕は覚悟を決めてそう口にした。
「では、春君、あなたは下半身不随です。もう歩いて生活することはできないでしょう」
「……っ」
(あぁ、きついな、覚悟はしてたけどいざ他の人から言われるとダメだ)
「母さん泣かないでよ、覚悟はできてたんだ。僕は大丈夫だから」
僕は笑えているだろうか。とにかく母さんを安心させたくてそう言った。だけどダメだったみたいだ。目の前が滲んでよく見えない。
「あれ、何で泣いてるんだろう。だい、だいじょうぶ、なはず、なのに……」
僕が止まることなくあふれてくる涙をぬぐっていると、父さんから正面から抱きしめられる。
「いいんだ、春。泣いていいんだ。お前が我慢する必要はないんだ。お前には泣く権利がある」
そう優しく言われた僕の気持ちはついに爆発した。
「なんで!なんで、足が動かない!サッカーだってもうできない!普通の生活にだって戻れない!どうして!どうして……うぅ……」
その日僕は泣き疲れて寝るまで叫び続けた。
次で導入部分は終わる予定です!
拙い文章で申し訳ありませんが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
ではまた次回。




