病室で
コンコン
「よう春。調子はどうだ?」
「おはよう仁。うん、いい感じだよ。ところで、二人は来てくれるって?」
「あぁ、来るってよ」
「そっかよかった」
「あと数分で来るらしいぞ」
「ゲームの時はいきなり来たから大丈夫だったけど、現実で会うとなると少し緊張するね」
「そうか?…あぁ、現実で話すのは初めてだったか。といっても、向こうはお前以上に緊張してんの忘れるなよ」
「わかってるよ」
コンコンコン
「お、来たみたいだな。入っていいぞ!」
「なんで仁が言うんだよ、まったく」
仁に苦笑気味にそう言いながら、ドアを見る。
ガラガラ
「失礼します」
「し、失礼します!」
入ってきた二人を見るとやはり表情が暗い。でも、昨日と違ってしっかりとこちらを見てくれている。そんな小さなことに嬉しさを感じてしまう僕は単純なのだろうか。
「二人ともおはよう、今日は来てくれてありがとう。それとこんな格好でごめんね」
二人の変化に表情が緩んでしまう。といっても今日の髪はそのままだから、多分わからないだろうけど。
「さあ、二人とも座ってよ!」
二人をベットの近くにある椅子へと座らせる。
二人が椅子に座るのを確認し、すぐに本題へと入ることにした。だって、こういうことは早めに終わらせるほうがいいでしょ?
「じゃあさっそくだけど、今日来てもらったのは僕の足についてのことをちゃんと話しておこうと思ったからなんだ」
僕の言葉に二人の顔がこわ張るが、二人には我慢して聞いてもらわなければならないので、気が付かないふりをして続ける。
「昨日言ったかもしれないけど、僕の足は動かないんだ。これはリハビリとかで治るものではなくて、医者には下半身不随って言われたんだ。」
「……っ」「ひっく……」
泉さんは顔を青くしてうつ向いており、倉敷さんに至っては泣いてしまっている。
だけどそれも仕方が無いだろう。二人を助けた僕の意識が戻るまでに約半年、その上、下半身不随だと聞けば、助けられた人は誰だって自分を少なからず責めるだろう。なんであの時きちんと注意していなかったのだろうかと。例えそれが自分達のせいではなく、車の運転手の過失であったとしても。
「二人とも聞いてほしい。僕は確かに自由に動くことはできなくなった。確かに最初はとても悲しかったし苦しかった。でも、僕は仁から、二人の親御さんから二人の無事を聞いたときうれしかった。僕の頑張りは無駄じゃなかったって、だってあの時もし僕が間に合わなかったら、二人は今の僕よりもひどいことになっていたかもしれない。そう考えたら、僕はとても誇らしく思えたんだ。それにこんなに可愛くて綺麗な二人を助けることができたんだ、悔いはないよ。だけど、仁から二人が苦しんでいると聞いて申し訳なく思ったんだ。二人は優しいから、事故のことで責任を感じていたんだと思う。それが本当に申し訳なかった。僕がちゃんと間に合っていればこんなことにはならなかったのに、本当にごめんね。」
「うぅ……そ、そんな…、わ、わた‥し、たち…ひっく…が、わる…い、んです…うぅ、私た…ち、が、ひっく…ちゃ、ん、と、かく…にん、しな、かった…から」
「そんなことないよ。二人に悪いところなんて何もないんだよ?だからそんなこと言っちゃだめだよ泉さん。ほら、倉敷さんも泣かないで」
そんなことないんだ、本当にそんなことないんだ、泉さん。あれは車の人の過失が明らかだし、それに間に合わなかった僕にも責任がある。本当に申し訳ないと思ってる。僕が間に合っていればこんなに二人が苦しむことはなかったんだ。願わくば、二人の感じている苦しみを少しでも軽くできるようにしたいと思っている。
「ほら、何で仁まで泣いてるの」
「な、泣いてねーよ」
仁……顔を隠しながら言っても説得力ないよ?
僕は三人を見て苦笑してしまう。でも同時に幸せを感じてもいた。みんなの優しさと気遣いが僕の心を優しく包み込んでくれるようだったから。
泣き止んだころ合いを見て僕は声をかける。
「二人とも大丈夫?」
泣いたことが恥ずかしかったのか、少しうつむきながら頷くことで返事をする。
「まぁ結局何が言いたかったかというと、僕のことで何か気に病む必要はないということかな」
僕のその言葉に反応して、二人の顔が勢いよく上がる。
「そういうわけにはいきません!私たちでできることであれば何でもやります!こんなことで許されることではありませんが……」
「コクコク」
いや、何でもって。僕がもしあんなことやこんなことをしろって言ったらどうするのだろうか。
「二人ともちょっとこっちに来てくれないかな?」
とりあえず二人に注意するために近くに来るように手招きをする。
近づいてきた二人の額をロックオンして……
ビシッッ
「いたっ」「あう」
「女性が軽々しく何でもなんて言ってはいけないよ?二人とも僕だって男なんだからダメじゃないか」
「「でも!」」
「でもじゃないよ。ダメなものはダメ。それに僕は気にしてないから、はい!この話は終わり!」
そうやって僕が無理やり話を終わらせると、二人は不満だったのか僕のほうをジトッとした目で見てくる。
「はいはい、そんな目で見ないでください」
そう言いながら、二人の頭を撫でる。二人を見ると顔を伏せているが、やっぱりいきなり撫でるのはよくなかったかな。つい妹にする感覚でやってしまった。反省しないとな。
「おいおい、二人とも嫌がってるんじゃないのか?」
仁がニヤニヤしながら言ってくる。
わかってるって、つい癖でやっちゃったんだよ。
「ごめんねふたりとも、つい手が動いちゃって」
「い、いえ、気にしないでください。むしろ……な、何でもないです!」
「あ、ありがとうございましゅっ」
二人とも顔を赤くしてるけど熱でもあるのかな?それに泉さんは最後何て言おうとしたのか気になるし、倉敷さんはなんでお礼なんだろうか?よくわからない。
おい仁、なにニヤニヤしてるんだ。何か知ってるなら教えてよ。あっ、顔そらすな!
「ええっと今日は来てくれてありがとう!今からリハビリだから解散にしたいんだけどいいかな?」
「えっと、わかりました。今日はありがとうございました。また来てもよろしいでしょうか?」
「あ、あのありがとうございました。わたしもいいですか?」
「もちろん!こっちからお願いしたいくらいだよ」
「最後に聞きたいことがあるんだが、今日はNLSやるよな?」
「私はやります」「わたしもやります!」
「僕もやろうとは思ってるよ」
「おし!じゃあ、あっちでも会おうぜ!」
「私は構いません」「わたしも良いです!」
「うーん、いいよ」
「じゃあ、昨日と同じ場所で!春はまた一緒に行くぞ。じゃ解散!」
みんなが帰ったあとの病室は先ほどまでのにぎやかさが嘘のように静かだった。でもまた会えるという嬉しさから、まったく気にならなかった。
「よし、リハビリ行くか」
今日のリハビリはいつもより頑張れそうだ。




