対面の終わり
訂正があります。
「また病室を沈黙が支配する」は正しくは
「また部屋を沈黙が支配する」でした。
ご迷惑をおかけしました。
二人は泣き止んだあと少し恥ずかしそうにしながらうつむいていた。
それに、いくら怒ってないことが分かったとしてもやはり話しかけづらいだろう。そう思った僕は、自分から話しかけることにした。
「二人と話すのは初めましてになるのかな?一応自己紹介するね。僕の名前は御堂春、このゲームではハルって名前だよ。よろしくね」
初めて話すって言った時ツキヨが驚いた表情をしてたけど、別にいいじゃないか話してなくたって。
彼女たちは人気者だったし、話しかけることもなかったからね。でも、少しは話してみたい気持ちもあったのは確かだね。
しかしあれだ、まだ顔を上げてくれないね。二人ともこの部屋に入ってきてから一度も僕の顔を見てくれてない。
なんだか負けてる気分がするね。
「わ、わたしの名前は倉敷加奈って言います!こっちではクーナって名前です!あの、えっと、その……ふぇ」
倉敷さんは、いやこっちではクーナさんか。クーナさんは自己紹介の後まだ何か言おうとして、また泣き出しそうになってしまった。……よく分からないけど頑張れ!
「クーちゃん落ち着いてください。私の名前は泉静香と言います。こちらではシズと名乗っております。どうかよろしくお願いします。」
シズさんが話していると生徒会長として話している堂々とした姿を思い出すが、今の姿はどこか萎縮しているようで元気がないように見える。
ちなみにまだ二人とも顔を上げてくれない。でも、クーナさんが泣き出しそうな顔をするのも、シズさんが泣き出しそうなのも、原因は明白だ。
だからこそ僕は言いだせない。僕から話を切り出せば、確かにもっとスムーズに話が進むだろう。だけどそれをしてしまったら、二人は優しいがゆえに自分達から言えなかったことをきっと後悔してしまうと思う。だから、僕は二人が切り出すのを待つことにする。
また部屋を沈黙が支配する。
やがて二人は決心がついたのか
「御堂さん、二人が不注意だった為に事故に巻き込んでしまい本当にすみませんでした。私たちは、御堂さんに助けていただいたのにも関わらず、お見舞いにも行かず今まで先延ばしにしてしまってすみませんでした。」
「ご、ごめんなさい!」
と言いつつ二人は深く頭を下げた。
それを見ながらある疑問がわいたため、それを確認するためにツキヤを呼んだ。
「ねえ、ツキヤちょっと来て。あぁ、とりあえず二人とも頭を上げてください」
二人はいきなりのことに訳が分からず動揺を隠せない様子だったが少しだけ待っていてほしい。
ツキヤがこちらに近づいてきたので、少し二人から離れて聞こえないように小さい声で話すように促す。
「いきなりなんだよ」
「ごめんね。ちょっと聞きたいことがあってさ、二人って僕の足のこと知らないなんてことはないよね?」
「そんなことあるわけない……、いや、待てよ」
「やっぱり可能性としてありえるかもね。僕も二人の親御さんには言ってないし、僕の両親も忙しくて一回しか会ってないって言ってたし。それも事故の直後だったからまだ分かってなかったと思う。」
「俺も二人には言ってない。まじか、ここにきてこれかよ」
「僕思うんだけどさ、いまこれここで言ったら二人ともまずくない?」
「いやでもよ、結局いつかは知らなきゃいけないことだろ?それに後で言われたほうがキツイと思うぞ俺は」
話し終えた僕は二人のほうを向く。二人は不安そうな顔をしてうつ向いている。
今から僕はさらに二人を苦しませてしまうかもしれない。でも、いつかは分かることだ。今言わないともっとひどいことになる気がする。
「ねぇ二人ともさ、僕が入院していることは知ってるよね?」
僕はなるべく優しく聞こえるように声をかける。しかし、二人は責められているかのように肩を震わせ、萎縮してしまう。
「は、はい、知っています」
「えっと、じゃあさ、僕の今の状態とかって知ってる?」
「あ、あの、い、今までお見舞いにも行かなくて本当にごめんなさい。」
「あぁ、別にお見舞いのことを責めてるんじゃないから、怒ってないよ?」
「おいハル、まどろっこしいから俺が聞くぞ。二人とも親御さんから何かハルのこと聞いてないか?」
話しが進まないことに焦れたのかツキヤが二人に問う。
「あ、はい、両親が御堂さんと会った時かなり元気みたいだから、退院ももうすぐなんじゃないかと言っておりました」
そう言うシズさんの言葉に僕らは顔を見合わせる。
「やっぱりか、おいハルこっからは自分で言えよ」
「うーん、分かったよ。でもその前に、今日は僕に会いに来てくれてありがとう。僕だって、二人が本当に無事だったかすごく心配だったんだよ?だから、これからは、病院に来てくれると嬉しいかな」
シズさんとクーナさんは僕の言葉にようやっと顔を上げてくれた。
「……はい、はい!あの時は本当に助けていただきありがとうございました!今まで何もできずに申し訳ありませんでした」
「ありがとうございました!わたしも今まで決心がつかずにごめんなさいでした」
「初めて僕の顔を見てくれたね?」
「ごめんなさい。御堂さんが怒っているのではないかと思うと怖くて」
「いいよ、全然気にしてないから。でも、学校の人気者二人に見ら
れると緊張しちゃうな」
「おいハル、話ズレてるぞ。こういうことはごまかすな。半端な優しさは相手を傷つけるぞ」
はい、ごめんなさい。言います。
「二人に聞いてほしいことがあるんだ。事故のことなんだけど……」
僕の言葉を受けて、二人とも顔がこわ張る。
「実は二人の親御さんには言ってないことがあってね。僕は当分退院することはできないんだ」
「え……、どうしてですか?」
「………僕はね、この前の事故で足が動かなくなったんだ。だから、リハビリとかいろいろで退院はできない」
「……え?」
その場が凍り付く、まるで時が止まったかのように。二人の顔を見ると、シズさんは感情が抜け落ちたかのような顔で、クーナさんは顔を真っ青にしている。
やっぱりこうなるよね。分かってたんだ、こうなることは。でも、このことも彼女たちのせいじゃない。でも彼女たちの表情を見るにきっと責任を感じているのだろう。
「ツキヤ、今日はもう解散しよう。これ以上は二人もキツイはずだよ」
「……そうだな、今日は解散にしよう」
そう言ったツキヤは固まって動けない二人を部屋から出した。
「ねぇツキヤ、二人は大丈夫かなぁ?」
「さあな、でもこれに関しては、二人がどうにかするしかない問題だからな。俺が何か言える立場じゃない」
「そうだけどさ、………ねぇ、明日学校休みでしょ?二人を病院に連れてきてくれないかな?」
「おう、もとからそのつもりだ。二人にはあとで連絡しておく」
「二人とも来てくれるかな?」
「どうだろうな、でも行かなきゃいけないのは分かってるはずだ」
こうして、僕たちの初対面は終わった。
こんにちわ!作者です!
いやー、なかなかゲームに入ることができまなくてすみません。
でも私は、日常回も大切にしていきたいという方針なので、そこのところご理解いただけると嬉しいです。
ではまた次回お会いしましょう!