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 その日の晩、私は両親に全てを話した。



 自撮りさんの話。


 圭子からの電話。


 そして私に今起こっていること。




 初めは信じてくれなかった両親も、圭子の死と、あえて消さずにとっておいた自撮りさんの画像を見せると、私に何かが起きているということはわかってくれたようだった。



「明日、お祓いに行こう」



 そう言ってくれた父の顔は、とても神妙だった。



 私はまた寝ている間に自撮り写真を撮られないよう、両親のスマホも含め、すべてのカメラ類を、金庫の中に入れてもらった。

 父が仕事の大切な書類を入れているその金庫の開け方は、父しか知らず、私には開けることができない。


 これなら例え自撮りさんに何かされたとしても、写真を撮られることはありえない。

 そう考えると、幾分か安心して布団に入ることができた。




   ●   ●   ●




―― 何も見えない。


―― 何も聞こえない。


―― 何も感じない。



 私は暗闇の中を漂流していた。



 何も考えられない。私はただ、布団に入って寝ていただけだったのに。



「――こ! ――もこ!!!」



 どこからか声が聞こえる。知っているような気がする声、でも、誰の声だったか思い出すことができない。



「――ともこ!! 目を覚まして智子!!」



 その時、ほっぺたに強い衝撃を感じた。



 その瞬間、暗闇の世界が消えて、私は意識を取り戻した。



「あれ……? ここ……お父さんの部屋?」



 そこは見慣れた父の部屋。目の前には両親の姿もある。

 その顔には涙が流れており、父の顔には小さな切り傷がいくつもついていた。



「お前、何も覚えてないのか?」


 父は顔をさすりながら、金庫を指さした。

 金庫は、壊されていた。入口の扉はバールのようなもので無理やりこじ開けられ、無残にも破壊されている。

 私が自分の手元を確認すると、いつも見ているスマホが、床に転がっていた。



「夜中に急に大きな音がしたから起きてきたら、お前が工具箱からバールを取り出して金庫を壊していたんだ」


「それで……? 私、何かしてた?」



「自分の携帯を持って、自撮りをしようとしてたよ。それで、俺がスマホを取り上げたら、このザマだ。スマホを返せと爪で引っかかれたよ」


 父は自分の顔をさすりながら言う。

 私は自分のスマホを取ると、画像フォルダを開く。


 もしも三枚以上撮られていたら……





 そう思うと手が震えた。






 撮られていた画像は、二枚。



 全身から力が抜けるのを感じた。



 画像を確認すると、カウントダウンは進み、残る指は一本。



「危なかった……」




  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■  ■



 私は両親に見守られながら夜を過ごすと、すぐにお祓いをしてもらうため、大きな神社へと向かった。


 そこで紹介された霊媒師さんのところへ行くと、すぐにお祓いが開始された。


 白いふわふわした髪がついている棒を霊媒師さんが降ると、なんだか少しずつ気分が良くなっていくように感じる。

 除霊が終わる頃には、なんだか体が軽くなったように思えた。



「非常に強い霊でした。ですが、もう大丈夫ですよ」




 この一言がどんなに嬉しかったかは、言葉では言い表せないのだろう。

 私はただただ涙を流した。






 



 こうして私の夏は、幕を閉じる。 

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