柒
その日の晩、私は両親に全てを話した。
自撮りさんの話。
圭子からの電話。
そして私に今起こっていること。
初めは信じてくれなかった両親も、圭子の死と、あえて消さずにとっておいた自撮りさんの画像を見せると、私に何かが起きているということはわかってくれたようだった。
「明日、お祓いに行こう」
そう言ってくれた父の顔は、とても神妙だった。
私はまた寝ている間に自撮り写真を撮られないよう、両親のスマホも含め、すべてのカメラ類を、金庫の中に入れてもらった。
父が仕事の大切な書類を入れているその金庫の開け方は、父しか知らず、私には開けることができない。
これなら例え自撮りさんに何かされたとしても、写真を撮られることはありえない。
そう考えると、幾分か安心して布団に入ることができた。
● ● ●
―― 何も見えない。
―― 何も聞こえない。
―― 何も感じない。
私は暗闇の中を漂流していた。
何も考えられない。私はただ、布団に入って寝ていただけだったのに。
「――こ! ――もこ!!!」
どこからか声が聞こえる。知っているような気がする声、でも、誰の声だったか思い出すことができない。
「――ともこ!! 目を覚まして智子!!」
その時、ほっぺたに強い衝撃を感じた。
その瞬間、暗闇の世界が消えて、私は意識を取り戻した。
「あれ……? ここ……お父さんの部屋?」
そこは見慣れた父の部屋。目の前には両親の姿もある。
その顔には涙が流れており、父の顔には小さな切り傷がいくつもついていた。
「お前、何も覚えてないのか?」
父は顔をさすりながら、金庫を指さした。
金庫は、壊されていた。入口の扉はバールのようなもので無理やりこじ開けられ、無残にも破壊されている。
私が自分の手元を確認すると、いつも見ているスマホが、床に転がっていた。
「夜中に急に大きな音がしたから起きてきたら、お前が工具箱からバールを取り出して金庫を壊していたんだ」
「それで……? 私、何かしてた?」
「自分の携帯を持って、自撮りをしようとしてたよ。それで、俺がスマホを取り上げたら、このザマだ。スマホを返せと爪で引っかかれたよ」
父は自分の顔をさすりながら言う。
私は自分のスマホを取ると、画像フォルダを開く。
もしも三枚以上撮られていたら……
そう思うと手が震えた。
撮られていた画像は、二枚。
全身から力が抜けるのを感じた。
画像を確認すると、カウントダウンは進み、残る指は一本。
「危なかった……」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
私は両親に見守られながら夜を過ごすと、すぐにお祓いをしてもらうため、大きな神社へと向かった。
そこで紹介された霊媒師さんのところへ行くと、すぐにお祓いが開始された。
白いふわふわした髪がついている棒を霊媒師さんが降ると、なんだか少しずつ気分が良くなっていくように感じる。
除霊が終わる頃には、なんだか体が軽くなったように思えた。
「非常に強い霊でした。ですが、もう大丈夫ですよ」
この一言がどんなに嬉しかったかは、言葉では言い表せないのだろう。
私はただただ涙を流した。
こうして私の夏は、幕を閉じる。




