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 圭子が見つかったのは、学校近くのコンビニ、そのゴミ置き場からだった。


 警察の話では、亡くなったのは一昨日の夜。

 私と圭子が電話したあの直後、圭子は何かしらの要因で死んでしまったらしい。



 

 死因は焼死。彼女はガソリンを浴びたあと、自分の体に火をつけ、ゴミと一緒に燃えていたらしい。

 圭子の死体はゴミにまみれ、目も当てられない状態だったという。




 あの時、私が部長に圭子からの電話のことを伝えていたら。




 たとえ一人でも圭子を探しに行っていたら、こんなことにはなっていなかったかもしれない。



 そう思うと、涙が止まらなかった。




 警察はこの件を、学校や部活でのストレスが原因の自殺と考えているらしく、私も含め、圭子の友人や部活のメンバーは長い時間事情を聞かれることとなった。



「事件の前、何か変わったこととかなかった?」



 そんな質問、まさか本当に自分が聞かれるとは考えてもみなかった。

 ドラマの中だった世界が、今目の前に広がっている。



「……何も、知りません」



 私は、ここでも正直になれなかった。


 幸いにも圭子のスマホは完全に焼けていて、データの復旧も不可能らしい。事件の前日、圭子が私に大量の電話をかけていたことは、私だけの秘密になった。





 圭子の死から二日。


 警察署からの帰り道、私は無意識にある場所へと歩きついていた。

 それは圭子と二人、何度も一緒に通った通学路。思えば、圭子が初めて自撮りさんの話をしたのもここだった。


 もう二人で帰ることは叶わないのかと考えて、涙が溢れてしまった。



「ごめん、ごめんね圭子……」



 いつもくだらない話をしてくる私の親友。失って彼女の大切さを知るなんて私はなんて愚かなんだろう。


 私はスマホを取り出すと、いつも圭子がそうしていたようにカメラを起動し、自撮りモードにする。そこに、黒い靄は、いた。



「圭子……? そこにいるのは、圭子なの?」



 靄はその場所に浮いたままで、何も答えることはない。



「ねぇ、答えてよ……圭子……」



 俯いた私の指が、偶然シャッターのボタンへとあたり、泣き顔の写真が保存された。

 それに気づき、顔を上げた私は、さらに大きな変化に気づいた。



「近づいてる……?」



 靄は、さっきまで私の膝程の大きさしかなかった。しかし今は私の顔ほどの大きさに変化している。

 私は半信半疑のまま、もう一枚写真を撮った。

 

 今度は、私の頭をすっぽり覆ってしまうほどの大きさに変化したのが目に見えてわかる。


 そこまで大きくなると、今までぼんやりとしか見えなかった靄の中も、徐々にはっきりと見えるようになってきていた。

 私は圭子の顔を確認しようと、スマホの画面に目を凝らす。



 今まで片目しか見えていなかった顔は、その上半分がほとんど見えるようになっていた。

 よく目を凝らすと、私と圭子が出会うきっかけとなった泣きぼくろの位置まで、よく確認することができる。

 いや、できてしまった。


 そのせいで私はあることに気づいてしまった。




 実は私と圭子の泣きぼくろは、正確に同じ場所にあるというわけではない。

 形も大きさも同じなのだが、それがある目の場所が違っていた。


 

 私は右目、圭子は左目。

 

 


 靄の中にある泣きぼくろは、右目の下についている。

 



 つまりあれは、圭子の顔じゃない。





――― もう一人の。




 圭子の最後の言葉が頭をよぎる。




 靄の中の顔が、見えない暗闇の中で笑ったような気がした。

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