肆
圭子は、次の部活にも来なかった。
あれから何度連絡しても、返事はない。
そんなある日。
部活が終わり、いつものようにスマホをチェックすると、着信が入っていた。
その数三十四件。
「え……? なにこれ……?」
それはすべて圭子からの着信だった。一時間前から約二分間隔で、ずっとかかってきている。
――― ブルルルルルル……ブルルルルルル……
私の携帯が震えだす。
画面には圭子の名前があった。
「圭子!? 今どこにいるの? みんな心配して……」
「智子! 助けて! 私が! 私がいなくなる! 助けて、私が!!」
「どうしたの? 落ち着いて、ゆっくり話して?」
「ダメ! もうあいつが来るの、もう一人の……あっ……」
かかってきたと同じように、圭子の電話は突然切れてしまった。
その後何度かけ直しても、圭子が電話に出ることはない。
私は圭子の言葉に大きな不安を抱えながら眠った。
いや、眠れるわけがなかった。
もう一人の。
圭子はあの後、なんて言おうとしたのだろう。
あの靄の中にいたのは、誰だったのだろうか。
考えれば考えるほど、嫌な予感は深まっていく。
● ● ●
次の日、私は部長と共に、圭子の部屋を訪れていた。
部活のない日だったが、部長に連絡したところ、私も気になっていたから、と何も聞かずについてきてくれた。
圭子の家は、高校に併設された女子寮。地元が地方にある圭子はこの場所で一人暮らしをしている。
本当は、行きたくなかった。行ってしまったら、知りたくないようなことまで知ってしまうような気がして。
―――ピンポーン……ピンポーン……
インターフォンを鳴らしても、誰かが出てくる気配はなかった。
何度鳴らしても、ただ部屋の中から虚しい音が響くだけ。
「いないみたいね……帰ろっか」
「はい……あの、部長……」
「ん? どうかした?」
「いえ……今日はついてきてくれてありがとうございました」
私は、昨日、圭子から電話があったことを話せなかった。
そしてこのことを、一生後悔することになる。
翌日、圭子は、遺体で発見された。




