愚かなる者に与える罰
あたしは嗤う。こいつらの考えなさと、愚かさを。
『聞いたよ。北にすむエルフたちを、殺したんだって?』
『殺した?なにをいってるんだよ。あれってモンスターだろ。倒すのが当然じゃん。今の俺は勇者、なんだぜ。あ、そうだ。勇者は姫と結ばれるものだしな。よし、ここの王に言ってお前を姫にしてやるよ』
……ほんっと、バカとしかいいようがないな。誰がそんなことのぞんでるんだっての。
『王、ね。この国の今の王はヒイロだよ。ま、相手が彼なら王妃になること考えてもいいかな、とはおもうけど』
『何をいって……』
このバカに付き合ってなんかいられんし、さっさと片付けるか。
『あたしはこれから向こうに帰るけど、そっちはどーすんの?その彼女もいるし、ここに残る?』
『なにいってるんだよ⁉こいつが彼女?単なるお前の代わりでしかないに決まってるだろ!それに、俺は勇者……』
『そんなの、どーだっていいよ。それで、帰るの?残るの?』
『……お前がいないとこに残ってもしょうがないだろ』
よし、帰れるな!
と、そこに待ったがかかった。
『お待ち下さい、スオウ様!あなた様が居なくなられたら、わたくしは……』
『そんなの、好きにすればいいだろ。桔梗がいる以上、お前はもう必要ないし。てかさ、別に俺じゃなくてもそいつらでも構わないんだろ。そいつらとも寝てるし』
『そ、そんなこと!』
うっわ、さいってーなこといってんな。本人に自覚はないだろけどね。実際はともかく、意味が解んないからって、こんな大勢の前で言うことじゃないな。
「なんならあんたも一緒に行く?あたしはあいつに関わりたくないから、引き受けてくれると助かるし。……マリーのことがよければ、だけど」
「あんな女どうでもいいわ。わたくしは彼と行くに決まってるわ!」
……どうでもいい、ね。ほんと、この二人似た者同士だね。
『おい、なに話てんだよ?帰るんなら、さっさとしろよ』
『分かった』
やれやれ。ま、せめてもの恩情だ。今のかっこがコスプレですませれるとこに送ろっか。
『ーーーーーーーーー、転移』
そして、あたしたちは穴に落ちる……。
……前に落っこちたときはなんにも解んなかったけど、今は理解できる。
魔術を起動した瞬間にふたつの世界の間にトンネルができて、そこを滑り落ちてく感覚がある。
ふと見ると、あの二人の行く先は、キチンと向こうの世界に繋がってる。だけどあたしの方は、途中でUターンして戻っていく。
……ふむ。どうやらそれがわかるのは、起動したあたしだけのようだ。あの二人はどうやら停止状態で進んでく。
だから、最初の転移の時は、このことが解んなかったのか。
そうして思考してる間に、あたしは世界に落ちていくーー。
「たっだいまー」
時間的には、穴から落ちた直後だな。あたしの魔術の発動に驚いたカオしたまんまだし。
「貴様!勇者様をどうした!」
「もとの世界に返しただけだよ。……あいつは神々も認めた罪人。この世界に在ることは赦されない」
そして、
「アンタたちも、罰を与えるように言われてる」
「罰だと⁉笑止なことを!我らは為すべきことをするのみ。この世界を支配するのは、我ら人間だ!」
……ほんと、
「愚かだね」
「何を!」
「罰を与えるよ。『……記憶喪失』」
「……」
……さすがに、静かになったか。
「……おい、俺が判るか?」
王子の側近の騎士さんが話しかける。
「あなたは……たしか……」
さすがに判るか。……あたしが消したのは、あくまで記憶。知識までは消してない。
「何をしていたのかは?」
「それは……?」
首をひねってる。これはわかんないね。
「騎士さん。あたしはこいつらの記憶を消した。だけど知識は消してないから、仕事とかはできるはず。……これから見ず知らずの人たちと暮らすことになる、それが罰だよ……」
……これに関しては、神様が考え、王子も認めた。あいつが居たことが暴走の理由だから。あと、一気に人がいなくなると、国を回すのが大変だから。
「後は任せるね」
「はい。判っております……」
……町の方からも騎士たちが来て、記憶を無くした連中を連れてく。
「……キキョウ、お疲れ様」
少しつらそうな顔で、シオンがあたしの頭を撫でてくれた。
黒羽もすり寄ってきてる。
「キキョウちゃん……」
マリーは抱きついてきて、トキワも背中をポンポンと叩いてくれてる。
ほう、と息をして、あたしはみんなの温もりに、身を委ねた。
帰還ではなく転移なのは、彼らが帰るべき場所を特に決めてた訳ではないため。
界を渡った二人のその後は、活動報告で。
酷いことになるので、読む場合は注意を。




