命の重さ(前編)
ここからだいぶ重くなります。
あたしは太刀を横凪ぎに振るい、襲ってきた盗賊を切り裂く。
これで、最後。
他の盗賊は既に全員、事切れている。
……この国に着いてしばらくは良かった。トパーズともあまり変わらず旅ができたから。
王都まで、魔獣の被害については覚悟してたけど、人とやり合うことになるとは、少なくとも命を奪う必要があるなんて、思っていなかった……。
最初は王都まで黒羽で一気に飛んでこうって思った。だけどそれには待ったがかかった。
ガーネット様いわく、王都には協力者がいて、現在根回し中だとか。その間、あたしたちが歩いて旅することで、魔力の流れを読み、多少でも魔獣を押さえたい、だそう。
それで歩いてこー、ってとこまではよかった。
問題は、魔獣の狂暴化の度合いと治安の悪さ、だった。
王都まで約3週間ほどの道のり。取りあえず最初にの1週間は何ごともなかった。多少魔獣は強かったっけど出発前の、真竜の長との訓練の方が大変だったからな……。
ちなみにあたしたちのハンターランクは、一応据え置き状態。実力はすでにSに引っ掛かってるそう。みんなで頑張った……。真竜って、ほんとにつよいね……。
まあ、魔獣はいいんだ。問題は、盗賊に堕ちてしまった人たちだった……
「この調子なら、予定通りに王都につくよ」
「ヤマブキさん、ガーネットを旅したことあんの?」
「ないけどねー。ここら辺の距離なんかはどの国も一緒だし」
そっか。人為的?に作られた世界だしね。
「あ、マジュウでたよ」
探知に優れる黒羽は大活躍だな。
「よし、さっさと片付けるぞ」
……あっという間に片づいたっと。やっぱ強くなってきてるかな。
「……そいつをよこして貰うぞ?死にたくなければな!」
「……おれたちになんの用だよ」
人の気配は気づいてたからな。一応様子見してたんだけど……。
「聞こえなかったかよ!そいつは俺たちの物だ!」
「まあ別にかまわんが」
実際あたしたちにこの程度の魔獣は必要ない。そんだけの実力はあっからね。
「……よく見りゃ、ずいぶん可愛いネーチャンたちだな。よし、そいつらも置いてけ、!」
「はあ?」
バッカバカしい。
「こいつらほっといていきましょ」
「そうだな、さっさと次の町いってゆっくりしたいし」
「わかった。じゃあな」
トキワが連中に手を振って歩き出す。あたしたちもそれに追随する。
「おい、待ちやがれ!聞こえなかったのか!」
「……聞く気がないだけだよ。別にそれだけの魔獣があれば、十分でしょ」
「ふざけんな!」
……と、お約束のよーに襲ってきた。
あっという間に返り討ち、だけどね。
そいつらを引きずりつつ次の町に到着。門番の兵士に襲ってきた人たちをわたす。
「……そうか」
事情を聞いた兵士は……剣を抜いて彼らの命を、奪った……。
「!なにをー」
「罪人である以上、当然のことだ」
平然と答えて、あっという間に全員、動かなくなった……。
「よし、さっさと浄化しろ」
「はい」
後ろから出てきたのは、火の神官らしき人だった。
彼が浄化しようとしたとき、ヤマブキさんが声をあげた。
「やめろ!浄化は神具を使わずにやれば魂に傷がつく!知らない訳じゃないでしょう⁉」
「……こんな罪人に使う必用なんてあるわけないでしょう。神具は高貴な者のみ使えばいいのです」
一応、地の神官であるためか敬語だったけど、それでもこちらをバカにした口調でいい放った。
ーーこの世界で死を迎えると、肉体は停止しても魂がとどまってしまう。そのままでは魔物と化してしまうため、神具による浄化を必用とする。神具の起動には、神々の魔石が必用。だけど、魔石は強い魔力の結晶で、いまこの国では……戦争の道具としようとしている、ってことか。魂が傷つけば、それだけ世界の力も弱まるというのに……。神官さえ、信仰をなくし、神の声が聞こえなくなった、その、悪影響。浄化を簡易で行うことが、かえって神の力を削ぐことを理解しない、いや、出来ない。
「……高貴?お前たちのようなものは、愚か者というのだ」
あたしの肩から降りて、本来の姿(3メートルまで成長した)に戻った黒羽が低い声を出す。……真竜の長いわく、はったりも時には必要とか……。
「本来の高貴なものの姿を見るがいい」
あたしは前に出ると、浄化の祝詞を唄った。
海上で必要かも知れないからって、教えられてた。
唄自体はさほど長くないし、旋律は綺麗で覚えやすかったし。
だけど、唄えんのは、あたしくらいだろね。必用な魔力は普通の魔術師、神官じゃ足んないほどだから。
……唄い終えると、死者はみんな浄化され、跡形も残ってなかった。
「……行こう」
後も見ず、真っ直ぐに歩き出した。
後半に続きます。
重かったので、一度では書ききれず。




