神殿へ 女神様再登場
桔梗の身分が判明。
ひっろい王都。でも、王城と神殿だけは迷いようがない。
王城は町の中央、もっとも高い尖塔がめじるし。い
神殿は町の南部、広い敷地と転位門のための4つの塔がめじるし。
どっちの塔も他の建物より高いからねー。
……さすがに高層ビルとかみたいには高くないけど。
っというわけで、神殿にとーちゃくー。
いやー、ここまで人込み多いと、歩くのも一苦労。
特に背がひくいマリーはちょっと大変そうで、トキワの服の裾握って壁にしてた。トキワはいつものことって感じ。
あたしとシオンはその後ろからついてったからけっこー楽だった。おっきい人がいっと、こういうときベンリ。
でだ。……神殿の入り口ってコレ?
ドラゴンでも入れるようなおっきさなんだけど。
「ここから入って転位門の方に移動するからね。馬車が入れる大きさが必用なんだよ」
納得。神殿に馬車ごと入ってく人たちいたわ。
その人たちを横目に細い方の通路を通った先、カウンターがありました。なんっつーか、役所の受付かって雰囲気。
トキワは空いてる方の受付さんにむかう。
「すまんが、ヤマブキって神官と待ち合わせしてんだが」
受付さん(なんかみんなキレーなおねーさんです)はトキワと後ろのあたし、おそらく正確には黒羽を見て驚いたような顔をする。
「し、失礼しました!す、すぐに呼びますので、そちらに掛けてお待ちください!キキョウ様!」
はい?様?なんで?
「えーっと、なんでキキョウちゃん、”様”ってつけるのかな?ふつうの場合は”さん”よね?」
パニクってるあたしをみかねて、マリーが訊ねてくれた。
「それは、真竜様の契約者であり、神々にもっとも近い存在であられる以上、当然のことです!」
力説された……。注目もされた……。あたしにナニをしろと……。
「……取りあえずヤマブキを呼んでくれ」
「はい!お待ちください!」
受付さんは奥に向かった。ホント、あたしはどーすりゃいいんだか……。
「お待たせって、あれ、なんか疲れちゃった?」
「……あたしは神様じゃないんだけど……」
……まわりの注目は切れません。マリーとシオンがあたしの両脇に座って、撫でてくれてたりすっけど。
「ああ……」
なんか納得してるし。
「とにかくここの大神官様に会いに行くよ。例のバカ、片付けないとね」
あー、そんなやついたっけ。忘れてた、っつーか忘れてたかった……。
あたしたちは注目されたまま、ヤマブキさんについてった。
コンコン。
「ヤマブキです。キキョウ様をお連れしました」
……。
「どうぞ」
「失礼します」
そこには、年配の身分の高そうな女の人と、落ち着いた雰囲気の男の人、そして神殿とは関係ない服装をした、品のいい男の子がいた。この子はあたしより年下かも。
「はじめまして、キキョウ様。私はこの地の大神官を勤めさせていただいております、シュンランと申します。
こちらは私の補佐をしてくれてますヒワ、そして、こちらがこの地の国の王のご子息でウコンと申します。お見知りおきを」
「はあ……」
えっと、この国って大神官のほうが王子様より上?
「身分的には王様、大神官、王族、高位の神官、貴族、の順番になるかな」
シオンありがとー。そうなんのか。で、そんなお偉いさんたちに様付けされてるって……。
「真竜と契約されるということは、神々の御使いであるものと伝えられております。そのため、キキョウ様は各国の王よりも上の立場であられる、ということです。直接政治に関わることは難しいとは想いますが、どのように振る舞われても、神々以外に咎め立てすることは出来ません」
そーなんのね……。いつの間にお偉いさんになっちゃったって黒羽を使い魔にしたときだな。
「キキョウ様。叔父が大変ご迷惑をお掛け致しました。慎んでお詫び申し上げます」
ペコリ、とウコン君が頭を下げる。
「あなたのせいではありませんから。頭を上げてください」
「私に敬語は要りません。どうぞウコンと呼び捨ててください」
うーん。
「わかった。じゃ、君もあたしのことは様付けで呼ばない。敬語もナシ。よろしくね」
「ええっ!」
「キキョウ様がお望みである以上は、公的な場でなければ問題はないでしょう。ですが、私達神官はそういう訳には参りませんので、どうかご容赦を」
「……わかりました」
「敬語も必要ございません」
「……でもさん付けはさせて。じゃないと落ち着かない……」
「はい。それはかまいません」
ということになりました……。
そのあと、あたしのお土産のケーキを食べながら、あのバカについての話になった。
「……そこまでとは」
「これであれを放逐できますね」
「すいませんでした。マリーさん、キキョウさん」
ウコン君、落ち込みまくってるな。まあ、叔父さんがこうなりゃ当然か。
「彼らにはしっかりと罰をあたえます。おそらくは神々からも神罰が降るでしょう」
となりました。あ、シュンランさん口の端にクリームが……。
「ケーキ、美味しかった?」
思わず尋ねると、みんな深くうなずく。
「このケーキというもの、どこで手に入れたのですか?」
「中央通りのパンの食べ物屋さん、知ってる?」
「ああ、あそこで……」
「そこのパンがちょうどいいかんじだったから、クリームの作り方を教えて、そのための魔道具と引き換えにコレもらったんだ。あ、ちなみに甘いものって食べ過ぎると太るから」
ピキっと固まった。シュンランさんだけ。まあ、特に気にすんのは女性だよな。
「そうですか……。教えて頂いて感謝します」
そっとクリームを拭き取って、シュンランさんがいった。
「もっとも、これくらいなら運動をしっかりすれば問題ないよ。逆に必要以上に動く必要があるときは、すぐにエネルギーになるから食べた方がいいときもあるし。甘いものって疲れてる時に疲れをとってくれたりもするし」
「食べ過ぎなければよいのですね」
「そういうこと」
「さて、キキョウ様。これから貴女には神の間へ行っていただかねばなりません」
「神の間?」
「はい。私達神官はそこで神の言葉を聴くのですが、キキョウ様はそこから神々の世界へと向かうことができるとの仰せなのです」
「……つまり神様のところへ行けばいいんだね」
「はい」
……行くしかないことは分かってる。トキワ、マリー、シオン。3人の顔を見ると、みんな心配そうに見ている。あたしが神に近い存在ってことは気にしてないのが分かる。だからあたしは笑いかけた。
「ちょっと神様に会ってくるよ」
「うん。ちゃんと待ってるから、神様ってどんな方々なのかあとで教えてね」
無理に笑ったような顔で答えてくれた。
「うん。行ってくる」
そしてあたしはシュンランさんに連れられて神の間に向かった。
あ、黒羽は創造神の眷属だから問題ナシで一緒。
神の間は学校の教室くらいの広さで、中央に台座みたいなのがあった。
「あの台の上に」
言われた通りに台の上に立つ。
と、光が溢れて何も見えなくなった。
ふと、目をあけると、そこは広い場所だった。
木々が自然のカーテンとなって日を遮り、その下にはティーテーブルとお茶が用意されている。
テーブルには4人の人影があった。
「いらっしゃーい‼」
……明るい声で、女神様ーートパーズ様が抱きついてきた。
おい、ケーキがつぶれるじゃないか……。
補足
シュンラン→人間
ヒワ →エルフ
ウコン →獣人
各国の王族は、人種は違います。
出てくる時までお待ちを。