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もう一度。  作者: ななこ
3/8

3

 あれからしばらく誰も来ず、あの時に何故声を上げなかったのか、かなり後悔することになった。

後悔先に立たず。

しばらくして部屋に来た医者らしき人が背中に何か当てるとスーッと痛みが引いて、また深い眠りへと落ちていった。


 そして今、私はかなり困惑していた。

ここは、私が18年間生きてきた世界とはどうも違うようだ。

異世界。

まさか。

私が?

なんで?

どうして?

ぐるぐると同じことが頭の中でこだまする。


「いい加減、現実を受け入れろ。」

いらだった声が、私を現実に引き戻す。


昔のトラウマからか男の人が大きな声を出したり、怒ったりすると心臓がビクリと音を立てる。

怖い。

そろりと伺うように見ると、いかにも不機嫌そうな顔で私を見下ろしていた。

紺色の髪の毛に薄茶色の瞳、意志の強そうな口元。

たぶん、とても綺麗な顔をしているのだと思う。

だだ、表情が怖すぎて見れない。


「ダメだよ、アレク。彼女が怯えている。急に知らない世界に来たんだ。

戸惑うのは仕方の無いことだよ。」

優しい声に恐る恐る顔を上げると

「ごめんね。でもアレクはいい奴だから心配しないで。

そして僕の名前はレオナルド。一応この国の王子だよ。」

そう言い私の目線にあわせて屈んでくれてた。

赤い髪に黄緑色の瞳。

上品な顔というのだろうか、王子様っていうのも納得できる。

彼の切れ長の瞳が優しく微笑んでくれていて、少しホッとする。

それにしても、やはり異世界に来たのだなぁと実感した。

紺色に赤、チラッと目の端に緑色の髪の毛をした人もいたと思う。

もう一度、王子様の赤い髪を見ていると

「そろそろ君の名前を教えてくれる?」

くすくすと笑うように言われてハッとした。


私はどちらかと言えば落ち着いた、真面目な子として生きてきた。

そうしなければ、いけない環境っていうのもあったけれど。

それが、ボーっとしている。

色々これからの生活やお金の事など確認しないといけないのに。

しっかりしないと。

自分に言い聞かせるように心の中で気合を入れた。


「私の名前は、さくら。」

久しぶりに発した声は、小さく頼りないものだった。














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