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あっという間だったと思う。
一瞬の浮遊感の後、私は知らない世界にいた。
周りの景色も何もかも、そう空気の匂いさえも違うと思った。
ガサガサ
近くの草むらが揺れびっくっと体が反応するが、痛くて動けない。
この世界に来る前に私は・・・。
あぁ、背中がじんじんと痛い。
失血の為か、体がだんだん冷たくなっていく。
死ぬのかしら…。
薄ぼんやりとしていく視界の中に、男の人が見えた。
逆光のせいで姿はよく見えないけど、何かささやくような、まるで歌っているかの心地よい声が聞こえる。
私はふわふわとした感覚を最後に意識を手放した。
痛みで意識が浮上した。
背中が熱を持っている。
うつ伏せに寝かされたベッドは清潔でふかふかしてた。
ここは病院で私は助かったのかしら。
何か忘れている気がするが・・・
お母さんはどうなったのだろう。
事件になるのだろうか。
アイツは、
ガチャ
誰かが入ってきた。
お医者さん?看護婦さん?




