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エピローグ 何度でも
「死んだ人ってさ、生まれ変わったりすると思う?」
1歩先を歩く彼に向って、私は小さな声で言った。散々泣いた後だったので、腫れた眼を見られないように俯いたまま。
横にある水槽の中を、大きなウミガメがゆったりと泳いでいた。
「うーん。死んでみないと分からないですね」
彼は笑いながら、ウミガメの方を見た。
「……もしも生まれ変われるなら、今度は普通の人間として生まれてこれるかしら」
私の言葉で、彼がこちらを振り返る。私は彼の眼を見ようとして、けれど見れないまま、呟くように言った。
「もしも普通の人間に生まれ変わったら、もう一度あなたの側に来てもいい?」
それを聞いて、彼が微笑む。そして、はっきりと言った。
「普通じゃなくても人じゃなくても、俺のところに来てください。俺も生まれ変わったら、あなたのところに行きますから」
そしてまたこうやって、手を繋ごう。何度でも。