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トレドの幽霊騒動

本作はスペインの古都トレドを舞台にした創作奇譚です。作中の事件や噂はフィクションであり、実在の歴史や伝承とは異なります。

 昔、スペインが世界帝国として最盛期を迎えていた頃、トレドが政治の中心地であった頃の話。


「あらかじめ仲間のひとりが召使いとして屋敷に入り込み、夜中に鍵を開ける。そして、家族が寝静まった頃に金目の物を奪っていくって寸法よ!」

「さすがリーダーだぜ!」フェリペ二世の御代(みよ)、トレドの窃盗団はそんな手口で鮮やかに富を奪っていた。


 ある夜、彼らは最高級の白い絹の反物(たんもの)を奪い、夜の路地をヒラヒラと(ひるがえ)しながら逃走した。その姿が「白い幽霊が飛んでいた」と街中の噂になる。これに味を占めたリーダーは、さらに大胆な計画を立てた。

「どうせなら本物の幽霊になりきって、連中をビビらせてやろうぜ」

 彼らは古い教会の下にある墓地を暴き、埋葬されていた死者から修道服(ハビト)()ぎ取った。

「どうだ、幽霊っぽくねえか?」

 血に汚れ、泥にまみれた死者の衣を(まと)い、彼らは互いの姿に満足した。

「っぽいっす! これなら市民だけじゃなく衛兵も震え上がりますぜ!」

 (ネグロ)(グリス)、そして血染めの(ブランコ)。不吉な色をまとった「死者」たちが、夜のトレドに繰り出した。


 だが、その夜、異変が起きる。仕事を終えて衣装を脱ごうとしたが、死者の(あぶら)を吸った修道服(ハビト)が、まるで自分の皮膚のように張り付いて剥がれない。強引に引き剥がそうとすれば、自分の肉まで一緒に()げ落ちる。

「脱げねえ……体が冷えていく……」

 叫び声も出せぬまま、彼らはそのまま「中身のない修道服(ハビト)」となり、息絶えた。


 今でもトレドの入り組んだ裏路地では死んだことにも気付かず、血に汚れた白い布を翻し、お宝を求めて彷徨(さまよ)う「彼ら」の姿が目撃されるという。

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