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老婆と扉の印

 雪深い聖なるユール(クリスマス)の夜。村の家々が固く扉を閉ざす中、ぼろをまとった老婆が籠を抱えて現れた。

「宿を貸してはくれまいか」

 老婆の問いに、多くの家は「家族で過ごす神聖な夜だ」と冷たく追い払った。しかし三軒の家だけは扉を細く開け、「泊めることはできないが、せめて喜び多いユールを」と言って、老婆の籠に施しを入れた。ある家は石のように硬い堅焼きのパン(クネッケブレード)を、ある家は冬越しのための干し肉を、そしてある家は大切に蓄えていたドライフルーツを入れた。

 老婆は「祝福されたユールを」と一言残し、雪の中に消えていった。


 翌朝、村人たちは自分たちの家の扉を見て驚いた。老婆を追い払った家々には、白い石灰(いしばい)で殴り書きのような「×」が付けられていた。不気味に思った村人たちは、その印を縁起が悪いと見て、さっさとこすり落としてしまった。

 一方で、施しをした三軒の扉には「○」が描かれていた。「何かの呪いだろうか。まあ悪いものではあるまい」と、そのまま残しておいた。


 それから間もなく、村を流行り病が襲った。「×」印を付けられた家々には病が訪れ、瞬く間に全滅した。しかし「○」印の三軒だけは、なぜか病に罹らなかった。三軒の住人は、春が来るまで誰一人として熱を出すことさえなかったという。

16世紀中頃の北欧をイメージして書きました。

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