表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第二十章―ハゲグ上陸戦
79/196

78 死線の渡河

「どこだ?!」

まつみは土壁の小屋を荒々しく探る。


毛布をめくり、床下を覗き、棚を探るが見つからない。


「見つけたぞ!!!」

トリの声が響く。


井戸から動力魔油の桶を引き上げたその瞬間、背中に激痛が走った。


「ぐあっ!!!」


薄く湾曲した鱗刀が背中を裂く――神曲の副長が緑砂トカゲにまたがり現れた。


トリは悟る。三次職相手では勝ち目がない。油桶を抱えたまま味方の方へ走る。


だが緑砂トカゲは二歩で追いつき、今度は刃が腰へ深く突き刺さる。


【システムメッセージ: ギルドメンバー トリ HPが20%になりました】


トリは地面へ崩れ落ちる。それでも油桶を放さない。緑砂トカゲが体を踏みつけ、騎手が刀を振り下ろす――


「影縛り!」


黒い縄が副長の身体を引き止める。刃はトリの頭上で止まり、落ちない。


まつみが背後から影で緑砂トカゲを絡め取っていた。全身の筋肉が震えている。

「早く……行って。こいつ……力が強すぎる」


トリはすぐに村外へ駆け出す。


緑砂トカゲはすぐ拘束を振り払い、振り向きざまに斬りかかろうとするが、まつみの姿はすでに消えていた。

「ちっ……アサシンめ……!」


……


村では神曲とKanatheonが激突していた。


神曲は聖職者の多さを活かし、全体HPを立て直していく。


一方Kanatheonは数名を失い、突破から包囲へと追い込まれ、徐々に中央へ圧縮される。


時間が経つほど不利になる。


むぐち やよいには戦術を練る余裕すらなく、ギルドメンバー全員が死に物狂いで斬り合っていた。


「むぐち やよい! 油を確保した!」

トリの叫び。


「回復!」

かなが叫ぶ。


緑金の旋風が敵を弾き飛ばし、わずかな隙間を作る。


「退くぞ!」

むぐち やよいは突破口を切り開き、トリを回収して桟橋へ向かう。


「こっちも油を確保した! 追え!」

緑砂トカゲ騎兵も油桶を抱えて戻ってくる。


戦場は一瞬で競走へ変わる。両軍が全速で鉄皮艇へ駆ける。


五隻の小艇が同時に給油を完了。


【システムメッセージ: 獣鉄艇は10秒後に出航します】


「各艇、重装最低一名、聖職者一名。残りの重装は俺と第一艇だ!」

むぐち やよいが即断する。


エンジンが唸り、小艇は自動でハググ城塞へ進み出す。


「重装を集中させて先陣を切らないのか?」

パシュスが問う。


「見ろ」

むぐち やよいが神曲側の艇を指す。


双方の鉄皮艇は、『>』の字を描くように急接近している。同じ桟橋へと収束する、衝突必至の軌道だ。


「この鬼畜仕様、プレイヤー同士を戦わせる気だな……」

まつみが呟く。


「詠唱準備!」

むぐち やよいが叫び、艇上の魔導士たちが一斉に詠唱を開始する。


小艇は左右に揺れながら進む。敵の顔が徐々に鮮明になる。


パンッ。


乾いた銃声。


「ぐっ……!」

むぐち やよいの左胸を弾丸が貫き、血が噴き出す。


「聖母の祈り!」「憐憫!」

ニフェトが胸に手を当て、治癒を施す。


カン、カン。


パシュスが盾で銃弾を弾く。

「指揮官を狙ってるな」


「構うな……準備だ」

むぐち やよいは立ち上がる。


魔力の風が艇上を吹き抜け、ローブがはためく。


心臓が激しく打ち、血管が張り裂けそうになる。


第一艇が射程へ入る――両軍とも動かない。どうやら近接主体だ。


第二艇が距離を詰める――


「撃て!!! 黒雷!」

かなの怒号と同時に、両軍が一斉に火を噴いた。


数条の雷撃と紅白の魔法が空中で激突し、爆風が湖面を揺らす。


轟音。両軍の小艇が次々と魔法を受け、大きく傾く。Kanatheonの一人が宙へ放り出された。

「助けてくれ!!!」


「掴まって!」

まこが必死に手を伸ばす。


ドボン。黒い影が水中から伸び、その身体を深淵へ引きずり込んだ。


【システムメッセージ: ギルドメンバー 脇役は死なず HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー 脇役は死なず HPが0%になりました】


まこは青ざめて手を引っ込める。


「止めるな! 白の矢!」

かなが叫ぶ。


大技のクールタイムが明けるのを待つ間、双方の魔導士は手近な攻撃魔法を乱射する。


両艇の間を無数の光線が交差し、まるで宇宙戦艦の砲撃戦のような乱戦になる。


むぐち やよいは焦燥を押し殺す。接岸と同時に城壁からの猛砲撃を浴び、強行上陸、さらには敵ギルドとの混戦……。もはや、一刻の猶予もない。


第三艇が射程に入る。魔法陣が輝く。


「来るぞ!」

かなが第三艇へ叫ぶ。詠唱が重なり、狩人が矢を番える。


「撃て!!!」


……


砲撃は白熱し、遠距離職は持てる全てを叩き込む。双方に犠牲が出る。


鉄皮艇が桟橋へぶつかる。Kanatheonは矢のように飛び出し、神曲側の桟橋を奪取した。


神曲第一艇も到着し、狭い桟橋で即座に肉弾戦が始まる。


開始早々、何人かが水中へ突き落とされ、大竜亀の餌食となった。


ドォン!!!城から砲声。


【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】


人だかりの中央に砲弾が落ち、凄惨な光景が広がった。


衝撃で十数名が湖へ吹き飛ばされた。


水中に潜んでいた大竜亀が素早く群がる。


城壁にいくつもの砲門が開き、黒鉄の大砲が桟橋へ向けて火を噴く。数隻の小艇が爆散した。


さらに星のような緑光が降り注ぐ。


両軍は暗黙の休戦を選び、必死に仲間を引き上げる。


轟音!間髪入れず、第二波の砲弾が叩き込まれた。


Kanatheonの上空に巨大な弧状の鏡盾が二枚展開された。


「位相シフト」

かみこが呟く。右腕の魔符の回転が鈍り、魔力が尽きかけている。


砲弾が左の鏡盾へ吸い込まれ、右の鏡盾から射出されて城壁を逆爆破し、大砲を一門破壊した。


「救助急げ! 重装はここを死守!」

むぐち やよいは虫羽の盾を構え、盾陣へ加わる。


もはや敵味方の区別をしている余裕はない。両軍が盾を掲げ、踏ん張る。


ドォン。


【システムメッセージ: ギルドメンバー 六口弥生 HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】

【システムメッセージ: ギルドメンバー ……… HPが20%になりました】


砲弾がボウリング球のように中央の盾陣を打ち砕き、血飛沫が弾ける。


桟橋は一瞬で修羅場と化し、血が湖面を赤く染めた。


爆風に煽られ、何人もが水中へ吹き飛ばされる。


「連携回復!」

かなが叫ぶ。


「天……天洪!」

「聖……聖域浄化……」

神官は周囲の悲鳴に乱され、集中できない。


「慌てるな! もう一度!」


「むぐち やよい!!!」

パシュスが叫ぶ。


むぐち やよいは砲弾の直撃を受け、虫羽の盾が砕け散る。神曲のメンバー二人を巻き込み、湖へ叩き落とされた。


「むぐち やよい姉さん!!!」

まこは桟橋に身を乗り出し、必死に装甲へ手を伸ばすが届かない。


湖底の闇から黒い影が迫る。大竜亀が口を開き、浮かぶむぐち やよいを呑み込もうとする。


「むぐち やよい姉さん! 起きて!」

まこは半身を水へ投げ出し、指先が装甲を掠める。


「まこ、水際から離れろ!!!」

パシュスが怒号を上げ、天護の衝撃を放って飛び込む。


指先に重みがかかる。


「掴んだ! パシュス、早く――」


ドボン。


【システムメッセージ: フレンド 六口弥生 HPが0%になりました】

【システムメッセージ: フレンド 真子 HPが20%になりました】

【システムメッセージ: フレンド 真子 HPが0%になりました】



今日は頑張ってもう一話書いたので、こっそり置いておきますね。*( ´艸`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ