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見えない魔王——歪みきった征服ゲーム  作者: 純白
第二十章―ハゲグ上陸戦
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79 獣人族長 赤牙

大竜亀が水面を突き破り、口を閉じる。


水飛沫が弾け、むぐち やよいとまこは視界から消えた。


パシュスは水面を見つめたまま、身体が凍りつく。


緑の光矢がさらに数名を射倒し、重装隊は崩壊寸前。


両ギルドは城壁からの砲火に晒され、桟橋は壊滅状態。上陸作戦は完全に崩壊した。


「撤退だ! 退け!」

神曲のギルドマスターは唯一無事な鉄皮艇へ乗り込む決断を下す。


神曲の面々は我先にと船へ殺到し、何人かは押し出されて水へ落ちた。


小艇はゆっくりと離れ、取り残された者たちが必死に逃げる。


Kanatheonはようやく落水者を救出し、桟橋に取り残された。


甚大な被害。連携回復と神官の意地だけで辛うじて持ちこたえる。


むぐち やよいを失った衝撃は重く、士気は今にも砕けそうだった。


いつの間にか、砲撃が止んでいる。


Kanatheonの肩に、小さな白い鳥が止まった。


「ギルドチャンネル むぐち やよい:私とまこはワスティン大聖堂に戻った。無理に城へは入らない。これより攻城指揮はパシュスに任せる。頼んだ。──5分前」


「そうだ……護心石!」

パシュスは思い出し、目に光を取り戻す。


「城壁の真下まで走れ! あそこは砲撃の死角だ! 俺に続け!」

銀月盾を掲げ、真っ先に駆け出す。


「うおおおお!!!」

Kanatheonは再び闘志を燃やし、突撃する。


「来い! 立ち尽くしてる場合じゃない!」

ニフェトが湖畔に取り残された神曲の残党へ叫ぶ。


「急げ!!!」

Kanatheonが手を振る。


神曲の残兵は矢雨を浴びながら駆け寄る。


「選択は二つ。今すぐギルドを抜けてこちらへ来るか……それとも処刑されるか」

ニフェトの表情が変わり、全員が武器を構えた。


【システムメッセージ: 一樹(かずき) ギルドに参加しました】

【システムメッセージ: 明日香 ギルドに参加しました】

【システムメッセージ: 湖下童子 ギルドに参加しました】

【システムメッセージ: 黒髪ロング ギルドに参加しました】

【システムメッセージ: 貧乳はステータス ギルドに参加しました】

【システムメッセージ: 嘘つき ギルドに参加しました】


「城壁沿いに進み、城の入口を探そう」

パシュスは唾を飲み込む。指揮を任された重圧が肩にのしかかる。


……


まつみ、トリ、瑠璃、そしてかみこは混乱に紛れてハググの大手門を潜り、城壁上の砲兵と斬り結ぶ。


かみこは城壁を歩く。鏡の盾は周囲を高速で巡り、飛来物を次々と弾き落とす。


北側の桟橋はすでに瓦礫と化し、砲弾が地面を穿った大穴がいくつも残る。血痕が至る所に散っていた。北側の二ギルドも相当な被害を受けたらしい。


別働隊は円形城壁上で獣人砲兵と戦いながら、下の味方を北門へ誘導する。


巨大な鉄の顎が現れた――ハググ城の正門だ。


「……行くぞ」

パシュスは覚悟を決め、足を踏み入れる。


内部は円形の軍事要塞。赤油を塗られた鉄皮の兵舎が密集し、街路はすべて中央の三基の高台へ伸びている。高台の頂からは青雷が走り、轟いていた。


「見て」

まつみが中央の魔法陣を指す。


そこに立つのは軍旗を背負い、黒鉄の重鎧を纏い、白い戦紋を刻み、血釘の巨斧を携えた獣人――族長 赤牙(アカキバ)。


……


足を踏み入れた瞬間、狭い街路から剣斧を構えた獣人兵が雪崩れ込む。


重装が前へ出て受け止め、激しく押し合いながら斬り合う。


敵を足止めし、後衛に射線を作る。


「総員、全力射撃!」

かなの号令。


魔法が一斉に降り注ぎ、狩人の矢が的確に敵を射抜く。獣人兵は次々と崩れ落ちた。


聖職者は途切れなく治癒を重ねる。


別働隊も合流し、反撃に転じる。獣人兵は押し返され、散り散りになる。


さらに進み、幾度となく押し寄せる敵勢を退け、三基の高台の足元へ到達した。


「止まれ!」

パシュスはついにハググ領主の目前へ辿り着く。


赤牙は魔法陣の中央に立ったまま、動かない。


不用意に踏み込まず、外周から様子を窺う。


ガタン。


周囲の建物から机を引きずるような音が響く。誰かが潜んでいるようだ。


だが全員の視線は赤牙へ向けられ、注意を払う余裕がない。


「この魔法陣は高台と連動しているはずです」

ニフェトが眉を寄せる。


「領主の能力強化か……?」

パシュスは低く呟く。


「城壁の弓兵は全滅させた。城は広くない。中央の三基以外に目立つ要素はない」

トリが告げる。


「援護バフ!」

パシュスの号令で再び強化が重なる。


上陸戦の大損害を経て、残るのは新加入を含めて二十数名。これが総力だ。


「むぐち やよいは戻れない。私たちでやるしかない。……幸運を」

ニフェトが静かに息を吐く。


「前進」

パシュスの声は重い。


一歩踏み込んだ瞬間、魔法陣が青く閃く。


赤牙がゆっくりと顔を上げ、黒い瞳で彼らを射抜く。


そして口元を歪め、太い赤牙を剥き出しにした。


「グオオオオオオオオオ!!!!!!!」

赤牙が咆哮する。周囲の鉄皮が震えた。


三基の高台から走る雷導が激しさを増し、バチバチと弾ける。


幾多の戦いを越え、ついに城主との決戦だ。

……



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