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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第十二章-典獄長
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45 ブチャ大天使長

典獄長は兜を外し、整ったエルフの美貌を露わにした。


銀の長髪を振り、深紫の大きな瞳で五人を見据え、不気味な微笑を浮かべる。

「私は……もうすぐ自由よ」


次の瞬間、三叉の光槍を振るい、最も近い天使守衛へ突進――一撃で貫いた。


残る二体の天使守衛は即座に槍を構え、典獄長へ集中攻撃を仕掛ける。


まこは好機と見て魔法を放とうとしたが、むぐち やよいに制止された。

「待って……まずは、潰し合わせる」


天使守衛の戦闘力は典獄長に劣らず、素早く入れ替わりながら次々と傷を刻む。


「ブチャ。片翼では飛べない。抵抗を続けるなら、死刑を執行する」

銀槍を舞わせながら、天使守衛が告げた。


狭い空間では典獄長の動きは鈍く、次第に壁際へ追い詰められる。


「高位祈祷!」

ニフェトが――典獄長を回復した。


「ちょっと! 何してるの?!」

まつみが杖を押さえ、叫ぶ。


「羽翼が成熟し、頭を垂れるすれば悪魔の力を得る」

ニフェトは冷静に、村長の言葉をなぞった。


むぐち やよいは息を呑み、顎に手を当てて考え込む。


「どういう意味?!」

まつみが声を上げる。


「彼女、最初から戦意が高くなかった……それに、天使は私たちじゃなく彼女を囲んでいる」

ニフェトは状況を見据え、さらに詠唱する。

「高位祈祷!」


「人間め――――」

天使が激怒し、振り返って叫ぼうとした瞬間、典獄長の巨大な投槍が直撃した。空には羽毛だけが舞い落ち、もう一体は破れた天井から逃げ去った。


典獄長はゆっくりと振り返り、五人を見下ろす。深い双眸から放たれる威圧は増していたが、すぐには攻撃してこない。


「……で、どうする? 頭を垂れる、する?」

むぐち やよいが迷いながら問う。


「分からない……私の解釈が正しいかも……」

ニフェトは自信なさげに答えた。


「女王さま!!!!!!!」

まつみは全力で駆け寄り、典獄長の足元にひれ伏した。


「……………」

典獄長は応えず、視線だけを他の四人へ向けた。


「試してみよう」

他の者たちも、ゆっくりと膝をついた。


「お前たちは、なぜ樫の牢獄に来た?」

典獄長が問いかける。


「あなたの鍵を手に入れて、囚人を助けるためです」

ニフェトは正直に答えた。


典獄長は腰から巨大な黒鍵を取り出し、床へ投げ捨てる。五人は息を呑んだ。


「……それだけか?」

典獄長は淡々と続ける。


ニフェトは言葉に詰まった。圧倒的な力を持つ魔物と、こうして対話するのは初めてだった。


「なぜ、同族に襲われたんですか?」

むぐち やよいが間を切り裂くように問う。


「……………」

典獄長は頭上の破れた天井を一瞥し、再び彼らを見下ろして、静かに息を吐いた。

「私は元々、精霊評議会の天使長――ブチャ。ある日突然、評議会の命でこの牢を守れと言われた。“評議会の決定が最優先”だとね。拒めば翼を斬り落とすと言われ、一本だけ残されて武器代わりにされた。……あなたたちが鎖を壊してくれなければ、羽翼を繋ぎ直すこともできなかった」


ブチャの眼差しが、わずかに柔らぐ。


【システムメッセージ: 典獄長 は ブチャ大天使長 に改名されました】

【システムメッセージ: ブチャ大天使長 好感度+1】


「……じゃあ、私たちの戦いはここまで?」

むぐち やよいは怯まずに聞いた。


「運が良かったな。私は失った翼を探しに行く。でなければ、次に天使守衛に見つかったら終わりだ」

ブチャは感情を抑えた声で言う。


「手伝おうか?」

まこが思わず口にした。


「おい、まこ!!!」

パシュスが慌てて口を塞ぐ。


「だって、助けられるなら助けたいよ!」

まこは眉を寄せて言い返す。


【システムメッセージ: ブチャ大天使長 は まこ への好感度が+10されました】


ブチャの表情が揺れ、整った眉が震え、やがて大粒の涙が床に落ちた。

「私の翼は、精霊評議会に隠された……どこにあるかも分からない。あなたたち、私の翼の在処を知っているの?!」


「知ってる。ただし探すのに時間がかかる。一緒に行動する? そうすれば天使守衛も怖くない」

むぐち やよいは大胆にも嘘を重ねた。


「……それなら……お願いします」

ブチャは幸せそうに微笑み、両手を合わせた。


パァッ――

室内に白煙が噴き上がる。


ブチャの姿はその場から消え、床には一本の橙色の光柱と、二本の紫色の光柱が立ち上った。


【システムメッセージ: 取得 ギルド守護像──片翼のブチャ大天使長】

……


「えっ?!」

五人は我先にと報酬を確認しに走る。


橙色に輝くカードが一枚、その横に金色の袋が二つ、そして経験カードが五枚。


【ブチャ──精霊族の堕天使の一人。

翼を失った後、樫の牢獄に縛られ、自由を取り戻す日を待ち続けていた。


注意*ギルド守護像はギルドの礎石の近くに配置する必要があり、移動不可。

  *ギルド守護像の配置はギルド会長のみ可能。】


カードには、使用方法と詳細が記されていた。


「ギルド守護像?!」

まつみが声を上げる。


「アンドリアが言ってた。会長がログアウトすると人形になるって。敵に壊されたら、会長撃破扱いになる。たぶん、それを守るNPCなんだ」

ニフェトは慎重に橙カードを持ち上げた。


「なんで銀龍の刻印にはギルド守護像がないんだ?」

パシュスは眉をひそめる。


「隠しクエストだからだろう。知られてない。

それに、私たちは偶然ふたつの隠し条件を踏んだ。村長から典獄長の情報を引き出したことと、まこが助けを申し出て信頼を得たことだ」

むぐち やよいは興奮を隠しきれず、笑って言った。


彼らは最初の金色の袋を開けた。中には小さな袋が六つ入っている。


「紫装備って、レアなの?」

まつみは興奮で落ち着かない。


「品質は下から、灰、白、青、緑、紫、金、橙。どのゲームも大体同じだ」

むぐち やよいが小袋の一つを開くと、それは黒い鎧へと変わった。


漆黒の表面から不吉な黒煙が漂う――典獄長が纏っていた防具、堕天使の深淵装甲だ。


「わあ~、名前からして強そう」

まつみは革装タイプの深淵鱗甲を手に入れる。


「名前はベタだけど、性能は相当だな。

物理防御+180、魔法防御+220、聖属性耐性+30。物理ダメージ10%軽減、それに《神隠し》――敵に感知されにくくなる」

むぐち やよいは装備情報を見て目を輝かせた。


パシュスは魂を抜かれたように、隣の黒き少女を凝視する。


まこは深淵の魔導衣に着替えた。目元には黒い薄布、唇はなぜか黒く染まり、上は胸元の開いた黒のベスト、下は黒の短いボトム。仕上げに、黒い薄紗のフード付きローブを羽織る。


薄紗の表面から立ちのぼる黒煙が、まこに不気味な気配をまとわせる。


「めっちゃクールだよ、まこ!!!」

パシュスは親指を立てて称賛した。


まこはゆっくりと召喚杖を持ち上げ、ニフェトを指す。


「まこ……?!」

ニフェトは思わず一歩下がる。


「でしょ?! これで相手を怖がらせられるよ!!」

まこは大笑いし、嬉しそうに跳ね回る。


「喋った瞬間に台無しだな」

むぐち やよいは笑った。


「魔法使いの衣装って、やっぱり一番きれい~」

まこはローブを回して眺める。


他の者たちも深淵装備に着替える。重装は兜、軽装はアイマスク、布クラスは目隠しが付随する。


むぐち やよいとまつみは兜のデザインが気に入らず、外見表示をオフにした。


五人はまるでPK解放状態のような殺気をまとい、底知れぬ雰囲気になる。


「まだ一着あるけどさ~、競売に出せる?」

パシュスが尋ねる。


「え、まだ?」

むぐち やよいが確認すると、確かに六つ目の袋が残っていた。


「とりあえず持っておこう。王都に戻ってから価値を聞けばいい。私たちだけの無価値じゃないお宝かもね」

ニフェトは笑って言う。

……



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