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一緒に魔王を討伐しよう!  作者: 純白
第十二章-典獄長
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43 鎖に繋がれた悪魔

鉄門が背筋を凍らせる金属の擦過音を立て、銀青色の結界が行く手を塞いだ。


【システムメッセージ: 結界範囲に入ると退出不可・転送不可。結界に入りますか。(Y/N)】


「戦術を詰めるか?」パシュスが問う。


「情報がない……臨機応変にいくしかない。」むぐち やよいは答えた。


まこは何かに気づき、村長のもとへ歩み寄る。


「村長、典獄長の情報はありますか?」まこが尋ねる。


「自由を渇望する、十二の悪魔。

その羽が成熟した時、頭を垂れた者は力を得る。

──だが、偽りの光こそが弱点だ」

村長は無表情のまま告げた。


思いもよらぬ助言に、皆は一瞬言葉を失い、まこを見る目が変わる。


「“自由を渇望する悪魔”……雑魚が次々来るってことだろうな。

中に頭目がいるはずだ。 残り二つは……まだ読めない」むぐち やよいは眉をひそめる。


「考えても仕方ないでしょ~。 どうせ殴るんだし、行こう!」まつみが苛立って言った。


「ラロの頌歌!」

「聖燃術!」

「筋力強化!」

「魔力共鳴!」

「嗜血術!」

「条頓悲歌!」


五人は一斉に加護を重ね、全身にエフェクトをまとわせてYを押した。


銀青色の結界は虚空に溶け、腐臭と錆びた鉄の匂いが鼻を突く。


階段を上がると、背後で鉄門がドンと閉じた。


まこは唾を飲み込み、仲間の背を追って進む。


視界が一気に開け、球形の闘獣場へ踏み出す。


三層構造で、空間は途方もなく広大だった。


最下層には醜悪極まりない悪魔が六体、さらに中層にも六体が囚われている。


プレイヤーを認めるや否や、牙を剥き、四方八方から獣吼が五人を威嚇した。


「実験体みたいだね。」ニフェトは、その眼差しにかすかな知性を感じ取る。


そして闘技場の中央に、ひときわ大きな敵影が立っていた――間違いなく典獄長だ。


深淵のような黒装甲に身を包み、巨躯の黒影と見紛う。装甲の表面からは不吉な黒煙が絶えず立ち上る。


兜に顔は隠され、左右から銀の長髪と尖った耳が覗く。黒甲のスカートの下には純白の肌と装甲ブーツ、胸当ての膨らみから、典獄長が女性であることが見て取れた。


手には巨大な黒翼の大剣――十人をまとめて薙ぎ払えそうな長さ――を携え、背には細長い黒棒を負っている。


何より不可解なのは――七本の大鉄鎖に拘束されていることだった。


後頸、両肩、両腰、両腿の前方が鎖で繋がれ、周囲の壁へと固定されている。


典獄長は俯いたまま、その場に立ち尽くし、動かない。


「鎖のことは聞いてない。」ニフェトは壁に打ち込まれた鎖を気にした。


「動けないギミック……ここまで有利だと、攻撃力は相当高いはず。警戒を。」むぐち やよいは慎重に言う。


まこは双頭の魔狼を召喚した。ちょうど前衛に現れ、典獄長の感知範囲へ踏み込む。


【システムメッセージ: 典獄長はあなたたちに気づいたようだ。】


典獄長はゆっくりと黒翼大剣を持ち上げ、プレイヤーを見据える。その一瞥だけで、圧がのしかかる。


「人間……私のそばにいなさい。」

粘つくような声で告げられ、五人はなぜか理解してしまう。


「しゃべるの?!」まつみが驚いた。


「意味不明。」

典獄長が言い放つと、装甲の黒煙が一転、黒い棘となって五人へ射出された。


「聖庇所!」


黒棘が、ニフェトの魔力盾をじわじわと黒く染め上げていく。


「えっ?! 魔力が削られてる?!」

ニフェトの魔力値が一瞬で三分の一消し飛び、即座に魔力盾を解除する──次の瞬間、第二波の黒棘が放たれ、五人全員が貫かれた。


黒棘の威力自体は高くないが、出血状態が付与される。


典獄長はその場で黒翼の大剣を振るい、凄まじい烈風で彼らを押し返した。


「行くぞ!」

以心伝心のまま、全員が散開する。


むぐち やよいは典獄長の足元へ駆け寄り、自分の背丈が膝ほどしかないことを確認すると、躊躇なく脚甲へ斬りかかった。


キィン、と眩い火花が散り、刀は弾き返される。

「……防御力、桁違いすぎる。」


「急所スキャン!」

まつみが周囲を観察すると、心臓以外にも、鉄鎖が身体と繋がる箇所が赤く浮かび上がった。


「弱点は鎖だ!」まつみが叫ぶ。


「分かってる! だから近づくなって言ってるだろ!」

むぐち やよいは苛立ちをぶつける。


「早く倒し方を見つけて! 正面は長く持たない!」

前面で引きつけるパシュスは、剣風だけで体勢を崩されそうになり、被弾すれば致命傷だと悟って叫んだ。


まつみは透明化したまま典獄長の足甲をよじ登り、装甲スカートと靴の間――絶対領域へ到達すると、雪のように白い太腿へ短剣を突き立てた。


典獄長が長い脚を軽く振るだけで、まつみはバランスを崩す。とっさに抱きつく形になり、太腿にしがみついた。


雪肌の温もりが頬に伝わり、ほのかなエルフの体香が鼻をくすぐる。


衝動のまま、まつみは太腿に噛みついた。

「いただきまーす!!!」


「不快な虫め!」

蚊に刺された程度の感覚で、典獄長は脚を振り上げるが、鎖に引かれて止まる。


続けて掌で脚を払うと、ついに逃げ回るまつみを捉え、パァンと弾き飛ばした。


【システムメッセージ: フレンド まつみ HPが20%になりました】


ヒュ―――ドン!

まつみは一直線に壁へ叩きつけられ、床へ落下する。むぐち やよいが即座に受け止め、ニフェトが回復へ回した。


「距離を保て! 遠距離の被害は小さい!」パシュスが言い切る。


「違う……防御が硬すぎる。消耗戦になったら、こっちが負ける……」ニフェトは不安を隠せない。


「次いくよ!」

回復が終わるや否や、まつみは再び跳び上がり、典獄長の太腿を睨みつける。


「まつみ! 今度は右脚だ、じっくりいけ!」

むぐち やよいが突然指示した。


典獄長が再び黒棘を放ち、ニフェトはやむなく護盾を展開するが、魔力は吸い尽くされ、ほとんど残らない。


混乱の隙を突き、まつみは再度太腿へ取りつく。


「本当に鬱陶しい虫だ!」

激昂する典獄長。しかし甲靴の縁を鼠のように素早く移動され、捕まえられない。


その瞬間、むぐち やよいが左脚を縛る鉄鎖を引き、深淵装甲の一部を剥がした。下から赤い筋肉が露出する。


「ここだ、まこ!!!」むぐち やよいが叫ぶ。


「焰弾!」

「白の矢!」

まこと魔狼が同時に放ち、紅白の光束が絡み合って一本の太い光線となり、露出した弱点を正確に貫いた。


ドンッ――

左脚を縛っていた鉄鎖が、轟音とともに断ち切れる。


【注意: 典獄長の鎖を破壊しました 1/7】



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