11 拍売所の少年
*R18*に関わる内容は、別の場所で公開します。
*夜遅くに読んでくださっている方がいると知って、
感謝の気持ちを込めて、少し早めに更新しました。
「勇者様、お帰りなさい! 光草は集まりましたか?」
雑貨商人が声をかける。
まつみは黙って光草を差し出した。
「素晴らしい! 少し待ってください、加工しますので」
雑貨商人はそう言って奥の小部屋へ入っていった。
「まつみ……大丈夫か?」
パシュスは心配そうに様子をうかがう。
「平気だ! さっさとレベルを上げよう!」
穏やかな口調とは裏腹に、怒りが滲んでいた。
「えっと……かながね、試験が終わったらまたこのゲームを買うって言ってたよ」
まこが言う。
「なに?!」
まつみとパシュスが同時に声を上げる。
「かな、L1NEで言ってたの。一か月後にアカウントを買い直すって。でも、その時は私たちでレベル上げを手伝わなきゃだよ」
まこは笑顔で続けた。
「それはいい! 時間を無駄にしてる場合じゃないな!」
まつみの士気が一気に上がる。
「お待たせしました。光草の魔力を加えることで、このマントはあなたの情報を隠蔽できます。ただし、装備した瞬間に殺戮状態に入ります。初心者の村以外のエリアで、他のプレイヤーへの攻撃が可能になります。殺戮状態でプレイヤーを倒すと名前が赤くなり、他のプレイヤーはPK解放せずとも攻撃可能になりますし、一部のNPCからも敵対されます。ご注意ください。罪を洗い流して赤名を消すには、ワスティン大聖堂で大主教に会う必要があります」
雑貨商人はそう説明し、黒いマントを四着差し出した。
「これ?!」
四人は一斉に近づき、滑らかで軽い手触りのマントに触れる。
「ふん……今度はこっちの番だ!」
まつみは黒衣を強く握りしめた。
…
「さて、次はどこへ行く?」
パシュスが尋ねる。
「クエストはもうないですね。あとはダンジョンか、モンスター狩り、もしくはプレイヤー狩りでレベルを上げるしかありません」
ニフェトが答える。
「まずはレベル80まで上げて護心石を手に入れて、それから120で二次転職だな」
パシュスが提案した。
「西へ行きましょう。北門と東門は危険ですし、西にはちょうどレベル100向けのダンジョンがあります」
ニフェトが言う。
「そうだな。出発前にアイテムの確認をしておこう。足りないと戻る羽目になる」
パシュスは頷いた。
まつみがバッグを探っていると、黒いカードの束に触れた。
「ま……まさか?!同行!初心者の村!」
カードを掲げて叫ぶが、何も起こらない。
「お前、バカか?」
パシュスは虫でも見るような目で蔑んだ。
「違うのか?! じゃあ……!」
まつみは真剣に考え込む。
「ブック!!!」
手を突き出して叫ぶ。
「それ、経験カードですよ。なんで使ってないんですか?」
ニフェトが指さす。
「経験カード?」
三人はぽかんとニフェトを見た。
「はい。クエスト報酬です。かながレベル上げしてくれてたから、溜まってたんでしょうね」
ニフェトは平然と言う。
「どうやって使うの?」
まこがカードを眺めながら尋ねる。
「食べます」
「はあ?! これを食べるの?!」
まつみが叫ぶ。
「噛んで、飲み込む。本気です」
ニフェトは真顔だった。
パシュスは恐る恐るカードを口に入れて噛む。紙のように乾いた食感で、すぐに溶け、経験値バーが5%伸びた。
まつみはすぐさま十数枚をまとめて口に放り込んだ。
その時、バッグを確認していたパシュスの目が光る。
「……そうだ、忘れてた」
パシュスは膨らんだ茶色の布袋を取り出した。紐を解いた瞬間、眩しい金光が噴き出す。
「これは……?!」
ニフェトは思わず目を覆って後ずさる。
袋の中から、山のような竜貨が転がり落ちた。
「うわっ!!!」
まつみは金貨の山を見て叫んだ。
パシュスが即座に平手を飛ばす。
「目立つな!!」
「パシュス、すごいよ! これなら、まこは毎日着替えできるね!!!」
まこは目を輝かせてはしゃぐ。
「……これは、かなが残してくれた金だ」
パシュスは静かに言った。
「かな……お前の意志、俺様が継ぐ!」
まつみは感極まった涙を浮かべ、金貨の山に飛び込もうとする。
パシュスは再び彼女を殴り飛ばした。
「い、いくらあるんですか……?」
ニフェトが唾を飲み込んで尋ねる。
「竜貨六十三、狼貨五、羊貨八十九だ」
パシュスは小山を一つずつ数え上げた。
「今夜はスライム風呂に入って、ちょっといい宿に泊まる。スタミナ回復を早めるんだ」
まつみは欲丸出しで言う。
「まこ、猫耳コスチュームずっと欲しかったんだよね~」
まこはよだれを垂らしそうな顔で言った。
パシュスは金貨をすべて布袋に戻し、口を固く縛ってバッグにしまう。
「ちょっと! 独り占めはズルいだろ!」
まつみは指を突きつけて怒鳴る。
「だからだ! かなの金は装備と道具に使う。そうしないと効率よくレベルが上がらない!」
パシュスは、飛びかかってきたまつみの顔を押し返す。
「でも、どこで買うんです? モンスターのドロップ品のほうが、NPC売りより強いですよね」
ニフェトが首を傾げる。
「当然、拍売所だろ」
パシュスは小さく笑った。
…
更新は基本【毎日1話】。
さらに、
ブックマーク10増加ごとに1話追加、
感想10件ごとに1話追加します。
書き溜めは十分あります。
一緒にテンポよく、魔王討伐まで突っ走りましょう :)




