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『エルドラドを探して』

大須さんの友達視点。

一年のボドゲ部(仮)が始まったばかりの頃。

 (かど)八降(やつふる)という男子が、同じクラスの大須(だいす)瑠々(るる)という女子を呼び出した。

 高校入学してゴールデンウィーク明け、そんな噂が出回った。その噂を裏付けるように、二人は時々一緒に教室を出てゆくようになる。


「で、実際のところ、どうなの?」


 五月の終わり、期間限定のメロンシェイクを飲みながら、わたしは瑠々ちゃんに聞いてみた。

 瑠々ちゃんは、中学からの友人だ。高校ではクラスが分かれてしまったけど、こうしてたまに一緒に寄り道するくらいの親交がある。

 瑠々ちゃんはびっくりしたように目を開いて、それからぶんぶんと頭を振った。


「どうも何も。何もないよ。部活。ただの部活動」


 そして小さく溜息をつくと、ストローを咥えた。


「部活? 二人で?」

「ボドゲ部だって。ボードゲームで遊ぶの」


 その言葉を聞いて、今度はわたしの方が目を見開いた。だって──。


「瑠々ちゃん、ゲーム遊ばないよね?」


 わたしの言葉に、瑠々ちゃんは「それは、そうなんだけど」と困ったような顔をする。

 瑠々ちゃんのゲーム嫌いは徹底していた。

 そもそもわたしが瑠々ちゃんと仲良くなったきっかけは、瑠々ちゃんが休み時間に図書室によく来ていたからだ。中学から図書委員だったわたしは、図書室で瑠々ちゃんと出会って、それでよく話すようになった。

 そして瑠々ちゃんが休み時間に図書室に来るようになった理由は、クラスの男子の中でカードゲームが流行ったからだった。

 ゲーム全般が苦手で、近くで遊んでいるのも落ち着かなくて、だからカードゲームが遊ばれている教室から逃げて図書室にいたのだと言っていた。

 その瑠々ちゃんが、ボードゲームを遊ぶ部活なんて。


「なんでそんなことになったの?」


 好奇心よりも、心配してしまう。あんなにゲームから遠ざかっていたのに。

 よっぽどの何か──その角って男子に弱みでも握られてる? まさか、そんな、弱みだなんて、物語じゃあるまいし!


「なんでって言われると、説明が難しいんだけど、いろいろあって……。その、仕方なくではあるんだけど」


 でも、瑠々ちゃんのその言葉と表情を見ると、わたしの想像も案外間違っていないのかもしれない。

 わたしはストローから口を離して、恐る恐る瑠々ちゃんの顔を覗き込む。


「何か、困ってるなら力になるよ?」


 わたしの言葉に、瑠々ちゃんは慌てたように首を振った。


「そんな、別に、困ってるとかじゃなくて。いや、えっと、それはまあ、できるならゲームとかやりたくないのはそうなんだけど。でも、その……」


 そこで言葉に詰まった瑠々ちゃんは、ストローを噛んで考え込んだ。わたしもメロンシェイクを一口飲んで、次の言葉を待つ。

 やがて瑠々ちゃんは、困ったように眉を寄せたまま、ぽつりと言った。


「遊んでみて、その……少し面白いなって思ったから」


 ゲーム嫌いの瑠々ちゃんの口から「面白い」なんて出てくるとは思ってなかったから、わたしはぽかんとしてしまった。

 その間に、瑠々ちゃんは自分を納得させるように頷いて、顔をあげた。


「うん、だから大丈夫。ありがとうね」


 瑠々ちゃんは笑っているけど、心配は変わらない。それでつい、聞いてみた。


「ボードゲームってどんな感じなの?」

「この前は……えっと『エルドラドを探して』って名前だったかな。カードで進むすごろくみたいなゲームだったんだけど」


 思ったよりもしっかりとゲームの話が返ってきて、それでちょっとだけ安心してストローを咥えた。

 瑠々ちゃんは難しい顔をして、ゲームの内容を説明してくれている。


「他の人がいる場所には入れないから、遠回りしないといけなくて。カードの種類で通れる道が決まってたりして。難しくって」


 どうやらゲーム嫌いの瑠々ちゃんは、本当にゲームで遊んでいるらしい。その上で「少し面白い」と言っている。

 それならもう少し様子を見ようかな、という気持ちで、わたしは瑠々ちゃんの説明に頷いた。正直、ゲームの内容はあまりイメージできなかったのだけど。





『エルドラドを探して』


・プレイ人数: 2〜4人

・参考年齢: 10歳以上

・プレイ時間: 30〜60分




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