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意識空間、再び

「・・・ん・・・んん~・・・。」


あー、頭が痛い。目の前が真っ白・・・。じゃなくて回りが全部真っ白なようだ。ちゃんと自分の手とかは見えるし。


立ち上がって回りを見回すと、真っ白でなにもない空間が広がっていた。床といった感じのものもないのだが、なぜか立てるしちゃんと移動できそうだ。


この感覚には覚えがある。そう、これは


「・・・意識空間だな、これ。」


ベヒモスに光線をくらったときに、一度ここに来ている。あのときはヘルがいたけど、今回は誰もいないみたいだしなんでここに・・・。


「パチパチパチパチ、正解ですよ。ここはご主人様の意識空間です。」

「え?だ、だれだ・・・へ、ヘルか?ヘルなのか!?」

「あれ?今回も姿を見せる前にばれてしまいましたね。」

「やっぱりヘルなんだな!」


この声、それにここで会える可能性があるのはヘルしかいない。


「はい。お久しぶりですね、ご主人様。会いたかったですよ。」

「へ、ヘル・・・。俺も会えて嬉しいよ。けど、どうしてここに?」


ヘルに会えたことは本当に嬉しい。けど、ヘルは消滅してしまったはずだ。なぜここにいるのか?


「それ、気になりますよね?でもここはご主人様の意識空間ですよ。ご主人様の魂魄と混合された私の魂魄は、この意識空間だけではこうやって存在できるわけです。」

「そ、そうなのか。」

「本当に消えてしまうんじゃないかと心配していましたが、やはりこの空間では存在できるみたいです。あ、因みにご主人様の記憶や見えているものなどもわかるので、何があったのかも把握していますよ。」


そうか、見てくれていたんだな。


「そういや、ベヒモスはどうなったんだ?」

「覚えてないのですか?」

「その辺りの記憶だけが曖昧でな。」


なぜかベヒモスを追いかける途中から記憶がとんでいるのだ。


「そうですか。まぁ仕方ないですね、あんなことがあったわけですし。」

「あんなこと?」


何があったんだろうか?まさか、ベヒモスを倒せなかったんじゃ・・・。


「大丈夫ですよ。ベヒモスはちゃんと倒しました。ただ・・・」

「ただ?」

「・・・まずご主人様がどうやってベヒモスを倒したかなんですが」


それは聞いておくべきだったな。


「ご主人様はベヒモスを追いかけたのですが、ベヒモスが何度も世界間移動を繰り返すせいでなかなか追い付けずにいました。そこでご主人様は《想像》で一つの世界を作り出し、その世界にベヒモスの魂魄を縛り付けました。そして、その世界ごとベヒモスを消滅させました。」

「そうか、よかった。」


安堵の言葉とは裏腹に、俺の感情も、そしてヘルの顔も悲しみが含まれていた。


「ただ、ご主人様の魂魄も一緒に・・・。」

「・・・消滅したわけか。」

「はい、」


話の途中から何となく分かった。自分だけ都合よく回避などできるはずないからな。


「ということは、この意識空間ももうすぐ消えてしまうわけだな。」

「そうですね。こうやってお話しできるのもあと少しかと。」


分かってはいても直接言葉に出してしまうのとは全然違うな。


しんみりしてしまい、互いに沈黙してしまった。でも、この時間ももったいないのだ。俺はヘルにとある質問をした。


「そういや、あれって本当なのか?まぁ恵・・・先生の方はそうだったみたいだが。」

「え?あ、あの事ですか。」


あの事。ヘルが前回の意識空間で最後に言った、恵とヘルが俺に好意を寄せてくれているということだ。


「もちろん本当ですよ。だって、」


そう言うと、ヘルはおもむろにこっちに向かって歩いてくる。そして・・・


「ご主人様と一緒に最後を迎えられて、こんなに嬉しいんですから。」


そう呟いて、ヘルはキスをして抱きついてきた。


「そうか、俺も嬉しいぞ。ヘルと一緒にいられて。まぁやっぱりみんな一緒にいれたら最高だったけどな。」


こんな風に失ってしまうならこの世界になんて来たくなかった、そう思ったときもあった。けど、そのおかげであかりや恵とも一緒になれて、ミナ、リリとも出会えた。そして、ヘルともこうやって一緒に最後を迎えられた。


最善の形ではなかっただろうけど、日本にいるだけとは比べ物にならないほどよい人生だったんじゃないだろうか。


「ご主人様、何か難しいこと考えてませんか?」


まだ抱きついた状態のままのヘルがそう言っている。よくわかったな。


「さすがヘルだな・・・。まぁ難しいことを考えていても時間の無駄か。」


そう思い直して、俺はヘルを抱き寄せた。


「あぁ、このままベット(・・・)に寝転がって、ゆっくりしたいなぁ。」


ふとそう呟いたそのとき、


ドンッ、


「「えっ?」」


二人して呆ける。なぜなら、俺たちの横には一つのベットがあったからだ。


「こ、これは、ベットですか?」

「だな。それに、やっぱり一人用だ。」


なぜ一人用なんだ?まぁそれぞれのベットで寝れたことなんて片手で数えられるほどしかなかったが。


「つまり・・・ここでも《想像》の力を使えるってことか?」

「みたいですね。っ!これならいけるんじゃないですか?」

「え?どういうことだ。」

「えーっと、《想像》を使って、───────────」


ヘルが説明を終わらせたその瞬間回りの景色が薄れていき、淡くなっていく。


「や、ヤバイです!はやく、はやく!」


ヘルが異常なほど慌ててる、可愛いな・・・じゃなくてヤバイヤバイ、急がないと!


俺はすぐに想像を使って、イメージを頭のなかに構築していく。そして・・・


「《想像》魂魄、および肉体の生成!」


そう叫んだ直後、視界は一瞬で暗転した。

あと一話!

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