バレッドスモーク対抗策
バレッドスモークの流れを読むことで、その発生源を探し当てる。
前回もバレッドスモークはどこからともなく現れていた。つまり、回りのバレッドスモークを取り込んでいるわけではないということだ。
「発生源特定。座標確認・・・《空間修復》!」
発生源を見つければ、あとはすぐに塞ぐだけだ。これが新しくできるようになったことの一つ、"空間への直接干渉"だ。空間の歪み、破綻などを意図的に作り出す、または修復することができる。
グォガァァゥゥ!
異変を感じたのか、ベヒモスが唸り声をあげている。バレッドスモークの生成ができなくなったことに気づいたのか、途端に気流が変わった。たぶんこれは、
「回りのバレッドスモークを取り込む気じゃ。」
「孝介様。」
「大丈夫だ。それも対策済みだ!」
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バレッドスモークを無効化するための方法。それを作るためにはバレッドスモークを解析する必要があった。それも、ベヒモスが作り出したバレッドスモークでないといけない。だが、魔王城には当然そんなものはなかった。
「どうするか・・・。」
「だよねー、取りに行く訳にもいかないし。」
向こうの状況がわからない以上、下手に踏み込むのは危険だ。因みに《転送》で使える覗き穴とかも試してみたのだが、向こうの空間が乱れてしまっているせいで繋げられなかった。
「解決策が見つからないのじゃ。でもバレッドスモークをどうにかしないと勇者たちは近づけないじゃろうし、攻撃しても修復されるじゃろうし。」
しばらく考えこんでいると、
「あのー、バレッドスモークってやっぱり煙ですよね。」
「そうだな。それがどうしたんだ?」
「ほら、焼き肉とか行くと煙で服に臭いがついたりするじゃないですか。だから、バレッドスモークもその中を通ってきた私たちの服についてたりしないかなー、なんて思ったんですが・・・。」
んー、それはどうだろうか。バレッドスモークが他の煙と同じような物とは思えないし・・・。
「まぁ試してみるか。」
「そうだね。他に方法も思いつかないし。」
というわけで、早速やってみることにした。自分の服を脱いで・・・。
「あ、孝介。その服じゃダメだよ。」
「え?なんで?」
「寝てる間に着替えさせた。だからバレッドスモークにあたってない。」
そうなのか・・・え?
「き、着替えさせたのか?誰が?」
「それは、まぁ・・・ふふっ。」
「ミ、ミナ!」
「わ、私だけじゃない。みんなでやった。」
「おぉぅ・・・。」
せめて先生(まだここでは先生と呼んでいる)には止めようとして欲しかった。
「先生は止めようとしましたよ!」
「そうか!よかった。まだ先生が先生であった。」
「けど、結局先生もやってたのじゃ。」
「それに、先生が一番楽しそうだったと思うんだけどなぁ~。」
「え・・・。」
「うぅぅ・・・。言わないでくださいよぉ。」
いや、否定しないんかい。はぁ、俺の回りにはそういう人しかいないのか。
「とりあえず、誰かの服を貸してくれ。」
仕方ないのでそう言ったのだが、なぜか全員が顔を真っ赤にしてしまった。・・・はい?
「なんか変なこと言ったか?」
「いや、女子に服借してくれって・・・。普通に恥ずかしいじゃないですか。」
あ・・・そういうことですか。ま、まぁ仕方ないじゃないですか、ね?別に邪な考えがあったわけじゃないんで。ないったらない。
「仕方ないですもんね。先生のを借しますよ。」
そうか。よかった、貸してくれないかと思ったからな。
「あ~!先生そんな言い方して、実は自分のを使って欲しいだけじゃ・・・。」
「ち、違います!」
先生が被せるように反論する。ただ、目が泳いでないか。まるで図星だったみたいな・・・。
「やっぱり図星だった!ずるい考えだね~。代わりに私の服を使ってもらおーっと。」
「むぅぅー!それこそ井上さんが使って欲しいだけじゃないんですか!」
「え?そうだけど?」
「うっ・・・。ゆ、譲りませんよ!」
あのー、なんか大変なことに・・・。
「ケンカはよくない。間を取って、私の使って?」
「「ダメです!」」
「ヤダ。」
あぁ、ミナまで・・・。早く先に進めたいんだが。あれ?リリはどこ行ったんだ?
・・・と思っているとリリが戻ってきた。
「みんながケンカして進まなそうじゃったから、妾の服を持ってきたのじゃ。ほんと子供じゃのう。」
「お、ありがとな、リリ」
「お安いご用なのじゃ。」
「あー!ずるいよぉ、リリ!」
「そうですよ、ずるいです!」
「ずるい。抜け駆けした。」
「ふふふっ、こう言うときは頭を使わんとのぉ。」
「「「うぅぅ!」」」
なんだか言い合っているようだが、早速解析を始めようか。
まずは本当にバレッドスモークが含まれているのか確認する必要がある。
「《分析》」
えーと、普通に服としての成分があるのと・・・おー!あったあった!
「あったぞ!バレッドスモーク!」
「あったの!ほんとに!」
「あぁ、先生の言った通りだ。」
これで対抗策が作れるわけだ。
「これから詳しい分析に入る。ちょっとの間この服は借りるな。」
「わかったのじゃ。」
・・・みんなもそう睨むなって。
若干痛い視線を受けつつも個室に入って解析にはいった。
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